ダイバーシティニュース 社会(7/19)杉山文野【8/31までの限定公開】

杉山文野(すぎやま・ふみの):特定非営利活動法人東京レインボープライド共同代表理事/渋谷区男女平等・多様性社会推進会議委員
フェンシング元女子日本代表。トランスジェンダー。早稲田大学大学院教育学研究科修士課程終了。 日本初となる渋谷区・同性パートナーシップ条例制定に関わる。 現在は父として子育てにも奮闘中。

杉山文野さんのニュースピックアップ

1. 性的マイノリティ描く小説で台湾の李琴峰さんが芥川賞

デビュー作からリアルな視点で性的マイノリティを題材にしていらして、作中で東京レインボープライドを扱っていただいたこともある。性的マイノリティへの理解を深めてもらう社会活動も大切だが、小説のようなコンテンツ、特にその芥川賞受賞は多くの方々へ理解が広まる機会になると思うので、今後も注目していきたい。

2. 杉山氏理事選出に関し、JOCが女性枠選出の経緯説明を訂正

自分のニュースで恐縮だが、僕自身は当然男性枠と考えていた。ただ、戸籍上は女性ということで、たとえば法人登記で住民票が必要になる等、今までもいろいろ面倒な手続きとなることは多く、それで今回も「トラブルに巻き込まれないよう、うまく進めてください」といった言い方を僕もしてしまっていた。それがJOCへ話が伝わる過程で女性枠を希望するようなニュアンスに変わってしまったという経緯だ。もともと女性理事の比率は目標の40%を超えていたので、女性比率を高めるために僕が女性枠で入ったということもない。いずれにせよ、スポーツ界では性自認等に関し理解が遅れている部分があるからこそ、僕にお声掛けをいただいた面はあると思う。理解を進むようしっかり取り組みたい。

3. 都内ホテルで「外国人専用」掲示 差別の指摘で撤去へ

「差別の意図はなかった」との話だが、アウトだと思う。多様性も調和も“おもてなし”も何もない。コロナ感染対策で、海外からいらした方と一般の方々との動線を分ける対策自体はいい。ただ、人種や国籍はまったく関係ないのに、なぜ「日本人と外国人」なんて分け方をしてしまったのか。時代の流れや歴史に学んでいない。現場レベルの間違いを誰か止めることはできなかったのかと思う。

4. 雑誌でいじめ告白の小山田圭吾氏、五輪楽曲担当を辞任

当該記事を読んだ。ここで口にするのも憚られる内容だ。「20年以上前の話を蒸し返さなくても」との声はあるが、そんなレベルでないと感じる。これは自分への戒めも含むが、人は自分の被害には敏感になる一方、自身の加害には鈍感になりやすいと思う。やられた側は一生の傷になっている可能性も高いわけで、辞任してしかるべきだったと思う。ご本人の謝罪文を読むかぎり真摯に反省している様子だったので、その言葉で終わらせず、同様の過ちが繰り返されない社会にするためご尽力いただきたい。

5. 五輪に出場するLGBTQアスリートは史上最多の142人

56人だったリオ大会に対し東京大会は少なくとも142人。スポーツ界全体で性的少数者であることをオープンにしやすい環境になりつつあると思う。ただ、まだ140人と言えるかもしれないし、出場するのは法整備が進んでいる国の選手が中心。日本人はゼロだ。差別禁止や婚姻の平等が実現している国では性的少数者であることを言っても言わなくても安心してプレイできる環境があるのだと思う。誰もが自分らしくあれる社会になりスポーツ界でも心理的安全性が高まれば、それによってさらに良いパフォーマンスが生まれることもあると思う。

【スペシャルトーク】テーマ:「Xジェンダー」

映画監督の常井美幸さんをお迎えして、公開中のドキュメンタリー映画『ぼくが性別「ゼロ」に戻るとき 〜空と木の実の9年間』、そしてXジェンダーについてお話を聞いた。

この映画は、女性に生まれたが男性として生きたいと願った小林空雅(こばやし・たかまさ)さんという若者を描いたドキュメンタリーだ。私が出会った2010年当時は15歳。男子生徒として中学に通うことを認められたばかりで、そこから24歳になるまでの9年間を追いかけた。

性別は人格の根幹だと考えている。そこが揺れている子どもにとって、性別による枠組みが多い学校は辛い場になることが多い。私は映画制作を通し性別に揺れる30人ほどの方とお話をしたが、自身が抱える悩みのなか、「自分は何者か」「どう生きるべきか」と、人一倍考えているような方が多かった。そのためか、人格的にも深みがあり魅力的な方が多かったと感じる。そうした方々とお話をするなかで、私も自身の固定観念や、自分自身につくっていた“枠”に気づかされることが多かった。

小林さんは体を男性に近づける手術を2度行ったのち戸籍を男性に直したが、やがて男性ということについても「違うな」と気づく。映画では、そうして「Xジェンダー」という、性別がない状態で生きていくと決意するまでを描いている。

現在は日本各地でのロードショーに加え、80箇所ぐらいで自主上映もしていただいている。私の出身でもある茨城でも、教育委員会や市町村人権啓発担当の方々をお呼びして上映会を行う予定だ。

できれば今辛い思いをしている中高生に観て欲しい。「自分は自分のままでいいんだ」と気づいてラクになってもらえたら。そうでない子どもにとっても多様なジェンダーがあるという状態が自然になれば、10~20年後はもっと生きやすい社会になるのではないか。中学高校向けに短尺版の無料レンタルもしているので、ぜひご活用いただきたい。

常井美幸(とこい・みゆき):映画監督、プロデューサー
国際基督教大学(ICU・東京)教養学部コミュニケーション学科卒業。英ブリストル大学ドラマ学部映画学科修士課程修了。大学卒業後はレコード会社の洋楽ディレクターとして活動後、英国留学し映像制作を学ぶ。帰国後はエディターとして活動したのち、ディレクター/プロデューサーに転向。 『ぼくが性別「ゼロ」に戻るとき 〜空と木の実の9年間』でサンフランシスコ日本映画祭ヒューマニティ賞と東京ドキュメンタリー映画祭観客賞を受賞。

RELATED CONTENTS