ダイバーシティニュース 政治(8/30)安部敏樹「アウティング」【9/30までの限定公開】

安部敏樹(あべ・としき):一般社団法人リディラバ 代表理事
1987年生まれ。2009年、東京大学在学中に、社会問題をツアーにして発信・共有するプラットフォーム「リディラバ」を開始。2012年に一般社団法人、翌年に株式会社Ridiloverを設立。第1回 総務省「NICT起業家甲子園」優勝、「KDDI∞Labo(ムゲンラボ)」第4期 最優秀賞 など受賞多数。2017年、米誌『Forbes』が選ぶアジアを代表するU-30選出。著書『いつかリーダーになる君たちへ』(日経BP社)『日本につけるクスリ』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。TwitterFacebook

安部敏樹さんのニュースピックアップ

1. ワクチン浸透しない米国 医療現場では苛立ちも

日本でもワクチンが一定量行き渡ったあとに同じようなことが起きるかもしれない。現場では医療関係者の方々が懸命に対応している。それなのに、意思を持ってワクチンを接種しなかったがゆえに感染した人々から新たな感染が広がったりすれば、「接種していれば予防できたのに」との思いにもなる。今後は医療および保健従事者の方々のメンタルヘルスも皆で考えていきたい。

2. オリンピック選手の性的指向がSNSで暴露

強く非難されるべき行為だ。内容に関わらず、その人にとって大切なプライバシーの暴露が良くないというのは想像すれば誰でも分かる話。性的指向や性自認の暴露も当然許されないし、それが自殺につながるケースもある。こうしたニュースによって注意喚起がなされ人々の知識が増えれば、社会全体でそうした暴露を予防する力も高まると思う。ぜひメディアもたくさん取り上げて欲しい。

3. ホームレスの生活再建は個室住まいが第1歩に

日本のホームレス支援ではタコ部屋のような施設に入るケースも結構ある。しかし、まずは住居等のプライベート空間を確保する「ハウジングファースト」が、ホームレスの方々の社会復帰に向けて最もクリティカルな要素になることはさまざまな研究でも分っている。人権の話として大切であることはもちろん、個室提供によって新たに労働者となる可能性が高まれば結果的には社会にもメリットがあるはずだ。個室提供を徹底すべきだと思う。

4. 高齢の親が中高年の子を支える“8050問題”の構図

40歳以下は若者支援、65歳以上は福祉の文脈でサポートがなされる一方で、40~64歳の人々を支援する窓口は役所にも少ない。働き盛りと言われる世代だが、親の介護や子育てが重なっていたり、そもそも就職氷河期で雇用が安定していなかった人々がこの年代に入ってきたこともある。実は最もサポートを必要としているかもしれないし、そこを適切に支援できるかどうかで65歳以上に対する社会保障全体のコストも変わっていくと思う。

5. 飲酒運転で事故後もやめられない依存症の難しさ

飲酒運転の厳罰化には賛成だが、依存症治療の観点では科学的サポートも欠かせない。アルコールだけでなく、薬物、たばこ、セックス、万引き等の依存もあるし、たとえば摂食障害も依存症との関連が指摘されたりする。心が満たされないときに何かへ依存したくなる人間の性質まで考え、依存症全般にわたる治療法の確立、さらにはその治療法を多くの人に知ってもらうことが大切になるのだと思う。メディアとしても「依存症の人がいました。罰しました。以上」でなく、その人が社会復帰する過程まで、できるだけ伴走して伝えていきたい。

【スペシャルトーク】テーマ:「アウティング」

スペシャルトークでは、性的指向や性自認等、他者に知られたくないと考えている情報を無断で暴く「アウティング」について、安部敏樹さんに掘り下げていただいた。

「この人になら」「このタイミングなら」と、自ら判断したうえで大事な話を打ち明けるのは「カミングアウト」。逆に言えば伝えたくない相手や内容もある。それが知られてしまうと、場合によっては自分の命を絶ってしまうほど苦しいこともある。それを他者が勝手に暴露してしまうのが「アウティング」だ。

借金があることを勝手に暴露されたら嫌な気持ちになることは皆さんも想像がつくと思う。相手の誰にとっても知られたくない話を、軽々しく人前で口にすべきではないことは、ある意味、人に対する思いやりとして子どもの頃から学んできたはずだ。今はそれを性的マイノリティを含めた幅広いテーマへ普遍的に当てはめる想像力が求められるし、メディアがそのための知識を提供することも大事になる。

最近では、一橋大の学生が同級生に性的マイノリティであることをアウティングされ自殺してしまう事件があった。この件では大学や教員を含めた周囲のサポートも適切だったと言い難い。アウティング自体が許されないのは確かだ。ただ、こうした問題で難しいのは、知ってしまった側が情報の重さに耐えられなくなり、未必の故意を含めて誰かに言ってしまう点だ。他者の重大な秘密を知ってしまった人の心もケアしつつ、アウティングが起きないよう周辺環境を整えることが大切なのだと思う。

また、サポートといっても単にガイドラインをつくればいいわけではない。相談窓口でも最終的には1対1のコミュニケーションで支援が機能する。知識のない人が窓口に立つと無知ゆえのハラスメントになってしまうこともある。その意味では、性的マイノリティやホームレスといった特定カテゴリだけを切り取って相手を捉えないことも大事だと思う。

我々リディラバは社会問題を調査するとき、「大きな構造」と「小さな個人」のあいだを行ったり来たりしている。たとえば、前半のトピックで扱ったホームレス支援においても、世の中には住居を望まない人もいるわけで、その自由は尊重されるべきだ。ただ、だからといって社会にホームレス問題が存在しないとは言えない。貧困からホームレスへ陥ってしまう社会全体の構造、1人の人間としての個性、そのどちらも行ったりきたりしながら考えることが、あらゆる社会問題で共通した向き合い方になるのだと思う。

ダイバーシティニュース視聴方法

1.LuckyFM茨城放送のラジオ FM88.1/94.6MHz
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