ダイバーシティニュース 社会(4/4)土井香苗【5/31までの限定公開】

土井香苗(どい・かなえ):国際NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ 日本代表

1998年東京大学法学部卒業。2006年ニューヨーク大学ロースクール卒業(LL.M.)。2000年弁護士登録。2006年にヒューマン・ライツ・ウォッチのニューヨーク本部のフェロー、2008年9月から現職。紛争地や独裁国家の人権侵害を調査して知らせるとともに、世界中の人権問題を解決するため、日本を人権大国にするため活動を続ける。Twitter 

土井香苗さんのニュースピックアップ

1. HRWがロシアの対人地雷使用を告発 国際条約で禁止の兵器

今回のウクライナ侵攻では地雷を使った疑いでロシアに強い非難の声が上がっている。誰が踏むか分からない対人地雷は、軍人と民間人を区別せず、戦争が終わってからも人々を殺傷し続ける非人道的な兵器だ。国際条約で全面禁止され、今は日本含む170カ国近くが署名している。我々ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)を含む世界中の人権団体等も、戦争で地雷が使われていないかを常に監視している状態だ。

2. 「捕虜の権利尊重すべき」 ウクライナの動画投稿にHRWが声明

ロシアによる今回の侵攻では、ウクライナ軍が捕虜となったロシア兵を脅迫したり、氏名や自宅住所といった個人情報を明かす動画を公開したりして、それがSNSで拡散されていることも分かった。捕虜に対する暴行、脅迫、侮辱等の非人道的待遇はジュネーブ条約で禁止されている。ウクライナ側は直ちに止めるべきだし、法律違反の投稿はSNSのプラットフォーム側もアクセス制限等の措置をとるべきだ。

3. ロシア国内で反戦掲げるロシア人に脅迫や嫌がらせ相次ぐ

今のロシアでは反戦運動だけでなく、戦争の実態を知らせる報道すら厳しく規制されており、社会もそれに呼応しているように感じる。嫌がらせは一般市民が行っている可能性もあるが、被害側は「むしろ通報すれば警察からの抑圧も招くかもしれない」と考え通報しないという。命がけで真実を伝えようと考える人はロシアにもいるわけで、今回の侵攻をロシア人すべてがやっていると見なさないことも大事だと思う。

4. 黒髪の強要など「ブラック校則」 多くの都立高校で撤廃へ

子どもの権利の問題であるとともに、こうした校則をつくった人々が考えるような「日本人像」に当てはまらない、人種的、民族的、あるいは性的なマイノリティの子どもたちの尊厳を否定するものだ。そもそもなぜこんな校則があったのかと、恥ずかしい気持ちになる。大人がされたら「人権問題だ」と反発することを、子どもに強制するのはダブルスタンダード。まだ残している学校は早急に撤廃すべきだ。

5. 外国人の子ども約1万人、全体の7.5%が不就学のおそれ

日本も批准する国連の「子どもの権利条約」では、すべての子どもに教育を提供する義務が課されている。しかし日本政府は「外国人は除く」という条約解釈をしており、自治体も就学義務のない外国人の子どもには関知しなくていいことになっている。今回のような国の調査もあって就学を働きかける自治体が増えているのは良いことだが、まずは条約で定められた義務を果たしていない状態を政府が根本的に正すべきだ。

【スペシャルトーク】戦争犯罪を裁く仕組みとその限界

スペシャルトークでは、「戦争犯罪とは? 戦争犯罪を裁く世界的な仕組みとその限界とは?」というテーマで、土井香苗さんに掘り下げていただいた。

人類は戦争による惨禍を減らすべく、さまざまな国際ルールを設けるなか、甚大な人権侵害にあたるものを「戦争犯罪」と定めてきた。特にそれが明確な規範になったのは国際刑事裁判所(ICC)ができたとき。ここで「戦争犯罪とは何か」が定義され、各国もそれに則るようになった。

これにより戦争犯罪を国際的に裁く場ができたことは重要だ。それまでは戦争犯罪があっても戦勝国側の被告は自国で裁かれることがほとんどなかった。そうした「勝者の裁判」でなく、あらゆる戦争犯罪は裁かれなければいけないという考えからICCという常設裁判所ができたわけだ。

現在ICCで裁かれるのは、ジュネーブ条約で定められた①戦争犯罪、②人道に対する罪、③ジェノサイドの3つ。そのため、今は日本を含む各国がウクライナ侵攻に関する捜査をICCに付託している。もちろん、これはロシアだけの捜査であってはならない。先ほど紹介した捕虜の扱いで今回はウクライナも戦争犯罪を問われる可能性がある。

ICCの捜査には難しい面もある。日本でも殺人事件が起きれば警察が捜査するが、国際的な戦争犯罪はその規模も桁違いに大きく背景も複雑だ。また、ICCは警察力を持っていないため、今回のウクライナ侵攻でプーチン大統領に逮捕状が出る可能性はあっても、その執行は非常に困難。加盟国でない国には基本的に管轄権がおよばないこともあり、まだまだその仕組みには限界がある。

ただ、それでもICCの存在は重要だ。今は自国の権力者として逮捕されなくても、いつか自身の敵対勢力に政権を奪われたとき、ICCから逮捕状が出ていれば逮捕される可能性もある。外国で逮捕される可能性もあるわけで、そうした恐怖と不安に苛まれるからこそ、どんな独裁者もICCで裁かれることに抵抗を見せているのだと思う。

そんなICCに対する最大の財政支援国である日本には今後、逮捕の執行等、より多くの面で加盟国の協力を引き出すようなリーダーシップを発揮してほしい。大きな影響力を持つ日本がどういう立場を取るかが、戦争犯罪を抑制するうえで鍵になる。その意味でも、多くの日本人が今回の侵攻に関する報道で戦争犯罪について知ったことは意味があるし、他の国や地域で起きている戦争犯罪にも目を向けてほしいと感じる。

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