ダイバーシティニュース 経済(4/6) キャシー松井【5/31までの限定公開】

 

キャシー 松井:エム・パワー・パートナーズ ゼネラル・パートナー

ハーバード大学、ジョンズホプキンズ大学院を卒業。ゴールドマン・サックス証券会社元日本副会長およびチーフ日本株ストラテジスト。1999年に女性と経済を組み合わせた「ウーマノミクス」の概念を提唱。ESG重視型グローバル・ベンチャーキャピタルファンド「MPower Partners Fund(エムパワー・パートナーズ・ファンド)」を2021年に創業し、ゼネラル・パートナーを務める。Twitter

キャシー 松井さんのニュースピックアップ

1.管理職の多様性、生産性や組織パフォーマンスに影響大

パーソルホールディングスの調査では、女性管理職比率が3%未満の組織では3割以上の社員が「生産性が高くない」と感じていた。私も過去に国内外で検証した結果、より多様な経営層であるほど、パフォーマンスは高かった。組織の課題解決には、多様な知見が効果的だからだ。ただ管理職が全員女性になればいいわけではない。多用な立場が混在して摩擦が起きるからこそ革新が起こるという問題意識が日本にはもっと必要だ。

2.女性の働きやすさ調査で日本はワースト2位、成長の足かせに

英誌エコノミストが発表した女性の働きやすさに関する調査によると、先進国29カ国中、日本は28位。同様の調査でも日本は下位に属しているのだが、国の政策決定を担う議員の女性比率については日本はアラブ諸国より低い。教育水準や健康寿命は高いのに、公民問わずリーダーシップ層の女性比率の低さが成長の足かせになっていると思う。課題は多いが、経済合理性に基づき多様性が成長を促すという意識を日本人みんなが持つことが最も重要だ。

3.業種別気候リスク開示基準をISSBが公表

国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)が気候リスクの開示基準を業種別に公表した。企業の環境活動を統一基準で比べやすくなる。日用品は水の使用量やパーム油の調達量、自動車はハイブリッド車の販売台数が指標に。パリ協定の目標達成には全世界の努力が必要だが、各企業の取り組みには差がある。日用品や自動車は環境負荷が見えやすいが、テック企業も使用電力など企業活動が与える環境負荷を厳密に測ることが重要だ。

4. 非財務情報「企業の持続可能性」 有価証券報告書に記載へ

金融庁は、気候変動リスクや人材価値を示す「人的資本」などの企業の持続可能性について、有価証券報告書の記載欄を新設する方針という。早ければ2023年度にも始まる。アナリストは公開されている財務情報で企業を分析する。環境や社会と関連する非財務情報が注目されるようになるなか、有価証券報告書への記載で情報開示が義務付けられるのは非常に大きな一歩だ。企業にとっては大変だが、透明性が高まるはずだ。

5.ESG格付け機関の行動指標を策定、評価手続きを透明化

金融庁は、企業のESG(環境・社会・企業統治)の取り組みを評価する機関を対象とした行動規範を2022年中にも作る。格付け機関の評価手続きを透明化するのが目的。企業を測る指標は各社や業種によってばらつきがあり、同じ業界の2社でもデータの見せ方や測り方は異なる。また同じ企業でも、格付け機関によって評価にばらつきが出る。その標準化は理想だが、現実的に可能かどうかはまた別の問題。基準や方法の統一はこれからのチャレンジだ。

【スペシャルトーク】ウーマノミクスで変わったこと・変わらなかったこと

スペシャルトークでは、「MPower Partners Fund」や、キャシー松井さんが1999年に提唱した「ウーマノミクス」についてお話を掘り下げていただいた。

「MPower Partners Fund」は、長年の友人、村上由美子さん、関美和さんと一緒に、2021年に立ち上げたベンチャー・キャピタル・ファンドだ。

日本人が未来に対して明るい展望を抱いていないことに問題意識を持っていたので、明るい未来をつくるために、次世代の起業家を応援したいと考えた。そのためにはスタートアップの段階でESGの価値と原則をふまえ実装する形がふさわしいと思った。より持続可能な成長を促すことができ、また、日本が持つ最先端技術と優秀な人材を活かしながらスケールを拡大できるのではないかと考えたからだ。

私がESG投資に関心を持つようになったのは、1999年に「ウーマノミクス」に関する報告書をまとめたことがきっかけだ。1996年に息子が生まれた私は、元のキャリアに戻りたいと思っても復帰できないママ友の存在にショックを受けた。また、日本の株式市場が低迷する中、毎日のように海外の投資家から、日本の株式市場に投資する意味はなにかと厳しい質問を受けていた。この2つの問題について、アナリストとして検証することにした。

当時の日本は、女性就業率が先進国の中でも低い水準だったが、仮に男女のギャップがなくなったとするとGDPの押し上げ効果が10%強増加することが分かった。男女間のギャップを縮めれば、経済全体が好循環し、女性だけではなくみんなが恩恵を受けることができるようになる。

ウーマノミクスは、発表当時はさほどの反応はなかったが、第二次安倍政権が誕生し、国連のスピーチで引用された。「アベノミクスが成功するには、ウーマノミクスが必要だ」と首相が訴えたことには、とても驚いた。

どの国でも成長を促すドライバーは、人材、資本、生産性の3つしかない。生産人口が減っていく日本で、政府は人材にフォーカスすることで成長戦略のドライバーにしたいと考えたのだと思う。

安倍首相が「ウーマノミクス」をスピーチで引用してから10年が経つが、国民の意識は変わってきたと思う。1999年には「ダイバーシティ」という言葉は通用しなかったが、今は認知度も高い。また、日本の女性就業率は、2019年にはアメリカやヨーロッパを抜き71%まで伸びた。もう一つの変化は、女性活躍推進法が施行され、300人以上の組織にジェンダーに関する情報開示が義務づけられ、透明性が高まったことだ。

私が2年前に執筆した『ゴールドマン・サックス流 女性社員の育て方、教えます―励まし方、評価方法、伝え方10ケ条』では、女性が少ない金融業界で働いてきた私が経験したことや教訓を紹介している。今後、さらに女性が働きやすくなるためには、励ましの言葉をかけるだけでなく、メンターシップを一段深めたスポンサーシップや、優秀な女性人材に長く働いてもらうためのオーナーシップ、そして無意識バイアスについてのトレーニング教育が不可欠だと思う。

ダイバーシティニュース視聴方法

1.LuckyFM茨城放送のラジオ FM88.1/94.6MHz
2. YouTubeライブ配信(アーカイブでも視聴可能です)https://www.youtube.com/channel/UCOyTwjQoiUJXxJ8IjKNORmA
3. radikoでも聴取可能です

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