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回転ずし戦争:スシロー、かっぱ寿司の天下は続くのか?

投稿日:2011/01/21更新日:2019/04/09

牛丼戦争に似た回転ずし戦争

まずは回転ずし業界の現状をざっと概観しておきたい。

外食産業総合調査研究センターの資料によると、2009年の外食産業全体の市場規模は約24兆円、「食堂・レストラン」の約8兆8千億円がダントツでトップ。その他は、「そば・うどん店」、「喫茶店」、「居酒屋」が約1兆円で横並び。「すし店」は、約1兆3千億円という規模だ。2010年8月20日付の日経MJによると、回転ずしの09年度の市場規模は約4698億円(いちよし経済研究所調べ)。04年度比約1.5倍というから、飽和状態の外食産業にあって、まだまだ伸びしろの大きい市場といえるだろう。

その中で激しく覇権争いをしているのが、「すし御三家」だ。「かっぱ寿司」のカッパ・クリエイト、「スシロー」のあきんどスシロー、「無添くら寿司」のくらコーポレーション。3社は1皿100円を切る価格戦略をいち早く導入し、規模を活かしつつ、あらゆる手段で経営効率を高めてきた。3社の市場シェアは5割近い。

また、御三家以外の追い上げも激しい。特に近頃台風の目として注目を集めているのは、すき家のゼンショーが展開する「はま寿司」。ゼンショーが持つ圧倒的な購買力を活かせれば、御三家に食い込んでくる可能性は高いと言われている。

2011年1月14日。その血みどろの争いを象徴するようなニュースが報道された。産経zakzakの記事『回転寿司で下克上!スシローかっぱ抜く「安さ」より「素材」』を見てみよう。

首位陥落である。「かっぱ寿司」はトップ死守を賭け、平日1皿90円のキャンペーンを展開。CMでは宇宙人まで食べに来たものの、2010年下半期(7〜12月)の売上高は後発の「スシロー」が前年同期比20%増の462億円と、かっぱ寿司の同9%増455億円に対しついに僅差で追い越した。

さらに、『業界内の競争は激化しており、3位の「くら寿司」を展開するくらコーポレーション(大阪)は10年10月期決算で最高益を記録。「銚子丸」なども業績が好調だ』と業界内の順位は今後もめまぐるしく変わる可能性が指摘されている。

zakzakの記事はこう締めくくられている。『下克上といえば、人気アイドルグループ「AKB48」が有名。メンバー同士が激しく競い合い、昨年実施された人気投票で、大島優子(22)がそれまでトップだった前田敦子(19)を破り、話題になった。回転ずし業界もまさにAKB状態で、同業者同士が日々激しくしのぎを削っている』。

デジャブ感。そう。昨年からずっと話題になっていた牛丼戦争のようではないか。この先牛丼業界のように優勝劣敗が進んでいくとすれば、それでは、回転ずし業界で、どの企業が勝ち残っていくのか。何がカギをにぎるのだろうか。

回転ずし業界のKSFとは

スシローがカッパ寿司を抜いた要因を、zakzakの記事は、『勝因は「素材の良さ」というから、回転ずしでは安さよりもネタのほうが重視されるようだ』と分析している。

確かにネット上ではスシローのネタのよさに対する賞賛が散見される。昨年中ごろから、回転すし業界に限らず、外食産業全般で、「価格競争は行きつくところまで行った。後は質をどう高めていけるかの勝負になる」という論調が目立つ。一方で、「すき家」が「吉野家」を圧倒したことも記憶に新しい。もはや、価格は安いまま、顧客の期待値を遥かに超える質の高いものを提供する、「スーパーバリュー」競争の時代に入ったのだろう。となると、絶対的で継続的なKSF(KeySuccessFactor:成功のカギ)とは何か。

独立起業するとすれば、最も参入障壁が低い業界の1つが飲食業だ。材料を仕入れ、調理し、客に提供するというバリューチェーンのシンプルさがその理由である。バリューチェーンは日本語に訳せば「価値連鎖」。ビジネスのしくみのどこでどれだけコストをかけ、付加価値を創出するかということを表している。

「安さ」より「素材」とはいえ、回転ずしの価格帯で寿司を提供しようとするなら、ある程度の安さは必須要素だ。そこでモノをいうのは「規模」である。原価に占める固定費率は販売数量が多くなればなるほど低減できる。「規模の経済」という。固定費とは、研究開発費・設備費・広告宣伝費。人件費や原材料費などの変動費に関しては、規模が大きくなれば、単位時間あたりの生産性を向上させることで人件費率は低減できる。原材料費は大量購買による価格交渉力の向上で低減を図ることになる。

回転ずし業界はなぜ、下克上が起こりやすいのか。それは、「仕入れ」→「調理」→「接客」という飲食業のバリューチェーン上で、差別化要素が少ないからだ。「接客」という俗人要素を極限まで削減したサービス。調理は「にぎり」といっても、シャリは「寿司ロボット」が握る場合が多い。調理という製品の加工度を高めるプロセスや、接客というサービスで付加価値を付けるプロセスが削減されているから、どうしても「仕入れ」の段階に依存する比率が高くなるのである。

競争戦略は、大きく分けて3つある。1つはコストを武器に戦うこと。「コストリーダーシップ戦略」という。もう1つが差別化要素で戦うこと。「差別化戦略」という。もしくは、特定市場に集中して戦うこと。「集中戦略」という。

この戦いは、「回転寿司」という特定市場の中での戦いだ。そして、そこは差別化困難な市場だ。コストリーダーをめぐる戦いは「水の中で息を止め合う勝負」のようなものだ。勝負のポイントは、原価率を抑えること。そのためには前述の通り、「規模」がモノをいう。どこも規模化してトップを取り、価格交渉力を握ることを狙う。その一方で、利益率を抑えて原価率を高めるガマン比べをするのである。しかし、ガマンにはおのずと限界がある。ガマンは絶対的で継続的なKSFたり得ない。ガマン比べをすれば、牛丼業界の二の舞だ。

筆者は明確な解を持たないが、一つの活路は「グローバル」にあると思う。日本国内で血みどろの戦いを繰り返せば、疲弊し、グローバルに戦う余裕を失う。むしろM&Aなどで国内での競争に一定のケリをつけた上で、キャッシュを潤沢に生み、それをグローバル展開の原資としていく戦略も当然考えるべきだろう。世界中ヘルシー食ブームで、需要は高い。日本人の食の象徴でもある寿司で海外勢に後れをとっては悔しすぎるではないか。

いずれにせよ、回転すし業界は、“生”のビジネスを学ぶにはもってこいの教材だ。色々な店に足を運び、業界をウォッチし続けていきたい。

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