論点を把握する(16)〜深める〜 

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前回は、論点の「絞り込み」について考えました。またそこでは、「議論すべき論点」「議論すべきでない論点」以外に、「確認すべき論点」についても意識すべきという考え方をご紹介しました。これに続き今回は、「論点の把握」の最後のパートとして、「議論すべき論点を更に深める」必要性と留意点について考えていきましょう。

議論の土俵となる切り口(フレームワーク)を用意する

議論の「仕込み」において丁寧に論点を洗い出し、それら論点を参加者の認識や態度を勘案しながら絞り込んでいくと、議論の結論を大きく左右する「キーとなる論点」が見えてきます。こうしたキーとなる論点に関しては、他の論点以上に具体的に深堀りをしておく必要があります。仕込みの最終的なゴールはこうした論点を発見し、その論点について参加者が十分な議論が出来る準備をすることと言っても過言ではありません。

ここで留意したいのが、ファシリテーターが行うべきことは、「キーとなる論点」について結論を出すことではない、という点です。大事なのは結論ではなく、正しい結論へと導くために考え、議論すべき点は何か?をしっかり洗い出しておくことです。そのためには、様々な意見を位置づけ、共有しながら思考を深めるための土俵、すなわち議論の切り口(フレームワーク)をしっかりつくることが肝要となります。

たとえば、業務の改善について議論するのであれば、業務をプロセスに分けて考えることは有効な切り口の一つですし、ある製品の購入可否であれば、購入するにあたって考慮すべきポイント、たとえば「品質・価格・納期」といった判断軸は外せない切り口でしょう。もしくは、「重要性・緊急性」「メリット・デメリット」「現在はどうか?将来はどうか?」「新たに始めるべきこと・続けるべきこと・やめるべきこと」などの切り口も幅広く活用できるものです。

ここはできるだけ具体的に、たとえば「品質の高さという点だけでなく、コストパフォーマンスの面ではどうでしょうか?」などというように具体的な論点の投げ込みが出来るように準備することを目指しましょう。

Output・Inputを意識して、隠れた論点を洗い出す

議論の事前に論点を深めるうえで、もう一つ、頭に止めたいのが「Output・Input」の視点です。

特にビジネスにおける議論では、ある意見の背後に、それとはレベル感の異なる論点についての判断が絡み合って最終的な結論をサポートしていることが多いものです。これを掴みだすのは容易ではありませんが、「今議論している論点に対して、OutputもしくはInputにあたる論点を考える」ことが突破口になることが多いものです。

Output・Inputとは馴染みの薄い言葉かと思いますが、ここでは「Output=結果としての状態」「Input=そのOutputに影響を与える要因・投入要素」という意味で用いています。OutputとInputは相対的な関係で、ある事象が必ず「Outputになる」「Inputになる」わけではなく、ほぼ全ての事象を「Output・Input」の両面から捉えることができます。

たとえば、店舗において、「売上」をOutputとして考えると、
・Output:売上=単価×数量=10代の売上+20代の売上+・・など
・それに対するInput:商品・店員・価格・・・など
と考えられます。そこで今度は、「店員」に着目し、「店員の接客能力を上げたい」と考えると、たとえば、
・Output:店員の接客能力の要素=十分な商品知識・接客の知識・マナーなど
・それに対するInput:採用・教育・マニュアル・給与・・など
と分解することができます。

このように、ビジネスにおける様々な事象はこのように相互に「Output・Input」の関係で結びついており、あるレベルの事象における判断は、そのOutput、もしくはInputに対する認識から影響を受けていることが多いのです。

たとえば、「新製品をどのようなスペックにすべきか?」を議論する場合、具体的には製品の持つ機能特性(たとえば携帯音楽プレーヤーであれば、音質・容量・重量・付加機能・堅牢性・ネットワークとの接続性・・・)を洗い出し、それぞれどうしていくか?が直接の論点になります。

そこでそれぞれをどう判断すべきか?となると、このレベルの論点だけからは決まりません。Output側からは、「どのような顧客の、どのようなニーズに応えることが必要か?」という論点によって「何を実現すべきか?」の軸が決まってきます。一方、Input側で言えば、「自社の持つ技術・製造コスト・・」といった要素によって「何が実現可能か?」という制約条件や取り得るオプションが規定されます。このように、直接議論している論点に対し、そのOutput・Inputあたる論点が強く影響を与えています。

しかし多くの場合、人は自身の判断の前提となっているOutput・Input側の論点にあまり気づいていなかったり、そこは他の人も自分と同じ意見だと思っていることが多いのです。このため、実は狙っているターゲット顧客が異なっているのに、その違いを認識しないまま製品特性の議論を続けてしまう、もしくは「(技術的に無理だから)○○機能の強化は反対」「(技術的に可能だから)○○機能を強化すべき」という議論を、( )の部分である自社の保有技術に対する認識の違いを明確にしないまま議論を続けてしまうといったことになりがちなのです。ここでもしファシリテーターが、双方の隠れた前提であるOutput・Inputレベルの違いに気づけば、まずはそこに議論を移し、結論を導くことで誤解や対立を解消することができるでしょう。

Output・Inputの捉え方は最初は難しく、使いこなすにはかなりの訓練が必要ですが、ファシリテーターが様々な論点を縦横無尽に扱うために極めて有効な考え方です。ぜひこうした論点の掘り下げにチャレンジしてみてください。

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