ダイバーシティニュース 社会(12/6)土井香苗【1/31までの限定公開】

土井香苗(どい・かなえ):国際NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ 日本代表

1998年東京大学法学部卒業。2006年ニューヨーク大学ロースクール卒業(LL.M.)。2000年弁護士登録。2006年にヒューマン・ライツ・ウォッチのニューヨーク本部のフェロー、2008年9月から現職。紛争地や独裁国家の人権侵害を調査して知らせるとともに、世界中の人権問題を解決するため、日本を人権大国にするため活動を続ける。Twitter 

土井香苗さんのニュースピックアップ

1.中国女子テニス選手“失踪”  前副首相との関係強要告白で

IOC(国際オリンピック委員会)は連絡がついたと言うが、彭帥選手自身が自由に発言できていることは確認されていない。人権活動家らが行方不明になったり、政府に拘束されたのち意に反した話をさせられ、それを撮影・放送されたりするケースは中国でよくあること。今回は中国政府側に協力的なIOCにも批判が集まっている。いまだ人権ストラテジーを採択できておらず、政治的な思惑を優先させてしまっているIOCの改革も必要であると、改めて感じる。

2. バイデン米政権が北京五輪「外交的ボイコット」発表へ

1989年の天安門事件以来、中国の人権状況は最悪の状態にあり、ウイグルでは人道に対する罪すら、行われていると見られている。そうした国で開催される大会には、選手は別として政治家は参加または支持を表明すべきでないと思う。2008年北京でも2014年ソチでも、欧米首脳の多くが参加を見送ったなかで日本の総理は開会式に出席した。今回は3度目の正直。人権が重要であると言うのなら岸田首相には参加を見送って欲しい。

3. こども庁23年度中の創設目指す、各省庁への勧告権を検討

今はこども庁創設に加え、子どもの権利条約をベースとした「こども基本法」の制定が求められている。また、子どもの存在は多くの政策に深く関係しているものの、圧力団体も持たない子どもの視点は後回しになることが多い。だからこそ、子どもに関わる政策に関して各省庁を監視・評価し、他省庁に配慮せず子どもの視点から提言および勧告できる「日本版子どもコミッショナー」の設立が重要になると考えている。

4.  厚労省が「子ども家庭福祉ソーシャルワーカー」創設案

児童相談所などで働く人々の専門性の低さは以前から指摘されていた。それまで同じ行政区域の土木課で働いていた方が、いきなり虐待防止の第一線に異動するような例もある。家庭福祉については専門性の高い国家資格を設けるべきであり、その点では民間資格を提言する今回のソーシャルワーカー案は残念だ。社会福祉士や精神保健福祉士でないと取得できない“上乗せ”の仕組みでなく、独立した資格でもあるべきだと考えている。

5. ワクチン安定供給目指し、米国が特許権放棄を要請

製薬企業からロビーイングを受けているであろうイギリスやドイツが反対するなか、特許権放棄を要請したバイデン大統領の決断は心強い。今は特許によって供給が滞り、いまだ摂取率ひと桁に留まるアフリカ等で蔓延が広がりやすく、新たな変異株も生まれやすい状況にある。日本としても水際対策だけでいつまでも抑えきれるものではない。世界的危機である新型コロナのワクチンに限っては特許権を一定期間放棄すべだと思う。

【スペシャルトーク】人権問題担当の首相補佐官

スペシャルトークでは、岸田内閣で新設された人権問題担当の首相補佐官について、土井香苗さんに掘り下げていただいた。

さまざまな人権問題が山積する世界にあって、日本が果たすべき役割は大きい。そのための人権外交に舵を切るうえで、首相補佐官というハイレベルなポジションに人権問題担当が置かれるのは大事なこと。今までは外務省内で部課長クラスの方々が責任者を務めるような状態だったため、政治や経済が絡む思惑のなかで人権対応が後回しになってしまうケースが多かった。

ただし、今回の話について「中国の人権問題だけにフォーカスを当てている」との報道もある。絶対にそうあってはならない。世界中の人権問題に同じ基準を当てはめるべきであり「人権を口実に中国批判をしているだけでは?」と言われないようにして欲しい。

そのうえで、今後は2つの法律を成立させて欲しいと考えている。1つは重大な人権侵害を犯した人物に、日本の金融機関を使わせたりビザを発給したりしないようにする人権侵害制裁法、いわゆるマグニツキー法だ。そしてもう1つが人権デューデリジェンス法。ビジネスが人権侵害に加担していないかを調査し、その予防措置を取ることを企業等に義務づける法律となる。この2つが機能することで、人権侵害の加害者側に実質的メッセージが届くようになる。

外務省は特定の国に対する批判を嫌がるが、こうした法制度はどこかの国を名指しで攻める話でなく、枠組みをつくるもの。法制度の運用を通して、人権侵害に対する「盾」になろうという気概も政府のなかで育っていく面があると思う。

岸田政権の人権外交全般について言うと、今回の補佐官設置に加え、外務省内に人権担当官を設置するとの報道もあり、期待できる点はある。ただ、本質的な話として日本には「人権の役所」がない。たとえば「環境」と「人権」はセットで語られることが多いものの、環境には省があるのに人権には省も庁もなく、霞が関という巨大なシンクタンクに専門集団もないわけだ。諸外国には国家人権委員会や人権オンブズマンなど、独立した権限を持つ組織がある。その意味では、本日前段でお話しした「子どもコミッショナー」を足がかりにしつつ、人権全体についてしっかりした制度・組織をつくっていくことで、岸田政権の人権政策に対する本気度も分かってくると思う。

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