パネリスト:
笹井英孝 オムロンコーリン株式会社 代表取締役社長
須原清貴 株式会社GABA 取締役副社長兼COO
ファシリテータ:
岡島悦子 グロービス 講師・フェロー、グロービス・マネジメント・バンク シニアアドバイザー
笹井英孝 オムロンコーリン株式会社 代表取締役社長
須原清貴 株式会社GABA 取締役副社長兼COO
ファシリテータ:
岡島悦子 グロービス 講師・フェロー、グロービス・マネジメント・バンク シニアアドバイザー
人材市場では大きなパラダイムシフトが起きている
まず、このセッション開催の背景説明から、始めさせていただきます。
一般に、ある程度の規模の企業の経営者を目指そうと思うと、最低20年は経験を積まなければならないと考えられていると思います。しかし今、人材市場では大きなパラダイムシフトが起きています。経営知識と実務経験を効果的、効率的に積むことで、これを倍速で実現する若いプロ経営者が続々と登場しているのです。
経営のプロを目指す方にとって、MBA取得はゴールではなく、あくまでスタートです。MBAを通じて得た知識に、重ね合わせる実務経験が肝となります。転職だけが解とは言いませんが、望むキャリアに対して適切な経験を積むためには環境を選ぶことも大切です。
このセッションでは、キャリアの早回しを実現する、成長機会獲得の方法や活かし方を、ロールモデルとなる2人のパネリストから伺っていこうと思います。まずは、自己紹介から、お願いします。
笹井:オムロンのグループ会社、オムロンコーリンの社長をしています。当社の前身は、1975年に創業した医療機器会社、日本コーリンです。スポーツジムなどに、腕を筒に入れて血圧を測る機械が置いてあると思いますが、あれを日本で初めて作った会社です。成長著しく、店頭登録まで果たしたのですが、その後、経営不振に陥り、2003年に完全破綻。当時、私は外資IT企業に所属していたのですが、売却先のファンドから声がかかり、2004年から経営企画担当役員として事業再生に関わることになりました(ファンドに売却後の社名はコーリンメディカルテクノロジー、以下コーリンと記述)。
その後、幸いにして1年半で経営状態を立て直すことができ、2005年6月にオムロンヘルスケアにエグジット。同年9月に、37歳で(売却先子会社としてのオムロンコーリンの)社長に就任しました。
コーリンは製販一体の医療機器会社でしたが、オムロングループにエグジット後、グループ内で事業再編が進み、現在はオムロンヘルスケアが医療機器の開発を担い、当社(オムロンコーリン)が販売とマーケティングというすみ分けになっています。売上高は90億円。私は現在、39歳です。
須原:Gabaというマンツーマンの英会話スクールで、3年前からCOOをしています。現在41歳です。
Gabaは1995年に設立された会社で、2004年7月に創業オーナーが100%エグジットしました。当時、全国20カ所に教室を展開し、売上高は50億円、社員200人という規模。創業者のカリスマで、そこまでの規模には達したものの、次の展開を考えあぐねている状態でした。IPO(株式公開)など諸々の展開を検討の結果、創業者の意思などから、最終的にはMBO(経営陣買収)により事業継承をしました。その後、現在の経営陣で新しい成長の軸を構想し、2006年に東京証券取引所マザーズ市場に上場。現在は、IPO後の社内基盤整備に取り組んでいます。
ちなみにIPO前とIPO後とを比較すると、IPO後の企業経営のほうが何倍も難しいというのが今の私の実感です。IPO前というのは、健全な売り上げと利益さえあれば、監査法人、ベンチャー・キャピタル、弁護士など、様々な人たちが寄って助けてくれますが、IPO後は波が引くようにしていなくなってしまう。そんな中、継続的な成長を支える戦略や基盤を作り上げるのは、遥かにチャレンジングなことと感じています。
1歳年上のCEO、青野(仲達・代表取締役社長兼CEO)さんとは、理想的な二人三脚をされているとの認識ですが、具体的には、どのように役割分担をしているのでしょう。
須原:平たく言うと、彼が「考える人」、私が「実行する人」です。彼が「将来を見る人」、私が「現在を見る人」という言い方をしても良いかもしれません。彼が構想するビジョンを、私が現実的なプロセスに落とし、数字を作り込む役割です。
経営のプロを目指すビジネスパーソンの市場価値は、主に経営知識と実務経験の掛け合わせで高まっていきます。MBAでアドバンスのクラスを受講したり、戦略コンサルティングなどに従事したりすると経営知識の部分が向上し、マネージャーとして事業運営などに携わり、実績を積めば経験値が上がります。
これに加え、私がヘッドハンターとして経営者候補を評価する際には、大まかに3段階のマネジメントステージに分けて判断しています。1段階目は、自身でプロジェクトなど創出してP/Lを立てられるかということ。2段階目は、人を動かしてチームとしてP/Lを作れるかということ、そして3段階目が、事業としてP/Lを作り、また、先行投資や組織変革などしながら、成長を永続させるB/Sを描けるか、ということ。
お二人は、この3段階目を、かなりやっておられますが、この切り口で(シニアマネジメントとして)何をしていらっしゃるか、もう少し詳しく教えてください。
笹井:経営破綻した会社なので、最初はキャッシュフローのマネジメントからやりました。エグジット後は無借金経営となったため、将来的な投資を重視したマネジメントに軸足を移しています。
須原:サービス業はヒトのモチベーションがP/Lに直結する特質を持つため、組織開発に一番、エネルギーを注いでいます。現在、34校を展開し、インストラクターが1000人、社員が300人強、社員の25%は外国人という多様な人材を包含する組織のため、このパワーを最大化する仕組みづくり、ヒトづくりが肝になると考えています。




