議論をさばく(1)「さばき」の基本動作 

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これまで長らく「仕込み」について考えてきました。合意形成のステップを意識し、議論の出発点と到達点を押さえ、論点を広く、深く考えてあれば、ファシリテーターの頭の中には、「あるべき議論の姿」が具体的にイメージできているはずです。しかしそれだけでは実際の議論を適切にリードすることはできません。議論の現場で参加者から意見を引き出し、適切に導く技術、「さばき」の力が必要です。ここからは「さばき」の基本動作、そして具体的な手法、そしてファシリテーターが持つべき姿勢や心構えについて考えていきましょう。

議論の「さばき」とは?

「さばく(裁く・捌く)」とは、「物事を要領よく処置する」という意味です。「議論をさばく」と言うと、「ファシリテーターが中心になって、出てくる意見をばっさばっさと整理し、自身の考える方向に持っていく」といったイメージを持たれる方も多いでしょう。しかし、これから考えていく議論の現場におけるファシリテーターの役割は、それとは異なったものです。

無論、到達点に至るため議論をコントロールするのですが、ファシリテーターが実際にする言動は、ずっと「控え目」にすべきです。議論の主役はあくまで参加者であり、参加者が十分に発言し、自分達の力で自然に議論を適切な方向に進めていくことが理想です。つまり、ファシリテーターの介入は少なければ少ないほどよいとも言えます(本当は「さばき」以外の言葉を使いたいのですが、適当な言葉が見つからないため、「さばき」という言葉を便宜的に使っています)。

では、ファシリテーターは何もしないのか?というとそうではありません。議論が活性化し、必要な論点に議論がフォーカスされ、適切に合意形成のステップが進むように、一歩引いた状態から議論全体の状況を俯瞰し、見守ること。そして必要なときには、適切なタイミングで、適切なやり方で議論に介入し、議論の状態を適切に保つ役割を果たします。演劇にたとえると、「主役」ではなく、「演出家・ディレクター」といった役回りです。こう考えるとイメージが湧きやすいかと思います。

「さばき」の基本動作

では、ファシリテーターが果たすべき、「さばき」を具体的に見ていきましょう。まず大事なのは、「基本動作」を理解することです。基本動作を理解し、そのプロセスをしっかり繰り返していくことで、議論の場面、場面で自身が何をすべきか?を掴みやすくなります。

(1)発言を引き出す
(2)発言を理解し、共有する
(3)議論を方向づける
(4)結論づける

まずやるべきことは、参加者の発言を引き出すことです。参加者の「発言しよう」という意欲を高め、何について発言すればよいのか参加者が迷わないように手助けします。発言が出たら、発言を受け止め、理解し、そして必要に応じ、他の参加者が発言を正しく理解できるように共有します。議論が始まり、様々な意見が出てくるようになったら、どの方向に議論を進めるべきか判断し、方向づけを行います。そして最後に、そこでの議論の結論を明確にし、議論をまとめます。

一見当たり前のように見えるプロセスですが、実は強く意識し習慣づけていないと、プロセスを外してしまいがちなのです。たとえば「発言を引き出す」を疎かにし、いつのまにかファシリテーターが話し続けてしまっている。「発言を理解する」をしっかり行わないまま議論を進めようとして、頓珍漢な対応をしてしまい混乱を生んだり、参加者の不信を招いてしまう(実はこのとき、ファシリテーター以外の人はそのことに気付いていることが多い)。ファシリテーターが適切な「方向づけ」を行わないために、議論が同じところでぐるぐる廻っていたり、論点が錯綜・混乱し今何を議論しているのかわからなくなってしまう。「結論」が出ない議論を延々と続けてしまい参加者が強いストレスを感じたり、時間を無駄にしてしまう、といったことが起きてしまうのです。

こうした状態を避けるためには、ファシリテーター自身がこのプロセスを強く意識し、今自分は何をすべきか?を常に考え、適切なタイミングでその役割を果たすことが必要です。では次回以降、それぞれのプロセスをもう少し詳しく見ていくこととしましょう。

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