ダイバーシティニュース 社会(9/6)土井香苗「タリバンが掌握したアフガニスタンの人権危機」【10/31までの限定公開】

土井香苗(どい・かなえ):国際NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ 日本代表
1998年東京大学法学部卒業。2006年ニューヨーク大学ロースクール卒業(LL.M.)。2000年弁護士登録。2006年にヒューマン・ライツ・ウォッチのニューヨーク本部のフェロー、2008年9月から現職。紛争地や独裁国家の人権侵害を調査して知らせるとともに、世界中の人権問題を解決するため、日本を人権大国にするため活動を続ける。Twitter 

土井香苗さんのニュースピックアップ

1. 障害と差別を乗り越えるために走るパラリンピック選手

アフリカでは髪や肌の色素が少ないアルビノの人々に対する偏見や差別が根深く、迷信から殺害され体の一部が切断・売買されることも多い。国連報告では、2006~2019年にアフリカ28ヶ国で少なくとも208人が殺害されたという。そんな、殺害やレイプに怯えて暮らす現状を変えたいというメッセージとともに、東京パラリンピックへの出場を果たしたのがザンビアのモニカ・ムンガ選手だ。障害そのものに加えて、障害による差別等、複合的な困難と向き合う人々が今大会に数多く出場していたことを多くの日本人に知って欲しい。

2. J1鳥栖のパワハラに関し日本サッカー協会に告発文

告発によると、監督による別のパラハラに関し複数の証言があったにも関わらず、クラブ側は公表せず追加処分もしていないという。我々ヒューマン・ライツ・ウォッチ(以下、HRW)は「日本はオリパラ開催を契機としてスポーツにおける暴力や虐待をゼロにするレガシーをうち立てるべき」と主張してきたが、いまだ問題は多い。本件でも第三者機関を立ち上げ諸外国並みの調査・対応を行うべきだ。

3. 体調不良で誇張疑う スリランカ女性死亡で入管が報告

仮放免のあり方や医療態勢を含めた入管の抜本的改革は不可欠だが、そもそもなぜ収容されていたのか。日本は難民受け入れが大変少ないし、本件のようにDV被害者を強制送還から守る制度もない。収容されるべきでない人々を強制退去処分にしたうえで収容しているという根本が早急に解決されなければいけない。国民が声を挙げ、制度を整えるよう政府に対応を促すべきだと考えている。

4. ガザ地区への空爆で国際法違反 検証結果が発表される

今年5月に起きたイスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区の激しい軍事衝突では、高層ビル4棟を含めた約1,500のターゲットに対する攻撃で多くの人が仕事や住居を失った。イスラエル側は武装組織に対する攻撃だったと主張しているが、我々HRWは8月、詳細な調査をもとに国際法違反の攻撃と判断・発表した。今回の攻撃で5万戸が被害を受け、少なくとも66人の子どもを含む129人の民間人が犠牲になっている。ICC(国際刑事裁判所)の捜査が必要だと考えている。

5. 日本に暮らす脱北者5人が北朝鮮政府に賠償請求

日本の裁判所の管轄権に北朝鮮政府が服するとした今回の判断は大きい。主権国家は他国の裁判権に服さない主権免除の原則があり、裁判の成立自体が焦点とされていたためだ。北朝鮮への帰国事業ではおよそ9万3,000人の在日コリアンや日本人妻と言われる人々が「地上の楽園」を信じて北朝鮮に渡ったすえ、人生をめちゃくちゃにされ日本に帰ることもできなくなった。今も大変な人権侵害が続いていることを忘れてはならない。

【スペシャルトーク】テーマ:「タリバンが掌握したアフガニスタンの人権危機に対し、日本は、世界はどうすべき?」

スペシャルトークでは、アフガニスタンのハザラ族ご出身で、現在は日本に帰化していらっしゃる久在(ひさある)さんにお話を聞きながら、タリバン掌握後のアフガン人権危機について土井香苗さんに掘り下げていただいた。

久在氏:1996~2001年のタリバン政権下、2000年にはマザリシャリフでハザラのジェノサイドがあったことは国際社会の皆が知っている。2001年にはバーミヤンの仏像も破壊されたが、これは昔からアフガンに住んでいたハザラの存在や歴史そのものを消すためだ。また、実はハザラの迫害はガニ政権でも再び酷くなっていた。2年ほどから、ハザラの病院、小学校、大学、結婚式場、モスクなどで自爆テロが相次ぎ、赤ちゃんや子どもも犠牲になっている。そんな状況で、さらにタリバンが政権を取ればどうなるか。容易に想像できると思う。

久在氏:日本との関係では、これまでJICA(国際協力機構)のサポートで何百人ものアフガニスタン人学生が日本に来て、早稲田大学やお茶の水女子大学で学んだのちアフガンへ戻って政府で働いていた。しかし、前政権で働いていたことがタリバンに知られたら命の保証はない。助けを求める彼らの声は毎日日本へ届いているが、JICAに助けを求めても日本政府からは支援の動きが出ておらず、皆が絶望のなかで生活している。彼らは希望の光。アフガンの財産であるし、日本の皆さまの税金で勉強させていただいたという意味では日本の財産とも言えるのではないか。

土井氏:ハザラ民族をはじめ、前政権で働いていた方々、さらには人権活動家・ジャーナリスト・弁護士等が、特にタリバンから狙われている。そうした人々を日本政府は難民・避難民として受け入れるべきではないか。日本と関係を持った人々はなおさらだ。日本との関係も身の危険につながる可能性がある以上、日本政府が責任を持って支援し、ビザを出して家族とともに日本へ受け入れる必要がある。しかし、報道によると人道ビザが発給されるのは、大使館・JICA・日本のNGOで直接働いていた人々やその家族で、500人ぐらいに限られるという。欧米諸国は自国に関係なくとも何万人も受け入れると言っているなか、自国の関係者さえ全員受け入れない日本の対応は本当に残念だと感じる。命の問題なので一刻も早く政策の方向を変えて受け入れ枠を広げるべきだと思う。

久在氏:タリバンは現在「女性の権利を守る」と言っているが、すべて国際社会を騙すプロパガンダだ。実際、一昨日は警察で働いていた妊娠8ヶ月女性が殺されたとのニュースも入っている。タリバンは何も変わっていない。国際社会は気をつけないといけない。行く方法があるなら私自身がアフガンへ入ってタリバンと戦いたいし、同じ気持ちを持った同胞が欧米にも数多くいる。現地で先日デモをした勇気ある女性たちとも電話で話したが、皆「私たちは国から離れない。タリバンと戦う」と言っている。

ダイバーシティニュース視聴方法

1.LuckyFM茨城放送のラジオ FM88.1/94.6MHz
2. Youtubeライブ配信(アーカイブでも視聴可能です)https://www.youtube.com/channel/UCOyTwjQoiUJXxJ8IjKNORmA
3. radikoでも聴取可能です

最新情報は、Twitterでご確認ください。

 

※当コンテンツは作成時点までの信頼できると思われる情報に基づき作成しており、正確性、相当性、完成性などのほか、当情報で被ったとされる利用者の不利益に対しグロービス知見録編集部は責任を負いません。

RELATED CONTENTS