ダイバーシティニュース 社会(8/16)杉山文野【9/30までの限定公開】

杉山文野(すぎやま・ふみの):特定非営利活動法人東京レインボープライド共同代表理事/渋谷区男女平等・多様性社会推進会議委員。フェンシング元女子日本代表。トランスジェンダー。早稲田大学大学院教育学研究科修士課程終了。 日本初となる渋谷区・同性パートナーシップ条例制定に関わる。 現在は父として子育てにも奮闘中。公式サイトTwitter

杉山文野さんのニュースピックアップ

1. メンタリストDaiGo氏が弱者軽視発言で炎上、謝罪へ

弱い立場にあった人が力を持ったときに陥りがちなケースだと感じる。「俺ができたんだからお前もできるだろう」と。ご自身は壮絶ないじめを受けた過去があるというし、相当な努力をなさってきたのだと思う。ただ、努力できる環境にない人もいるわけで、自身が受けてきた恩恵に気づかず、いつの間にか弱い立場の人々を傷つけてしまっていたのは本末転倒だと思う。240万人ものYouTubeチャンネル登録者がいる方だ。その大きな影響力を、社会を良くする方向に使って欲しい。

2. 入管施設で死亡のスリランカ人女性、映像を遺族に開示

あまりにも非人道的だ。スリランカ人パートナーのDVから逃れるために交番へ駆け込んだ方を不法滞在の犯罪者として扱ってしまった。入管法や収容施設の構造的問題も大きいが、背景には日本における根深い人種差別意識があると感じる。監視カメラに収められた、口にするのも憚られる入管での扱いを見た死亡女性の妹さんが、「姉は殺された。明日はあなたの番」とおっしゃっていたのが苦しかった。「大変なニュースだ」で終わらせず、こういう国で生きている現実に私たちが目を背けず向き合う必要がある。

3. 重量挙げ出場のトランスジェンダー選手が引退

五輪出場後のインタビュー記事を拝見したが、すごく穏やかな表情をなさっていたのが印象的だった。公平性について賛否があり、競技以外で注目が集まってプレッシャーも大きかったと思う。まずは「お疲れ様でした」とお伝えしたい。彼女の出場は、よりインクルーシブなスポーツ界を実現するための歴史的な一歩。これを機に日本でもトランスジェンダー選手の出場などについて前向きな議論が進めばと思う。

4. 選手村滞在の五輪選手、性的指向がSNSで暴露

当事者に断わりなく性的指向がSNSで暴露(アウティング)されてしまった。非常に悪質で、いたずらでは済まない事件だ。いまだ性的マイノリティであることが犯罪とされる国もあり、そうした国では場合によって死刑になるケースもある。国へ帰ることが難しくなってしまう可能性すらあるわけで、プライドハウス東京としても今回は緊急声明を出し、IOCや五輪組織委員会に再発防止のアクションを要請した。

5. #arigato2020で感謝投稿 発案は女子サッカー岩渕選手

SNSをポジティブに使った良い例だ。選手や関係者とすれば、無観客ということもあってサポートまたは応援してくれた人々に直接お礼を言える機会が少なかったのだと思う。メディア経由だと発言内容が正確に伝わらないケースがあるなか、SNSを通じて自分の言葉できちんと発信できた選手は多かったのではないか。「今大会はアスリートファーストになっていないのでは?」との批判もあったが、SNSで個人の発信力が高まれば、今後は選手の声が一層反映されるようにもなると思う。

【スペシャルトーク】テーマ:「国や順位にとらわれない五輪」

スペシャルトークでは、「国籍にも順位にもとららわれない競技・スケボー」を通して、今後のオリンピック・パラリンピックの姿を杉山文野さんに掘り下げていただいた。

最後まで大技にチャレンジしていた岡本碧優選手が印象的だった。結果的には失敗してしまって泣いていた岡本選手だが、各国選手が駆け寄って健闘をたたえ、最後は岡本選手からも笑顔がこぼれていたシーンでは涙が出そうになった。

エクストリームスポーツのカルチャーは必ずしも(形式上の)勝利だけを目的としておらず、何より自分自身を高め、挑戦する姿勢を大切にしているのだろう。五輪ではメダルの色や数ばかりが話題になりがちだ。メダルを取ること自体は素晴らしいが、それ以上に、挑戦する人々、そしてそれをたたえる人々がいることを発信したという意味で、今回初めて五輪競技となったスケボーは象徴的だった。

「超やべー」「ハンパねえ」なんていう解説も話題になった通り、エクストリームスポーツにはファッションや音楽といった若者文化が大きく影響している。限界に挑戦すること自体が価値であり、順位でなく“クールであること”を競い合うという意味で、国同士で順位を争う従来の競技とは大きく異なっていると感じる。何かの技に失敗したあとも、大会の結果と関係なく成功するまでチャレンジを続けたり、運営側もそれを止めなかったり。選手たちがメディアに尊敬する選手の名前を伝えたとき、その選手の国籍を聞かれて「知りません」と答えたという話もある。国でなく人で見るカルチャーなのだろう。

今回の五輪を一言で表現すると「複雑」。新国立競技場の建設問題、エンブレム撤回、女性蔑視発言、開会式直前の関係者辞任等々に加えて、アスリートファーストと言いながら放映権を持つ企業の論理が優先されてしまう側面、さらにはコロナの感染拡大など、本当に多くの問題があった。ただ、一方では選手の素晴らしい活躍に元気や希望をもらった人が多かったのも事実だ。そういう混沌とした大会のなか、誰かを蹴落として登り詰めるのでなく、ベストを尽くしたうえで互いにたたえ合うという若い世代の姿は、今の日本にとって大きなメッセージになったと思う。

ダイバーシティニュース視聴方法

1.LuckyFM茨城放送のラジオ FM88.1/94.6MHz
2. Youtubeライブ配信(アーカイブでも視聴可能です)https://www.youtube.com/channel/UCOyTwjQoiUJXxJ8IjKNORmA
3. radikoでも聴取可能です

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