ダイバーシティニュース 社会(1/3)土井香苗【2/28までの限定公開】

土井香苗(どい・かなえ):国際NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ 日本代表

1998年東京大学法学部卒業。2006年ニューヨーク大学ロースクール卒業(LL.M.)。2000年弁護士登録。2006年にヒューマン・ライツ・ウォッチのニューヨーク本部のフェロー、2008年9月から現職。紛争地や独裁国家の人権侵害を調査して知らせるとともに、世界中の人権問題を解決するため、日本を人権大国にするため活動を続ける。Twitter 

土井香苗さんのニュースピックアップ

1. 現政権で初の死刑執行 アムネスティ日本は抗議声明も

日本では支持の多い死刑制度だが、世界的に見れば死刑存置国は少数派。不可逆的で、えん罪等さまざまな問題が指摘される死刑は人権侵害と認識されている。人権は善い人だから持てるというものでなく、最も悪いことをした人間にも最低限保証されるもの。多数決で決める話でもない。「それが人権侵害であるなら命を奪ってはならない」というのが死刑廃止国の考え方であり、この点は日本でも議論を深める必要があると思う。

2. 未成年の子を持つ親は性別変更不可の規定に合憲判断

戸籍上の性別変更に性別適合手術が必要となる性同一性障害者特例法だが、手術をしても未成年の子がいると性別変更が認められない。「子どもが混乱するから」という理由のようだが、たとえばトランス女性と母子の関係性を築いている子どもとすれば、自分が存在するせいで親が性別を変えられないといった話になり、子どもにとっても負担が大きい。この規定削除に反対する方はいないと思うので、早く法律を変えていただきたい。

3. 東京都が22年度内に同性パートナーシップ制の導入目指す

明るいニュースだ。東京都はすでにLGBT差別禁止条例も制定しており、パートナーシップ制も導入されれば性の多様性に関し日本で最も進んだ自治体の1つになる。都が導入すれば「なぜ国は認めないのか」という声も鮮明になるだろう。婚姻は戸籍の制度であり、国が動かなければ法的効力も生まれない。今は国がやらないことを地方自治体が可能な限りフォローしている状態だ。岸田政権でぜひ同性婚を認めて欲しい。

4. スーチー氏に禁錮4年の有罪判決 混迷深めるミャンマー

昨年2月の軍事クーデターで身柄を拘束されたアウンサンスーチー氏だが、軍事政権が司法を支配している以上、有罪判決は予想されていた。状況が良くなる見込みはなく、この1年間で平和的デモを行う市民1,200人以上が殺害、7,500人以上が拘束され、そのなかには拷問やレイプに遭った人も多い。各国政府は現政権に幻想を持つことなく軍事政権に圧力をかけるとともに、ミャンマー国民を支援していく必要がある。

5. 日本も北京五輪に閣僚派遣せず 外交ボイコットの表現はなし

我々ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)も各国に外交ボイコットを求めていた。国威発揚や指導者のさらなる地位向上といった効果のある五輪だが、新疆ウイグルで「人道に対する罪」を犯しているとされ、100万人超が収容所へ送られているという国の五輪開催を支持して良いのか。ただ、総理が出席した2008年北京大会と2014年ソチ大会の恥ずかしさを思うと、今回は三度目の正直。日本も前進したのかなと思う。

【スペシャルトーク】今注目すべき人権運動と世界の流れ

スペシャルトークでは、2021年に大きく進んだ各国での人権保護活動を振り返りながら、特に注目すべき動きについて土井香苗さんに掘り下げていただいた。

「人権」というと侵害が起きたときに暗いニュースとして報じられる話が多いものの、世界を見渡せば前進した動きもある。我々ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は、昨年世界で前進したと考えられる11の人権トピックを選んでいる。そのなかからいくつかピックアップしてみたい。

まずはジェンダー多様性の容認。東京都によるパートナーシップ制導入のほかにも、たとえばアルゼンチンでは男女の枠に当てはまらない「ノンバイナリー」で身分証明が認められたり、ニューヨークではインターセックスで生まれた子どもに対する医学的に不要な手術が禁止されたりと、性の多様性容認が各国で進んでいる。

児童婚の解消に向けた希望的兆候も見られた。特に小さな女の子が結婚させられることは世界的に大きな問題であり、そのために学校へ通えなかったり、若くして妊娠することで母体への悪影響があったりと、百害あって一利無しだった。これに対し、18歳未満は結婚できないようにすることが世界的なムーブメントになってきている。実は日本も女性だけ婚姻年齢が16歳だったわけで、女性差別であるとともに児童婚を認めている状態だったが、今年4月1日に男女とも18歳とする民法改正が行われる。

紛争下で軍隊が学校を接収しないという「学校保護宣言」を、昨年までに113ヶ国が承認したことも前進と言える。紛争下で学校が軍事拠点になることは多いが、そうなれば学校が攻撃対象となり子どもが被害に遭う可能性も高まる。それで保護者が学校に子どもを行かせなくなり教育の機会も奪われるわけだ。これに対し2015年にアルゼンチンとノルウェーが中心となって学校保護宣言が発表され、その後6年間で113ヶ国から支持が集まった。

ところが、絶対反対しないだろうと思われていた日本政府がこの宣言をいまだ支持していない。本当に残念だ。安全保障上の話として詳しい理由は明らかにされていないが、つまりは紛争になれば学校を軍事拠点として利用する計画ということではないか。従って、この問題は紛争の多い発展途上国等での話でなく、日本の子どもの問題とも言える。紛争下でも子どもは問題なく学校へ通えるようにすべきだ。当初計画していた安全保障の枠組みでそこまで考えていなかったのだと思うが、日本も計画を見直して欲しい。

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