ダイバーシティニュース 政治(12/28)宮家邦彦【1/31までの限定公開】

宮家邦彦(みやけ・くにひこ):内閣官房参与、外交政策研究所代表、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
東京大学法学部を卒業後、1978年に外務省入省。日米安保条約課長、在中国大使館公使、在イラク大使館公使、中東アフリカ局参事官を経て2005年に退官。現在は立命館大学客員教授も務める。『米中戦争 「台湾危機」驚愕のシナリオ』(朝日新聞出版)など著書多数。外交政策研究所HP

宮家邦彦さんのニュースピックアップ

1. バイデン政権が北京冬季五輪の“外交ボイコット”を表明

外交ボイコットという言葉が一人歩きしているような気がする。米中による戦略レベルの覇権争いが今後10~20年と続く状況のなかで、国際社会は今、中国に対して人権に関する懸念を表明し、五輪には閣僚級の政府代表団を派遣しない。日本も人権問題に懸念を表明し、閣僚を送らないが、外交ボイコットという言葉は使わない。国際社会の一丁目一番地を見極めつつ今回のタイミングで打ち出した日本の判断も決して悪いものではないと思う。

2. ウクライナ国境で軍増強のロシア 米国と協議へ

本当に侵攻すればロシアへの経済制裁がさらに厳しくなるかもしれない。石油などの輸出でドル決済を止められたらロシアは終わりだ。むしろアメリカとなんらかの政治的取引をしたいから軍を動かし圧力をかけているのだろう。アメリカが対応してくれたらそれなりの利益が出るし、対応がなければ放置しよう、と。戦端が開かれる可能性は低く、むしろ今はアメリカの足下を見ているプーチン大統領の思い通りに物事が動いていると感じる。

3. 再び中断する米とイランの間接協議 交渉決裂の可能性も

イランと安保理常任理事国、そしてドイツの7カ国合意でなんとか核開発は抑えられたかもしれないが、トランプ政権で米国がそこから脱退。バイデン大統領は合意を復活させようとしているが、イランの新大統領も相当強硬だ。同国の核開発は相当進むと思う。ロシアと同じく米国に揺さぶりをかけるイランのように、米のアフガン撤退で生じた空白を各国が虎視眈々と狙う現況は、米中対立激化に対する中東側からの1つの反応だと思う。

4. 低支持率が続くバイデン大統領 米中間選挙に暗雲

コロナ禍の出口が見えず、インフレも進んでいる状態のまま11月に中間選挙を迎えれば、相当厳しい結果になるのではないか。そこでバイデン氏が負けたら次はどうなるのか。トランプ氏の復活というシナリオも冗談で済まなくなるかもしれないが、一番怖いのは、トランプ氏のような考え方をしながら「トランプ氏のように見えない立派な人物」が出てくること。それをバイデン大統領が食い止めるのは難しいと感じる。

5. 元大統領首席補佐官のエマニュエル氏が駐日米大使に承認

オバマ政権で首席補佐官、その後シカゴ市長も務めた強力な政治家であり、日本が求める「大統領に直接電話できる人物」でもある。中国や北朝鮮についてしっかり理解してもらえたらと思う。いずれにせよ、隣の大きな国が西太平洋で強い影響力を持つようになったことは海洋国家・日本にとって極めて重大な変化。米軍による今年のアフガン退避は、そうした変化を受けてインド太平洋に関心を移しつつある今の米国を象徴している。

【スペシャルトーク】岸田首相の外交

スペシャルトークでは、岸田首相の対米戦略や外交に関する評価について、宮家邦彦さんに掘り下げていただいた。

安倍政権で5年近く外務大臣を務めた経験は圧倒的に大きい。良い意味でオーソドックスであり、一定の時間はかけるが極めて現実的な判断をなさる。中国におもねるわけでも米を追従するわけでもなく、日本のやるべき外交を安倍内閣の頃からなさってきた立場として、外交に関しては一貫した姿勢を感じる。

外交は単純でなく、経済、軍事、文化、歴史等々、さまざまな要素を勘案しながら最大多数の最大幸福のために政治判断をしなければならない。特に日本と近隣諸国との関係は今申し上げたような要素がすべて詰まった難しい課題だ。ある程度は慎重に時間をかけつつ、決めるときは一気に決めなければいけない。

米国との関係については、バイデン氏が副大統領のときに外務大臣であったし、互いに知った仲だと思う。1月訪米は見送りになったが、すぐ会いにいかなければいけない状態でもない。アントニー・ブリンケン国務長官とも、彼が副長官だったときに外務大臣として中国・北朝鮮・韓国との問題等でいろいろ意見交換をしているから、総理としてはやりやすいのではないか。

一方、中国に関しては喧嘩をするために総理となったわけでもないが、かといって仲良くするにも限度がある。やはり「自由」「民主」「法の支配」「人権」といった普遍的価値を共有する国と連携し、特に現状を力で変更しようとする国には反対していかなければならない。日本の国益や原理原則を踏まえたうえで、しかし対話を完全に閉ざさないよう、時間をかけて相手方を説得する機会を今後模索することになるのだろう。

ただ、先ほど「米国の関心がインド太平洋に移りつつある」と言ったが、ウクライナで何かあればNATO(北大西洋条約機構)の一員として改めて問題に介入するかもしれないし、アフガンは離れたが「中東離れ」したわけではない。米国の関心が再び欧州や中東に戻る可能性はあり、そうなったときに喜ぶのは中国だ。そう考えると日本もやるべきことは多い。来年は、国家安全保障戦略、中期防衛力整備計画、防衛予算と、今後数十年間にわたる日本の安全保障政策において最も重要な決断がなされる可能性が高い。そこで我々は、もちろん平和第一だが、日本がやるべきこと、やれること、そしてやってはならないことを現実的に区別しながら、今までと違う政策を考えなければいけない時代になったと思う。

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