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論点を把握する(9)〜広げる(6):合意形成のステップを細分化する(4)〜

投稿日:2011/01/27更新日:2019/08/15

前回は「合意形成のステップ」の2番目<アクションの理由の共有・合意>における論点の洗い出しの中で、「問題解決のステップ」の最初となるWhat(問題意識の明確化)について見てきました。今回はその次に来るWhere(問題箇所の特定)、Why(真因の追求)のステップについて詳しく見ていきましょう。

Where・Whyで視点を「広げて→絞り」真因を掴む

Where(問題箇所の特定)、Why(真因の追求)は、問題解決における肝の部分です。Whereでは「結果」を見て、現状のどこに問題があり、どこに問題が無いのか? もしくはどこにどのような種類の問題があるのか?を特定します。そしてWhyで、Whereで絞り込まれた問題箇所について、なぜそうなっているのか?という原因を洗い出し、特に影響が大きな原因に絞り込んだうえで、さらに深い本質的な原因を追求していきます。どちらも視点を「広げる」ことによって、見落とし・決め打ちを排除するとともに、「絞る」ことによって考える範囲を狭め、拡散しないようにしながら、議論を深めていくことを目指します。

しかし多くの場合、人はなかなかこの「広げて→絞る」という思考ができません。特に苦手なのは、「広げる」ことです。議論に参加するメンバーは、そこで議論される「問題」について何らかの仮説や意見を持っていますが、その多くは自分がたまたま見聞きしたある事象の影響を強く受けていたり、自分がよく使っている特定の視点・切り口で現状を分析した結果に基づいています。もしくは、現状がどうなっているのか、原因は何か等を丁寧に見て結論を出しているのではなく、特に根拠なく「こうだろう」「こうしたい」といった想い・考えを先に持ち、そのフィルターで現状を見ていることも多いものです。そうすると、自分が最初に持った考えに合致する事象しか見なくなってしまいがちです。こうして冷静に全体像を捉え、自身の仮説を冷静に検証する、あえて異なる視点から物事を考えてみるといった思考・行動がなかなか取られなくなってしまいます。

このままの状態で議論をすると、一部の特定の人の偏った認識から、偏った結論を出してしまう、もしくはそれぞれが異なる認識に基づいて意見を言うばかりで、議論が平行線のままに結論が出ない、といったことが起こります。こうした状況こそ、ファシリテーターの出番です。参加者に、より多面的な視点から物事を見るように促す、また自身の意見の陰に隠れている別の可能性に気付けるよう、適切な刺激を与えることが求められます。

これを即興で行うのは、相当に難易度が高いことです。このため、そこで議論されるテーマについて、ファシリテーター自身が事前に「問題解決のステップ」によって十分に考え、問題箇所を見つけるための多様な切り口、考え得る原因の可能性を、仮説として広く洗い出しておくことが必要なのです。

Whyに飛ばず、Whereに留まることが問題解決の肝

Whereでは、Whatで明確にした「あるべき姿と現状のギャップ」が、どこにどのように存在しているのか?を明らかにします。このステップをしっかりと踏むことで、重点的に取り組むべき問題箇所が明確になり、また絞り込んだ問題箇所についてのみ原因を考えればよくなるので、原因の洗い出し、特定がやりやすくなります。このように、いかにWhereに留まり、問題箇所を徹底的に絞り込むか?が問題解決を成功に導く肝なのです。

しかし実際に行われている議論を見てみるとよくわかりますが、人は多くの場合Whereを飛ばしてWhyから考えがちであり、議論の大半の時間がWhyに関するものに費やされています。多くの人は「問題解決のステップ」を知らないですし、知っていたとしても、ちょっと油断するとすぐにWhy?に思考が飛んでしまうのです。更に言えば、多くの人はそもそもWhereとWhyを分けて考えていないため、「自分がWhereを飛ばしてWhyを考えている」という自覚すら無い場合が多いのです。

このため、ファシリテーターがやるべきことは、まず参加者の発言・そこでなされている議論がWhereなのか?Whyなのか?を把握することです。参加者の発言が、「○○の比率が多い」「△△が拡大している」「○○の場合に△△になることが多い」といった「結果・状態を描写している場合はWhereに留まって思考し、議論をしていると見てよいでしょう。逆に「○○だから、△△だ」(広告が少ないから、集客が減った)といった言い方をしている場合は、Whyに飛んでいるケースが多いので要注意です。

そしてWhereを飛ばしてWhyに議論が飛んでいる場合は、参加者の思考をWhereに誘導し、先に問題箇所を特定するように促していきます。たとえば、「売上が低下しているのは、【どの】顧客の売上が減っているのでしょうか?」「製品【別の】売上では特徴的な傾向がありますか?」「特に活動量が落ちている支店は【どこ】ですか?」など、結果・傾向を確認する質問をするとよいでしょう。

次に、「問題が起きているところと起きていないところ」「問題が集中して発生している部分」「タイプの異なる問題の塊があるところ」を特定し、絞り込むように促していきます。たとえば、「モチベーションの低下は主に技術系の若手社員で起きているようですね。他にはこうした問題は生じていないという理解でよいでしょうか?」「売上低下はA製品の国内向けの落ち込みがかなりの比重を占めているということですね」「売上低下といっても、A製品は販売数量が低下している、B製品は価格が低下しているという種類に分かれるようす」といった確認・質問をしていくとよいでしょう。

共通点・相違点に着目して問題の構造をあぶりだす

可能であれば、表面的な問題の裏に隠れた、問題箇所を一網打尽にする層別の切り口を探るサポートをしていくとよいでしょう。ここでは「問題がある状況に共通してあり、問題が無い状況に共通して無い属性や環境条件は何か?」を問いかけていきます。

少しイメージがわきにくいかと思うので、具体例で説明します。たとえば、ある部署の営業パーソンの営業成績の改善について議論しているとしましょう。この部署の5人の営業パーソンのうち、AさんとCさんは成績不振、B・D・Eさんは好調だとします。ここでよくやりがちなのは、Aさん・Cさんはなぜ成績が悪いのか?対応をどうするか?を議論してしまうことです。

しかしそこに行く前に一歩立ち止まり、「A・CさんとB・D・Eさんは何が違うのか?」「どういった条件が重なると問題が生じるのか?」を考えるよう問いかけをしていきます。たとえば年齢や性別、経験年数など個人の属性の違い、もしくは取り扱い製品や担当顧客の違いなど、様々な観点で比較するよう働きかけます。その結果たとえば「A・B・Cさんは営業経験が少なく、D・Eさんは営業経験が長い」「A・C・Dさんは、最近技術的な変化が激しい顧客を担当している」といったことがわかったとします。この2つの切り口を組み合わせると、「営業経験が少ない担当が、技術的変化が激しい顧客を担当している場合に成績が悪くなっている」という仮説が立てられます。

Aさん、Cさんに個別に原因を考え対応しても、その時点では改善が見込めるかもしれません。しかしそれでは再現性のある解決策とは言えません。もしかすると(営業経験が少ない)Bさんが技術的な変化が激しい顧客の担当に変わったり、以後も異動のたびに同様の問題が生じるかもしれません。こうしたことを防ぐためには、「営業経験が少ない担当が、技術的変化が激しい顧客を担当している場合に成績が悪くなる」といった構造を発見し、その原因を追求し、再発が防止できる対策を打つよう(たとえば経験の少ない人の業界の担当の仕方を変える・経験が少ない人でも技術的変化に対応できる営業方法を開発するなど)考えるべきです。

このように、「問題が生じる場合とそうでない場合はどういった違いがあるのか?」を問いかけたり、データ等から帰納的に共通点の仮説を立て、「経験の長い/短いによって違いがあるのか?」など、切り口を仮説として示して問いかけるとよいでしょう。ファシリテーターの方が問題の当事者よりも状況を冷静に見られることも多いので、ぜひチャレンジしていただきたいと思います。

こうした質問や思考誘導を行うためには、ファシリテーター自身が議論される問題について当事者として考え、具体的な論点や切り口の仮説を用意しておくことが不可欠です。と言っても、答えを全て用意する必要は全くありません。答えは議論の中でメンバーに出してもらえばよいのです。ファシリテーターが押さえるべきなのは、「あるべき問題解決の思考のプロセス」のイメージです。そして、仮説的に「この問題であれば、たとえばどういった流れで、何を考え、どのように問題を広げて→絞っていくべきなのか?」を考えておきます。問題解決の思考プロセスに習熟すれば、その場でもある程度対応できますが、最初は事前にその問題についてよく考え、切り口や仮説を準備するようにするとよいでしょう。

Whereの話がだいぶ長くなりました。Whyについては次回に譲ることとします。

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