講演:
冨山和彦 株式会社経営共創基盤代表取締役CEO/元・産業再生機構代表取締役専務/グロービス経営大学院客員教授
対談:
堀義人 グロービス経営大学院学長/株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ代表パートナー
冨山和彦 株式会社経営共創基盤代表取締役CEO/元・産業再生機構代表取締役専務/グロービス経営大学院客員教授
対談:
堀義人 グロービス経営大学院学長/株式会社グロービス・キャピタル・パートナーズ代表パートナー
企業破綻の病因は「経営」に帰着する
産業再生機構は小泉(純一郎)政権の経済政策の中枢に据えられ、発足しました。有用な経営資源を保持しながら、他方に過剰な債務を抱えた企業を健常な状態とする手助けをすることで、日本の産業再生を加速させる狙いがそこにはありました。個人、企業、国が互いに連環していることは言うまでもありませんが、国の政策を通じて企業や人間の業を俯瞰することで気づいたことは多く、そうしたお話もできればと思っています。
産業再生機構で企業再生のためにとった手法は、(銀行側・債権者側から見ると)「金融と産業の一体再生」と呼べます。(企業側・債務者側から見ると)「財務と事業の一体再生」とも呼べるでしょう。
自力再生の難しくなった企業のバランスシートは多くが、実質の企業価値(バランスシートの左側)に対し、債務(バランスシートの右側)が過剰になっています。借金を返すのに100年はかかるだろうと思われるような会社に良い人材は就職せず、債務超過の状態では設備投資も適わないため事業価値も高められません。結果として、破綻への一途を辿るほかないのです。この悪循環を断ち切ることが「再生」につながります。つまり、金融工学的な手法を用いて過剰債務を切り崩し(バランスシートの右側を小さくし)、同時に経営課題を明確にして新しい戦略を打ち出し企業価値を高めていく(バランスシートの左側を大きくする)。これを両輪で回すことでバランスを整え、企業の健常化を図るわけです。
「なぜ、そんな状態になるまで放っておいたのか」――。企業規模の大小、業界・業態や地域に関わらず、企業破綻の病因は結局のところ、「経営」に帰着します。経済環境の悪化など環境要因を持ち出す人もありますが、それではダイエーがダメになった一方でイオンやイトーヨーカドーが躍進した理由が説明できない。
経営がダメになるということは、経営者がダメになるということです。現代の日本企業が抱える問題の大半は人材の問題であると私は考えています。
40年前、小売業のおける最強・最高の経営者は(ダイエー創業者の)中内功でした。しかし、その彼ですら最後には自ら興した企業を荒廃に導いてしまう。同様に、経営でいえば、ビジネススクールなどで多角化の好例として褒めそやされてきたのが繊維から興り、化粧品や食品に展開したカネボウのペンタゴン経営と呼ばれる手法でした。しかし、これも崩壊します。
元から問題があったわけではなく、優秀と言われる経営者、他社をして見倣わせる経営であっても、どこからか道を誤る。つまり、カネボウやダイエーが踏んだ轍は、誰もが踏みうるものなのです。
経営に係る病は今も進行しています。とりわけ経営を担うマネジメント人材、そして企業統治を担うガバナンス人材が圧倒的に脆弱化している。現場の人材はまだ良いのです。日本人元来の生真面目な気質などが支えとなって、企業のなかで堅牢な基礎構造を築いています。




