アライアンス・パワー(同盟とパートナーシップ) 

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初稿:2011年12月2日
第二稿:2015年5月19日

中国の透明性を欠いた国防力の強化と尖閣諸島・ガス田等をめぐる海洋権益をめぐる対立。北朝鮮による核・ミサイル開発。ロシアの積極的な極東地域への進出など、日本を取り巻く国際情勢は課題が山積で、依然として緊張度の高い状態が外交・安全保障分野で続いている。

特に、中国の積極的な海洋活動による脅威は深刻化している。その影響は、日本のみならず、南シナ海の南沙諸島問題で、ベトナムやフィリピン等の東南アジア諸国との緊張をもたらしている。

このような東アジア地域における中国の台頭に対抗し、同地域での平和と繁栄を図るには、日本のみの力ではなく、米国との連携、更にはASEAN等との連携を図ることが重要である。

その意味では、2011年11月18日の日本・ASEAN首脳会議での「バリ共同宣言」において、南シナ海での領有権対立に関する海洋安全保障分野での協力を強化したことは評価できる。さらに、「アジア回帰」の外交政策を打ち出したオバマ米大統領が、初めて参加した2011年11月19日の東アジア首脳会議(EAS)で、南シナ海問題について、海洋での国際法の重要性、主権と領土保全の尊重、紛争の平和的解決などを謳った宣言が採択されたことは評価できよう。

このような日本・米国・ASEANでの協力連携は、今後の対中国外交政策のあり方について、大きな示唆があった。外交において重要なことは、アライアンス(同盟とパートナーシップ)である。一国の力で対抗できない問題も、多くの国々と連携を図り、自国の主張を通しやすくすることで解決することが可能となる。

そのアライアンスの面でも、中国は積極的な外交攻勢を展開している。特に、上海協力機構(SCO)、BRICS、中国・ASEAN首脳会議、中国・太平洋島嶼国経済協力フォーラム(CPIC)、中国・アフリカ会議、中朝関係、パキスタン・ミャンマーへの経済・軍事支援など、多国間・二国間で主導的な立場を確保しつつある。

外交の要であるアライアンスの面で、日本が考え得る施策を20番目の「行動」として初めて提案した2011年12月時点の状況に加えて、2015年現在では、中国はAIIBの設立や海と陸のシルクロード構想、さらには南シナ海での積極的な活動など、地域における覇権確立に向けた動きを加速化している。そういった状況の中、日本は限られた資源の中で優先順位を持ちながら戦略的なアライアンス構築を図る必要がある。

1. 日米同盟関係のさらなる深化を!【一歩前進】

日本外交におけるアライアンス・パワーの極大化を考える中で、日本にとって唯一の同盟国である米国との関係を基軸に捉えることは当然だ。東アジア地域の平和と安定を維持する上で、日米同盟(日米安保条約)は重要な国際公共財であり、今後さらなる強化を図ることが不可欠である。

具体的には、普天間基地移設問題の早期解決、日米両国の外交・防衛担当による日米安全保障協議委員会(「2+2」閣僚会合)の定例開催、集団的自衛権の見直しによる日米同盟の共同運用の実効性向上、武器輸出三原則の見直しによる技術協力の推進、などが求められる。

日米同盟の深化という面では、2012年12月に成立した安倍政権は極めて大きな成果を上げていると評価できよう。武器輸出三原則の見直しに関しては2014年4月の閣議決定で、「防衛装備移転三原則」を導入し、輸出や国際技術協力を可能とした。2015年4月に行われた、18年ぶりの日米ガイドライン(防衛協力の指針)の改訂は、日米同盟協力を周辺事態だけではなく、世界規模へと広げるものであった。1997年に作られたこれまでのガイドラインは、日本有事と、朝鮮有事を念頭に日本周辺で武力衝突が起きた場合の自衛隊と米軍の役割分担を定めていたものだが、新ガイドラインは、自衛隊による米軍の支援を世界規模に広げている。「アジア太平洋地域及びこれを超えた地域が安定し、平和で繁栄したものとなるよう」にすることを日米ガイドラインの目的とした上で、「日米同盟のグローバルな性質」を強調すべき事項のひとつと明記している。新たなガイドラインでは、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態が起きたと判断すれば、南シナ海や中東といった日本から離れた場所でも、そこで戦う米軍に自衛隊が補給などの後方支援を行うことを可能とし、国際的な安全確保のために軍事活動を行う米軍を後方支援することも、自衛隊の役割として明記した。

これを受けて安倍政権は2015年5月に現行憲法下で集団的自衛権を行使できるとする閣議決定を行い、新たなガイドラインに基づくグローバルな日米協力を可能とする周辺事態法改正、国際平和支援一般法などの関連法案を国会に提出している。

経済協力の面でも、TPP交渉も合意に向けて大詰めを迎えようとしている。中国などは日米同盟関係に亀裂を入れるべく、かつての戦争に対する歴史認識カードを使った外交戦術を駆使しているが、そのシナリオは思惑通りにはいかず、いま、東シナ海や極東アジアの平和と安定に向けた日米の同盟関係はより強固になったといえよう。

東アジアひいては世界における民主主義、自由、法の下の平等、市場経済といった現代世界が築き上げた基本的価値観を守り、平和と安定を維持するため、日米のアライアンスをいっそう強化する必要がある。そのため、安全保障面、経済協力面の目の前の課題を着実に解決していくことが重要であろう。

2. 親日国との2国間パートナーシップを強化せよ!

アメリカが日本の唯一の同盟国であり、日米関係が日本外交にとって最重要であることは言うまでもない。しかし、だからと言って、そのことは他国との関係をおろそかにすることと同義ではない。

特に日本が位置する東アジア地域は、世界でも最も軍事的な緊張が大きい地域と言える。中国、ロシア、北朝鮮といった世界の軍事力(兵力数)トップ5に入る国々がひしめき合い、さらにこれらの国々は国際法のルールをしばしば踏み外す得体の知れない輩でもあるわけだ。こうした地域に日本が身を置いている現状を考えれば、日本はできる限り多くのパートナーを作り、米国を第一に置きつつも、それらの国々との関係を強化しておくことが必要だ。

もちろん、だからといってどの国ともパートナーになれるわけではない。第1に親日国が、そしてその次には親米国(同盟国)であり共通の価値観を有する国が有効な対象となろう。具体的にアジアにおいては豪州、韓国、タイ、フィリピン、インドネシア、ベトナム、インド、トルコなどとの二国間関係の更なる深化・発展が、日本外交にとっての試金石となる。日本が技術的に優位にある原子炉や新幹線等の輸出を通しての関係強化や、日本企業の積極的な現地投資、さらにはタイの洪水災害やネパールの地震の際に行われた災害時の連携等は、これらの国々との関係を強化する大きなドライブとなろう。

この地域における軍事面での共通の「懸念」は、中国の膨張である。逆に言えば、多くの国にとって、安全保障上の共通の利害が一致しているわけだ。昨今、韓国や豪州などに加えて、インドなどとも自衛隊の合同軍事演習が拡大していることは評価すべきだ。合同演習に加え、技術供与などを含めた安全保障面での協力を、アジア全体に拡大し、パートナーシップを強化していくことは極めて重要だ。

一方、世界に目を向ければ、ウクライナ情勢でEU諸国とロシアの経済関係が悪化する中で、EU諸国と日本との連携強化を進めることは日本の国益に適う。中近東やアラブ諸国とのパートナーシップの強化、親日国が多い中南米諸国との関係をAPECやTPPを通じて強化していくことも重要だ。

上記のような親日国、親米国との経済協力、平和安全のための協力を深化させ、将来的にはアジア地域において日米同盟に次ぐ、第2、第3の同盟を志向すべきではないか。日米同盟は最重要だが、唯一の同盟関係であり続ける必然性はない。他国との同盟関係があったほうが、日米同盟もより強固になるはずだ。諸国とのパートナーシップを強化し、その先に、アライアンスの成立を目指すべきだ。

3. 既存の多国間の枠組みを活用し、連携強化を!

(1) G7での欧米先進国との連携の強化を!

G20が鳴り物入りでスタートしたものの、BRICSを中心とする新興国と先進国との鬩ぎ合いが発生し、世界的課題の解決には適さないことが段々明らかになってきている。つまり、世界はG7でもG20でもないGゼロの世界に突入してきていると言える。

(Gゼロ世界の中での日本の国際貢献 100の行動91 世界の中の日本編3)
http://100koudou.com/?p=2247

そういった状況では、一旦G7に戻って、価値観を共有する欧米先進国との連携を強化していくことが肝要となろう。相次ぐ欧州経済危機により、国際経済は不透明で不安定な状況が続いている。こういう時期にこそ、日本の経験をシェアし、連携していくことが重要である。

(2)アジア・太平洋地域との関係強化を!

日本の多国間外交において重要なのは、日本のお膝元であるアジア・太平洋地域である。世界の政治・経済の比重は、東へ、アジアへと向かっている。

一方中国は、西側ルールを覆し、自国がリーダーシップを発揮する枠組みの構築を虎視眈々と狙っている。

中国による動きを牽制し市場経済、自由、法の支配などの価値観とルールを守る為、既存のアジア・太平洋地域の多国間の枠組みであるASEAN+3、APEC、東アジア首脳会議などに積極的に参画し、主導権を確保することは、日本にとって死活問題である。

その外交の主導権という意味でもTPPへの参加は、再度日本が米国とともに、この地域を引っ張って行くのだ、という気運をもたらしている。また、海洋の平和を打ちだし、中国を牽制する等の施策も効果大である。

外交の主導権という意味でもTPP交渉への参加表明は、再度日本が米国とともに、この地域を引っ張って行くのだ、という気運をもたらしている。TPPが成立すれば、長期的に中国の貿易面での姿勢改善につながる可能性がある。中国に門戸を閉ざすのではなく、TPP加盟国が中国に対し、外国企業の権益や知的財産の保護などで特定のルールや基準の導入を促すこともできるはずだ。また、海洋の平和を打ちだし、中国を牽制する等の施策も効果は大きい。これらの取り組みに主導的な役割を今後とも日本としては果たしていきたい。

4. 日本主導の多国間協議の強化を!

(1)アフリカ開発会議(TICAD)の積極的活用を!

アフリカ開発会議(Tokyo International Conference on African Development)は、1993年以降、日本政府が主導し、国連、国連開発計画(UNDP)および世界銀行と共同で開催する、アフリカ開発をテーマにした国際会議で、5年に1回の首脳級会合に加えて、閣僚級会合を開催する。前回2008年5月の横浜でのTICAD IV(第4回アフリカ開発会議)では、経済成長の加速化、人間の安全保障、環境・気候変動問題などをテーマに、41名の国家元首・首脳(ジャン・ピンAU 委員長を含む)など、アフリカ51カ国、34カ国の開発パートナー諸国・アジア諸国、74の国際機関・地域機関の代表、民間セクターやNGOの代表など 3000名以上が参加する外交史上類を見ない大規模な国際会議であった。

2013年に横浜で開催されたTICADⅤはインフラ整備などの経済分野やテロ対策など安全保障分野での連携強化策を盛り込んだ「横浜宣言」を採択し、閉会した。安倍総理が議長を務める中、会議にはアフリカ54カ国のうち51カ国が参加し、うち39カ国は首脳が出席した。さらに総理は期間中に50の国と組織との首脳会談を行うなど、アフリカ諸国への存在感を大きく示した。

しかしながら、日本は在外公館数や駐在外交官数などにおいて、中国に大きく後れを取っている。TICADは対アフリカ諸国外交の展開において、最重要ツールであることから、さらなる戦略的な活用が求められる。

(2)太平洋島嶼国とのパートナーシップの強化を

日本は南太平洋フォーラム(オーストラリア、クック諸島、ミクロネシア連邦、フィジー、キリバス、ナウル、ニュージーランド、ニウエ、パラオ、パプア ニューギニア、マーシャル諸島、サモア、ソロモン諸島、トンガ、トゥヴァル、ヴァヌアツ)との太平洋・島サミット(Pacific Island s Leaders Meeting:PALM)を、1997年以来、3年毎に5回開催している。同フォーラム加盟国は、アジア太平洋地域の安定かつ持続可能な開発において重要であることから、引き続き同サミットを通じて、政府開発援助、環境問題、漁業、青少年交流分野などでの協力実施が求められる。

アライアンスとは、いかに多くの「仲間」=同盟・パートナーを世界に持つかということに尽きる。その仲間との貸し借り関係、義理人情での助け合い、そして協調関係がいざという時の鍵になるのだ。仲間づくりで重要なことは、優先順位である。「等距離」と言うのは聞こえがいいが、ハッキリとどこが重要かを認識しなければ、戦略的関係を構築できない。日本にとって同盟国、2国間関係、多国間における枠組みを通しての関係を構築するとともに、日本が主導する多国間の枠組みを如何につくるかが重要だ。相手に組みたいと思わせる強みは何かを考え抜き、明確な戦略を持つ必要がある。

その関係構築のためにも、相手国に日本と組みたいと思わせる強さを日本が持つ必要がある。日本の武器は、経済と技術力だ。これが無ければ文化も維持できるか疑問だ。外交力を高めるためにも、日本の経済力を維持し、強化する必要があるのだ。

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