ダイバーシティニュース 社会(8/23)乙武洋匡「パラリンピックの歴史と意義」【9/30までの限定公開】

乙武洋匡(おとたけ・ひろただ):作家
1976年生まれ。大学在学中に出版した『五体不満足』(講談社)がベストセラーに。卒業後はスポーツライターとして活躍したのち、新宿区教育委員会非常勤職員「子どもの生き方パートナー」、杉並区立杉並第四小学校教諭を経て、2013年には東京都教育委員に就任。『だから、僕は学校へ行く!』(講談社)、『オトことば。』(文藝春秋)、『オトタケ先生の3つの授業』(講談社)など著書多数。Twitter 公式サイト

乙武洋匡さんのニュースピックアップ

1. ユニリーバが履歴書で顔写真、性別、First Name欄を削除

採用時に「女性だと数年後に出産でキャリアが中断してしまうかな」等、属性から勝手な思い込みを抱いてしまうアンコンシャスバイアスを防ぐ取り組みだ。実施にあたっては不安の声もあったようだが、「人材の多様化を図る」との強い決意で進められたという。同様の取り組みをする企業は日本でも少しずつ増えている。属性の情報が減ったぶん採用側も判断基準等を改めて問われることになると思うし、注視していきたい。

2. 越前市が通訳を配置して外国人のワクチン接種を支援

日本人だけを接種対象にしていたらいつまでもコロナ禍は収束しない。「我々の税金で外国人にワクチンを打つのか」との否定的見解もあるようだが、私は素晴らしい取り組みだと思う。我々だって海外でコロナ禍にあったら、現地の医療情報等もなかなか得られず不安になってワクチン接種をためらってしまうことはあるだろう。でも「接種会場に行けば母国語を話す人がいる」と知っていれば接種も進みやすくなると思う。

3. 日ハム、チーム内で万波選手に「日サロ行き過ぎ」発言

難しい問題だ。僕と友人たちとの会話では僕の体に関するジョークが出てくるし、僕もそれで笑ったり、「どんな風に面白く返そうか」なんて考えたりする。選手同士のやりとりを一部切り取って一概に批判することには慎重になりたい。ただ、今回のような発言が確認された動画を球団の公式アカウントで公開すると、そうした発言を肯定していると受け取られてしまうこともある。球団側の人権意識に危うさを感じる。

4. MLB解説者が大谷選手への発言で放送業務の無期限停止

発言内容でなくアジア人特有のイントネーションを真似したことに対する処分だという。昔は中国の人々が話しているのを表現するのに「~アル」という言葉をよく耳にした。今それがアウトなのかどうか分らないが、今回はそれに近い感覚なのか。いずれにせよ「日サロ」発言で特段の対応をしていない日本ハムと比べて、「球団や国によって対応がここまで違うのか」と思う。人権問題について、この2つのニュースだけで全体を論じるべきではないが、同じ競技で同じ時期に分りやすい違いを感じたので、あえて2つを並べて紹介した。

5. ユニバーサルデザイン謳うタクシーが乗車拒否で行政処分

私も周囲の仲間も同様の経験をしている人は多く、驚きはない。最近はコラムニストの伊是名夏子さんがJRの無人駅に駅員の方々を呼んだりして批判を浴びたこともある。共通するのは、すべての公共交通サービスは健常者向けにつくられていて、障害者が使おうとすると余分な労力がかかる点だ。そのコストは当事者が負担すべきとの声もあるが、皆、好んで身体的に不利な境遇で生またのではない。その不利が社会生活に反映されないよう、公共機関に関しては国や自治体が負担するという考え方も大事ではないか。逆に、それが実現されたら障害者割引もなくせばいいと思う。

【スペシャルトーク】テーマ:「パラリンピックの歴史と意義」

スペシャルトークでは、パラリンピックの歴史と意義について掘り下げていただいた。

東京パラリンピックにはドイツのマルクス・レームという義足ジャンパーが出場する。彼は走り幅跳びでオリンピックの金メダル選手を上回るほどの記録を出しているが、オリンピックには出場できない。理由は「義足が有利に働いていないと証明できないから」。でも、南アフリカのオスカー・ピストリウスという義足ランナーは、2008年北京パラリンピックの100/200/400mで金メダルを獲得したのち、2012年ロンドンではオリンピックに出場して400m準決勝まで進んだ。なぜ同じ義足アスリートなのに後者はオリンピック出場が認められ、前者は認められないのか。

1つ言えるのは、ピストリウス選手はオリンピックで表彰台を狙えるタイムを出しておらず、「準決勝止まりぐらいだろう」と予測できた点だ。でも、レーム選手は表彰台どころか金メダルを狙える。「健常者に勝ってしまうのならダメ」という線引きをしているように、私には見えてしまう。レーム選手を出場させるべきと言いたいのでなく、門戸を閉ざすなら合理的な理由が提示されるべきではないか、と。「義足が有利に働いていないこと」が基準ならピストリウス選手の出場も合理的ではなかった。

また、ここまで考えると「そもそもパラリンピックって何?」という話にもなる。障害者が健常者の記録を上回るケースが増えた場合、今後は「最高の記録ならパラリンピック。生身の人間による競技ならオリンピック」という世界観になる可能性もある。それなら、「オリンピックのなかに男女別や体重別があるのに、障害者だけ別の大会になるのはなぜか」と。

むしろ1つの大会のなかで、男女別や体重別と同様、「健常の部」「義足の部」「車椅子の部」という風に分けることは理念上可能だと思う。そうした流れのなかで、「そもそも障害ってなんなんだろう」という議論に、ひいてはさらなる多様性実現の議論もつながっていくのではないか。

ダイバーシティニュース視聴方法

1.LuckyFM茨城放送のラジオ FM88.1/94.6MHz
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