論点を把握する(12)〜広げる(9):合意形成のステップを細分化する(7)〜 

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難易度の高い「因果関係の特定」

前回は、「問題解決のステップ」のWhy(真因の追求)での、「考え得る原因を洗い出し、広げる」ための頭の使い方について見てきました。今回は、その次段階となる「絞り込む」をどう考えたらよいのか?について検討します。

因果関係の把握において難しいのは、「様々に考えられる原因の中で、どれが主たる原因なのか?」を絞り込むことです。たとえば「人がやめる」原因を考えても、本人に起因する原因もあれば、上司や職場の人間関係、もしくは仕事と本人の関係など、どれもある程度は「やめる」という結果に影響を与えているでしょう。

「因果関係の特定」には、定量的、定性的な様々な手法があります(このあたりに興味がある方は、分かりやすい説明としては、田村正紀著『リサーチデザイン』などを参照してください)が、ビジネスの現場において活用するのは時間的に難しいことが多いものです。
ここでは、正確さよりもスピードに重点を置き、実務において最低限意識すべき考え方に絞って説明します。

【影響が大きなもの】に絞り込む

上述のように、様々な原因が多少なりとも結果に影響を与えていることが多いのですが、そのまま進めていくと考えなければならない原因が多くなりすぎ、判断・対応が難しくなってしまいます。このため、洗い出した考え得る原因について、(1)そもそも因果関係があると判断できる条件のいくつかを最低限満たしているのか?(2)条件を満たしているとすれば、どれが最も強く影響を与えているのか?の2点に絞ってチェックし、大胆に一つか二つの「主要な原因」に絞り込むことが重要です。むろんこれだけでは不正確な推定になることもありますが、常に変化し続けるビジネスの環境下では、大胆に仮説を立て、そこを丁寧に調べてみる。調べて仮説が違うようであれば別の仮説を立てる。ある程度確信が持てたらまずはそこに対策を打ってみて結果を見る。結果が思わしくなければ素早く修正する、といったサイクルを早く廻していく方が現実的です。

一般に、因果関係の存在には、(a)相関関係の存在、(b)時間的前後関係、(c)第三因子の不存在の3つの条件が成立していることが必要と言われています。これらを全て証明することはとても難しく、時間がかかることですが、少なくとも「本当に因果関係があるかはわからないが、少なくとも思い違いではなさそうだ」というレベルまではチェックしたいものです。そのために、因果関係が存在する条件の最初の2つだけに絞って考えてみるとよいでしょう。

(a)相関関係の存在—事象間の相関(共変関係)をチェックする
因果関係が成立する一つ目の条件が「相関(共変関係)」です。「相関がある」とは、ある事象の変化に対して、もうひとつの事象が同じように変化することをいいます(一方が増えれば他方も増える関係が「正の相関」、一方が増えると他方が減る関係が「負の相関」です)。まずは結果となる事象の変化やばらつきを調べ、それと原因と考えられる事象の関係の相関をチェックします。サンプル数が少ない場合などは、
・異なる結果(「人がやめる/やめない」など)に対して、影響を与える可能性のある条件をいくつか洗い出して並べ、共通する点と相違する点を比較し、結果と同じように変化する条件を原因と推定する
・同じ結果に対して、影響を与える可能性のある条件をいくつか洗い出して並べ、共通する点と相違する点を比較し、共通する条件を原因と推定する
などの方法で判断するとよいでしょう。
なお、データを用いて比較できればよいのですが、実務的にはすべての条件に関するデータが入手できない場合が多いため、可能性を考えたうえで、現場の観察や関係者へのヒアリングなどに基づき、上記の関係があるかを推定していきます。

(b)時間的前後関係−事象間の時間的変化を見る
「相関関係」があるだけでは、因果関係があるとは言えません。結果となる事象の前に原因となる事象が発生していること、つまり時間的な前後関係があることが必要です。それをチェックするために、原因となる事象の時間的な変化と、原因と考えられる事象の時間的変化を比べてみます。単純には、結果の時系列の変化をグラフ化したうえで、そこに原因と推定される事象の変化を重ねてみます。そうすると、結果と原因の時間的前後関係(結果の変化に対して、原因と思われる事象の変化が前にあるか?)や近接関係(原因と思われる事象の変化に対して、結果がどのくらいの近さで変化したか?)をチェックすることができます。こちらも、正確なデータがなくとも、まずは一旦考えて書きだして見るだけでも「大きな思い違いをなくす」「直接的に関係が深そうな原因を推定する」には効果があるはずです。
なお、因果関係があると言えるためには、相関、時間的前後関係以外にも、原因と結果双方に直接影響を与える別の事象(第三因子)がない、という条件がありますが、この「第三因子の不存在」を厳密にチェックすることは難しいため、まずは上記の2つのチェックを行ったうえで、現場の観察、ヒアリング、専門家に話を聴くなどの方法で推定すればよいでしょう。

人の能力や意識で「なぜ」を止めない

ビジネスにおいて「原因」の議論をしていると、「○○部に問題意識がない」「△△さんのやる気がない」「□□のメンバーの能力が低い」など「人」の能力や意識が「原因」として出てくるものです。実際にもそうした能力や意識が大きな原因になっていることも多いのですが、こうした議論をする際に注意すべき点があります。それは、「人の能力や意識で原因追求をやめない」ということです。なぜなら、これらを根本原因としても直接に手を打てるわけではなく、また再発防止に繋がらないからです。

こうした原因に対して、「なぜ問題意識が持てないのか?」「なぜやる気を喚起できないのか?」「なぜ能力が低い状態が続いているのか?」「なぜ高い能力がなければできないようになってしまっているのか?」といった問いを立て、背後にある原因を更に探っていくようにします。そうしないと、原因に対する様々な議論や調査が、結局は「犯人探し」になってしまい、そう思うと誰も問題や問題の原因を考える営みに積極的に関与しなくなります。このため、「人の意識や能力を原因としない」姿勢は、組織のメンバーが積極的に問題の解決に取り組むような文化を創るうえでも重要な基本姿勢です。同時に、議論の場において、こうした姿勢をしっかり示したうえで話をするようにするとよいでしょう。

さて、ここまで、「合意形成のステップ」の<アクションの理由の共有・合意>における論点の洗い出しの中で、「何が問題なのか?(問題の明確化・What)」「どこが問題なのか?(問題箇所の特定・Where)」「なぜそうなっているのか?(真因の追求・Why)」までを見てきました。だいぶ長い道のりでしたが、これでやっと<アクションの理由の共有・合意>の部分が終了です。次回はいよいよ「合意形成のステップ」の3番目、<アクションの選択と合意>に進みたいと思います。

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