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恋せよオヤジ?BEAMSポスターのナゾ

投稿日:2011/09/09更新日:2019/04/09

オヤジの聖地で「恋をしましょう」

「恋をしましょう」は、BEAMSが全ブランドを横断して展開する創業35周年キャンペーンである。「KOIWEB」という専用サイトを作って、女優・蒼井優が歌って踊る「恋をしましょう体操」の動画を公開しているほか、素朴な少女の姿を描いた写真集『未来ちゃん』で人々の心をとらえた写真家・川島小鳥が8組のカップルの姿を写し撮ったアルバムも掲載。また、FacebookとTwitterに連動したアプリ、「koisensor」では、周りの人との“恋の可能性”を分析できる。盛りだくさんで贅沢なサイトだ。

そのキャンペーンメッセージとWEBサイトを告知するポスターが各駅に掲出されている。その1つが、新橋駅の烏森口改札を出て右側の壁面に登場した。

ローカルな話題なので少々説明をしよう。鳥森口は、ほろ酔いのお父さんたちがテレビのインタビューを受けることで有名な「SL広場」から、山手線・京浜東北線ホームの前後反対側に位置する。改札を出て左に進めば日テレなどもある汐留・シオサイトに行き着くが、右に出れば、細々とした飲み屋がひしめくディープなゾーンへと続く。オシャレなポスターは、シオサイトに向かう人の注目を集めようとしているのかといえば、そうではない気がする。確かに改札で待ち合わせをしている人の目には多少入るが、メインの導線上ではない。そんな場所にBEAMSのポスターが掲出されたのだ。しかも「恋をしましょう」である。

BEAMSは1976年、東京・原宿に創業。欧米に出かけては、自らの目利きで選んできた服を店に並べ、流行やライフスタイルを発信する。いわゆるセレクトショップの草分け的存在だ。半年後にはカリフォルニアの若者のライフスタイルを特集した男性誌「ポパイ」が誕生するなど、時代の後押しもあって、いまや売上高約500億円の企業にまで成長した。

BEAMSが稀有な存在として語られるのは、そのたたずまいにある。時代の最先端を提示しては次々とつぶれていくアパレル業界を片目に、常に時代の「半歩先」をリードする絶妙な距離感を保ちながら、徐々に業態を拡大してきた。当時からのファンを顧客として囲い込みながら、新たな若い顧客を取り込んでいる。親子2世代のファンも多いという。

それが、いま、なぜオヤジの聖地「新橋」で、「恋」なのか。

BEAMSの想い

まず「恋」というコンセプト。すべての人に「しあわせ」のイメージを想起させる。「マスに向けて打つ広告など意味がない」といわれるいま、あえてすべてのクラスターを串刺しにするメッセージを用いた大胆さが素晴らしい。震災を含め、元気をなくしている日本人に対する、BEAMSからの温かいエールのような気もする。

「良質な日常生活を謳歌したいと思っている人達に向けて、伝説でもプレステージでもない新しい世代のルール(生き方)をつくること」。企業理念の一つとして“LIFESTYLECREATOR”を掲げるBEAMSの伝統。ユニクロやH&Mなどファッションさえ「ファスト化」する風潮への対抗軸となり続け、「それで本当に心が豊かですか」と問い続ける気概、その交差するところに、「恋」というコンセプトがぴったりはまっている。

では、なぜ新橋なのか。

BEAMSのサイトには3篇の「恋をしましょう体操」がアップされている。

娘である蒼井優が言葉の通じないインド人の彼氏を親に紹介する「異国の彼篇」で、母親が彼氏を気に入り「イメージは大切よ!」と父親に力説する。

友達の彼を好きになってしまう「人の彼篇」。付き合いが長いという友達と彼氏。彼はデートの際に鼻毛が飛び出している。惰性の生活はダメというメッセージだ。そんな彼のどこに惹かれたのかはナゾであるが、ともかく蒼井優は「磨くわワタシあそこもここもピカピカに」と歌う。

「恋人だらけのカフェ篇」では、「なんにもないとかそんな日は、恋とか落ちたらいいかもね」「怯えていたらなんにもないのわかってる」とさらに背中を推す。

3つの動画では、「まずは自らのイメージを良くせよ」「自分を磨け」「惰性の日常と決別せよ」とメッセージを伝えているのだ。

新橋烏森口を通行するオヤジたちは、実は最もキャンペーンの対象になるのではないか。

かつてはポパイを買い、恋にトキメキ、BEAMSの服を買って自分を磨いていた青年も家庭を持ち仕事と生活に追われるようになった。だが、ある程度地位と収入も上がり、子どもも自立していった。そんな時にぽっかりと空いた胸の穴ボコと腹回りの贅肉に気付く。それを見ないようにして日常に埋没していく日々。そんなオヤジにBEAMSは「戻っておいで」というメッセージを込めてポスターを貼ったのではないだろうか。

かつてBEAMSにお世話になったのは世間でいわゆる“新人類(いろいろ定義はあるが、おおよそ1960年代生まれの人々)”と呼ばれた世代。今は40代から50代に差し掛かったぐらいのオヤジたちだ。

BEAMSは2002年、丸ビルに20代後半から中高年層をターゲットとする店「ビームスハウス」を初めてオープン、その後、六本木のミッドタウン、神戸にも展開している。また原宿のビームスFも年齢層が高いといい、中高年シフトは既にしっかり敷いているようだ。

「恋に必要なのは、感受性だけです」。90年代を席巻した恋愛至上主義の教祖、柴門ふみの『恋愛論』の一節だ。地位も肩書も、知性も年齢も関係ない。当時はうざかった言葉も、社会経験を積み、歳を重ねると、また違った味わいを感じる。

最後に、「恋をしましょう」のポスターとWEBサイトにあるコンセプト全文を引用したい。

みなさん恋をしましょう。誰かを好きになりましょう。そして自分を好きになりましょう。みなさん恋をしましょう。それは世界を新しくしますから。知らなかった歌を好きになりますから。ゴハンが美味しくなったりしますから。深呼吸の意味を変えたりしますから。それは嘘の悲しさを教えてくれたりしますから。たとえそれが終わっても、きっと何かを残してくれたりしますから。さあ、年齢を超えましょう。性別を超えましょう。経験を超えましょう。地球は愛が救ってくれますから。

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