日本の国力・パワーの増強と外交インフラの構築を! 

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2009年の政権交代以降の民主党政権下での日本外交は、混迷を続けていると言わざるを得ない。

同盟国である米国とは、普天間基地移設問題ですれ違いがあり、未だにギクシャクとした関係にある。隣国の中国とは、尖閣諸島での中国漁船衝突事件へ のチグハグな対応が、日本国の外交力の限界を示す契機となり、ロシアのメドベージェフ大統領には、北方領土の国後島訪問をロシア首脳として(ソ連を含む) 初めて許すことになった。韓国とは、竹島領有権問題と従軍慰安婦問題等で、有効な手が打てないでいる。

更に、他国間協議の枠組みでは、先送りされているTPP(環太平洋パートナーシップ協定)参加問題、地球温暖化問題などの懸案が山積している。

一方、その間米国のパワーの相対化と新興国の台頭が進み、国際的な合意形成や紛争解決の枠組みが変化しつつある。日本は自由で開かれた国際秩序の維持とともに、新興国と共存・共栄する世界システムの構築にリーダーシップを発揮しなければならない。

しかしながら、国内政治の不安定さや外交戦略の曖昧さにより、場当たり的な政策対応に終始し、明確な外交戦略を国内外に提示出来ていないのが実態である。

その結果、国家としての明確な意志と、「外交構想力(Agenda Setting)」を国際社会に対して打ち出せていないことから、国際社会でリーダーシップを発揮出来ずに、存在感が低下し続けているのが実情だ。正に日本外交の立て直しは、喫緊の課題なのである。

日本政府は、「国益」と「日本国の役割」を再定義した上で、日本外交のグランドデザインを再構築する必要がある。

「国益」は、日本の領土の保全と国民の生命と財産の確保、日本経済・企業や国民の繁栄、日本の価値観や文化・歴史観の尊厳の維持等、そしてそれらを実現するための国際社会における影響力・発言力の確保と定義しよう。

「日本国の役割」は、国防・外交・ODAを戦略的に行い、国際機関や会議にも積極的に参画し、世界を取り巻く諸問題にもかかわり、世界中から信頼を得て、世界の平和と繁栄に積極的に貢献する国となる、と定義できよう(「100の行動」の基本理念より)。

その「国益」と「日本国の役割」を再定義した上で、日本を取り巻く国際情勢の客観的な分析、日本の国力・パワーの冷静な分析を行い、日本外交の総合 外交戦略(機能別・対象地域別)を策定し、その基本方針の下で、具体的な政策の優先順位付けや工程表を提示することが求められる。

その戦略策定のためには、先ず、総合的な外交政策を支える国力・パワーの増強と外交インフラの構築を図ることが不可欠であろう。したがって、外務省の第1回目の「行動」は「国力・パワーと外交インフラ」について、以下の通り、論じていきたい。

尚、具体的な外交政策課題(例:ハードパワー、ソフトパワー、レジティメート・パワー、アライアンス・パワー、ODAパワー、コミュニケーション・パワーや、日米関係、日中関係など)については、次回以降から順次提案をする予定である。

1.日本の国力・パワーの増強を!

様々な外交課題に対応するには、パワーと影響力が必要となる。日本の国益を守り、日本の役割を積極的に果たすためには、日本の国力・パワーを強化する必要がある。そのパワーの源泉を列挙すると以下の通りに分類されよう。

(1)ハードパワー(防衛力・経済力・技術力・資源確保力など)
(2)ソフトパワー(文化力・教育力・観光力など)
(3)国際機関におけるレジティメート・パワー(国連の安保会議、IMF等における発言力、人的登用力等)
(4)多国間協力・連携のアライアンス・パワー(APEC、上海協力機構、日米豪印連携の枠組み策定等)
(5)政府開発援助や青年海外協力隊等のODAパワー
(6)対外情報発信力等のコミュニケーションパワー
(7)官民の国際人的ネットワークパワー(国際会議における人的ネットワーク、シニア海外ボランティアの人的ネットワークなど)

外交の基本方針は、上記パワーを一つ一つ上げて行くことに他ならない。パワーが上がれば、発言力が上がる。パワーが下がると発言力が下がり、存在感 が低下し、主張が無視され、最後は他国の意思決定に服従させられる結果となる。そうなると国益は、守れない。「外交は、パワーの蓄積である」と言う視点が 必要となろう。

2.外交インフラの構築を!

(1)国家安全保障会議の設置を!
政府の外交機能強化のために、国家安全保障会議(日本版NSC:National Security Council)を設置して、戦略策定機能と外交政策の執行・調整機能を整備することが不可欠である。全ての情報を一元化し、重要な意思決定をスムーズに行う必要がある。

(2)インテリジェンス機能の強化を
また、戦略策定と政策執行を支える政府のインテリジェンス機能の強化のためには、日本版CIA(Central Intelligence Agency)の設置が求められる。今後は、サイバースペース上でのセキュリティや情報収集力も必要となろう。

(3)政治家の外交パワーのアップを!
毎年の世界経済フォーラム(ダボス会議)、シャングリラ・ダイアローグなどの外交・防衛の重要な国際会議には、主要閣僚が必ず出席し、アピール力のある対外情報発信を行わなければならない。

日本の政府首脳・閣僚の多くが国会対応に縛られて、外交に十分な時間が割けていない悪弊を改善する必要がある。予算委員会等での全閣僚出席の慣例を 改め、首相・外務大臣・関係閣僚が機動的な外交を可能とする環境を整備する必要がある。首相・外相・関係閣僚には、対外発信の専門チーム(スピーチライ ティング、寄稿)を設置し、国内・国外に向けたアピール力を強化する事が肝要だ。

(4)外交組織や大使館の改革
新興国(BRICsやN-11諸国)の台頭に伴い、外務省の地域局の改編や新興国部門を強化し、新興国に精通した人材育成を進める必要があろう。パワーを増大する方向に、資源を投下していく必要がある。

(5)民間の知恵や人材の活用を!
外交・経済外交・安全保障政策に精通した専門家が、政策立案・調整を担うポリティカル・アポインティー制度を拡充するべきである。

優れた外交戦略の立案と遂行のためには、外務省以外にも、政策アイデアを立案出来る、政策研究機関(大学を含む)と政策人材(研究者と実務者)の育成が求められる。

政策研究機関や大学から様々な政策の代替案が供給されることにより、常に政策アイデアが切磋琢磨される環境が生まれ、結果的に日本全体の外交政策の レベルアップや、国際人的ネットワークの強化、政策論議の喚起などに繋がることが期待される。また、政策研究機関や大学が、政・官・民・学を結ぶ「回転ド ア(revolving door)」、政治任用のための政策人材のプール、セカンド・トラックの「場」になることが期待出来る。

在日米国大使を務めるジョン・ルース氏や、豪州でお会いした在豪米国大使のジェフ・ブライチ氏は、ともにオバマ大統領の友人だ。彼らは、大使として 就任するまで3カ月に及ぶトレーニングを受けたと言う。彼らの民間的な発想が、友好国の大使に適切であることは、東日本大震災後のトモダチ・プロジェクト でも証明された。

日本の外交を高い次元にするためにも、日本の国力・パワーを増強し、外交インフラを構築し、民間を含めた総合力で、積極的に関与していく必要がある。次の「行動」から、一つ一つのパワーに関して論じ、外交インフラや地域課題に関しても言及していくこととしたい。

謝辞)この「行動」の執筆には、慶應大学の神保謙准教授と東京財団の渡部恒雄ディレクター(政策研究)/上席研究員にアドバイスを頂きました。神保謙さんと渡部恒雄さんには、引き続き、外交分野の執筆へのアドバイスの御協力をお願いする予定です。

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