ダイバーシティニュース 社会(11/1)土井香苗【12/31までの限定公開】

土井香苗(どい・かなえ):国際NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ 日本代表

1998年東京大学法学部卒業。2006年ニューヨーク大学ロースクール卒業(LL.M.)。2000年弁護士登録。2006年にヒューマン・ライツ・ウォッチのニューヨーク本部のフェロー、2008年9月から現職。紛争地や独裁国家の人権侵害を調査して知らせるとともに、世界中の人権問題を解決するため、日本を人権大国にするため活動を続ける。Twitter 

土井香苗さんのニュースピックアップ

1. ノーベル平和賞は政権批判貫いた比と露のジャーナリスト

ドゥテルテ大統領による麻薬戦争で多くの民間人が犠牲になったことなどを報道し続けるネットメディア「ラップラー」のマリア・レッサ氏と、プーチン政権に批判的な独立系新聞「ノーヴァヤ・ガゼータ」で長らく編集長を務めるドミトリー・ムラートフ氏の2人が受賞。後者の新聞ではチェチェン紛争の報道で殺害された記者もいる。ともに政権から圧力を受けながらも報道の自由を守ってきた。人権活動家・民主活動家とも言えるような点が評価されたのだと思う。

2. スーダンで軍によるクーデター 首相ら政治指導者が軟禁

2年前から民主化指導者と軍指導者による共同統治が行われていたスーダンだが、今までもたびたびクーデターの動きはあった。今回はクーデターに対し平和的な抗議活動を行う民衆に発砲が行われ、複数の死者も出ているという。支援金を停止したアメリカをはじめ、今は各国および国連が政治指導者らの解放を求めプレッシャーをかけている。民主主義を求め懸命に戦うスーダンの人々へ国際社会の支援が求められている。

3. 米で性別「X」のパスポート発行 性的少数者への対応で

日本でも地方自治体等で書類の性別欄に「男」「女」だけでなく「その他」が加えられ、事実上「X」を選べるような動きが広がっている。パスポートも早く同様の方向に進んで欲しい。パスポートは戸籍と連動しており、日本が国として、その人をどのような性別で法律的に認定するかという話にもつながっている。そこで「女」「男」しか選べない状況は遅れていると思う。

4. 人権団体等がスポーツの暴力根絶で独立機関の設立要望

近年、各国で「セーフスポーツセンター」と呼ばれる機関が設立されている。性暴力、身体的暴力、言葉の暴力等、スポーツにおける暴力を専門的かつ独立した立場で解決するほか、指導現場の基準策定や暴力根絶のための啓発活動なども行う機関だ。今は個別に対応する競技団体も出てきたが、それを基盤にして次のステップへ進むときだと思う。企業でも同じ。身内では調査等が難しいときもあり、第三者の対応が重要になる。

5. 性別変更の厳しい要件にトランスジェンダー男性が申し立て

戸籍上の性別変更に不妊手術を義務づける性同一性障害特例法は国際的にも大変遅れた制度だ。ここ10~20年で同様の法制度が改善された他の先進諸国に比べ、日本ではまったく対応が進んでいない。本件については国会も機能不全の状態にあり、司法に頑張ってもらいたい。どんな人でも、どんな理由があろうと、意に反し不妊手術を受けさせるのは重大な人権侵害であり、現代社会であってはならないことだと考えている。

【スペシャルトーク】帰還事業で北朝鮮に渡った人々の苦難と闘い

スペシャルトークでは、2003年に命がけで脱北し、現在はNGO団体「モドゥモイジャ」の代表を務める川崎栄子さんに、当時の北朝鮮における体験や、現在進めている北朝鮮政府相手の裁判などについてお話を聞いた。

1960年に帰還事業で新潟港を出航し、当時北朝鮮で3番目の国際港と言われていた清津港に船が入った途端、周囲の大人たちは「騙された。大変なことになりそうだ」と話していた。出発前に聞いていた「地上の楽園」とはまったく違う光景が広がっていたからだ。港は製鉄所の煤煙で建物も並木も土もすべて黒く、私たちを歓迎するために集まっていた数千の人々も皆痩せて皮膚がかさかさ。全員同じ仕立ての悪い服を着て、靴下も履いておらず布製の靴には穴が開いて指が飛び出していたり、すごくみすぼらしい状態だった。

その後入国手続きを経て、ほとんどの人は中朝国境近く、重労働を課される炭鉱や農村へ送られた。最初に困ったのは食だ。日本では貧しい食卓のイメージに「麦ご飯」があるが、北朝鮮には麦もない。トウモロコシ、こうりゃん、ジャガイモ、大豆等の配給があるだけ。慣れない食で日本から来た人のほとんどが病気になり、精神に異常をきたした人もいた。

日本を出発する前は、「金日成主席が私たちを喜んで迎え入れてくれる。生活はもちろん自由も人権もすべて保証されている」と言われ、皆がそれを信じていた。でも、実際の北朝鮮は徹底した階級社会。上から「労働者」「農民」「商人」と続き、処刑または強制収容所に送られた人々を除けば我々が最下層。差別され、就けない職業も多い。そのなかで、いつ自分が捕らえられるかという不安に怯えながら、常に監視のなかで暮らしていた。実際、多くの人が収容所へ送られ、処刑または過酷な労働で死んでいった。

私は北朝鮮に着いた当初から「私たちは騙されていた。いつか正常な社会に戻ることができたら、罪を犯した相手を法律で裁かなければ」と決心していた。だから生きて日本に帰ることができた今、帰還事業に参加した9万3,000人を地獄の底に放り込んだ北朝鮮政府を相手に裁判を起こした。来年3月に結審予定だが、これで我々の活動が終わるわけではない。この裁判ははじまりだ。その活動資金を募るべく現在はクラウドファンディングも立ち上げた。

川崎栄子(かわさき・えいこ):NGOモドゥモイジャ 代表、一般社団法人アクション・フォー・コリア・ユナイテッド 代表理事
1942年、京都府で在日2世として生まれる。1960年、高校3年生の時に、在日コリアンの北朝鮮への帰還事業によって北朝鮮へ渡り、43年間を過ごした後、脱北。現在は著作活動や講演を行い、北朝鮮の実情を国際社会に伝える活動を各地で行っている。著書に『日本から「北」に帰った人の物語』(新幹社)など。NGOモドゥモイジャ公式HPYouTubeチャンネル

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