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マクドナルドがデリバリー市場を破壊する?

投稿日:2010/12/10更新日:2019/04/09

マクドナルド、デリバリー参入の衝撃

デリバリーサービスは原則24時間体制。ハンバーガーやポテト、ドリンクなどの注文をコールセンターで受け付け、バイクで店舗から10分以内程度の地域に配達する。配達の経費、主に人件費が従来よりかかるため、そのコストは別途宅配料を顧客から徴収するか、メニューを値上げすることを検討しているという。

マクドナルドの店舗数は、現在効率化を図るため削減中ではあるが、2010年2月時点で3686もある。最終形としてその数のデリバリーサービスが動き出すのだ。ハンパではないインパクトだ。

宅配ピザ市場のリーダー企業は、売上げ・店舗数とも第1位はピザーラだが、約570店とハンバーガー業界第3位のロッテリアと同等(2位はモスバーガーの約1360店)の店舗数しかない。また、店舗数が1000を超えている宅配対応の外食チェーンとしては、カレーのCoCo壱番屋があるが、同社は全店対応しているわけではない。

普段の記事では4Pというフレームワークを紹介しているが、今回のケースでは、米国のラウターボーンという広告学者が提唱した4Cを使うと理解しやすい。4Cは、4Pを顧客目線で見直したもので、Productは「Customer‘swants」、Priceは「Totalcostofcustomers」、Placeは「Convenience」、Promotionは「Communication」と読み替える。

デリバリーがその価値を高めるのは、主にコストとコンビニエンスだ。このコスト概念では、単に商品の価格だけでなく、時間コストも含む。デリバリーは家にいながら待っていられるので、顧客の時間コストを大きく削減することに寄与する。

コンビニエンスという面では、コールセンターを設置して、誰でも覚えやすい「0570—0143(おいしさ)—55(ゴーゴー)」という全国統一の配達用電話番号を設定するというから、ネットで店舗検索、配達地域を確認するまでもなく、どこでも、手軽に注文できてしまう。そして、外食デリバリーチェーンでは国内初となる24時間体制。いつでも、家にいながら、注文できるのだ。

今回のマクドナルドの施策、様々な観点から面白いのだが、今後を占うという意味で、価格を中心に考えてみたい。

注目の価格設定

マーケティングとは消費者と企業の「価値の交換活動」である。デリバリーサービスにおける、「価値」の実現と、その「対価」に注目してみよう。

そもそも、消費者がデリバリーサービスに期待することとは何だろうか。

デリバリー。古い言葉で言うならば「店屋物」もしくは、「出前」。両者に続くのは「〜で済ます」という言葉なので、「味」に期待するのではなく、「手軽さ」や「時間節減効果」である。「Timesave」が中核的価値なら、それがどのように実現されるかという実体は、チェーン化されたデリバリーサービスならではの「当たり外れがない」ということだろう。

では価格はどうか。

デリバリーサービスにおいては、「手軽」という中核価値を実現している、従来型の飲食店、例えば住宅街に近い中華料理屋の場合を考えてみよう。出前をしない、ラーメン専業店の相場は、概ねその時代の「タクシー初乗り料金」と同等とよくいわれることから、750円〜800円程度。住宅地の店はそれより安く650円〜700円程度だろう。そば屋の基本的なメニューも同等だ。価格は店内価格と出前の場合と同じ。

デリバリー専業のピザーラ。ロングセラーの「ピザ・モントレー(トマト味・カレー味)」はMサイズで2100円。2人で分ければ1人前1050円で配達料込みということになる。

CoCo壱番屋は配達料がカレー1皿あたり100円+1軒200円だ。カレーの価格はメニューによるが、中間価格帯は750円程度だろう。1皿配達なら1050円となる。費用の根拠としては、片道10分の宅配に時給1000円のアルバイトを使った場合、1注文あたり333円価格に転嫁すれば赤字にはならない。

ピザーラのように価格に込みにするか、CoCo壱番屋のように別料金にするかの違いで、両者の価格帯が同等なのはポリシーが同じだからだろう。こう考えると、配達料が高く感じるが、「手軽」という中核的価値に加えて、「当たり外れがない味」という実体の付加価値分も含めて消費者は受入れていることがわかる。

価格設定には3Cの視点が必要だ。自社視点(Company)・顧客視点(Customer)・競合視点(Competitor)である。

前述の例で、「顧客視点」で「この程度までなら払っていいと思う価格(CustomerValue)」に基づいているのが、「ラーメン1杯=タクシーの初乗り料金相当」。そして、専門店でないので、それより少し安めに設定して、配達料込みにしているのが、住宅地の中華屋やそば屋の価格だ。その価格に比べて、「自社視点」で配達料を価格に転嫁している分だけ割高になっているのがピザーラやCoCo壱番屋の例になる。

マクドナルドは、サービス開始に当たって、値上げか、別途宅配料を徴収と表明している。しかし、まずは1店舗で試験を開始し、徐々に全国展開という段階的施策は「赤字を出さないギリギリの配達料金(もしくは値上げ)」を探るためだと思われる。

代表的なセットメニューである「ビッグマックセット」は、地域別価格の平均が650円程度となるだろう。その場合、ピザーラやCoCo壱番屋の配達料と同じロジックなら、メニュー100円値上げ+配達料1軒200円で、配達人件費1件333円を賄って約1000円となるはずだ。

この値段を顧客視点で考えると、あくまで筆者の感覚値になるが、マクドナルドのセットに1000円は、少し高すぎる。となれば、さらに低廉な価格転嫁か配達料の設定を考えているはず。例えば、「配達はセットメニューのみ。店頭メニュー価格+100円で、注文は3件以上。宅配料は無料」というような設定だ。

先行するデリバリー専業や、デリバリー対応飲食チェーンに対して、どのようなポジショニングで挑むのか。「競合視点」で、驚くような価格設定に出ると筆者は予想するが、その設定から同社の意図が見えてくるだろう。

強大な力を持ったコストリーダーが、別の業界に進出したり、今まで以上に注力したりした時、既存のプレイヤーは甚大な被害を受けることがある。米国において2005年にウォールマートが玩具に力を入れたことによって、米・トイザらスは一時、投資会社に身売りをすることになるという憂き目を見た。

24時間体制・1300店以上の市場カバレッジとコスト競争力で、外食事業において向かうところ敵なしの日本マクドナルドが、デリバリー事業に進出をするということは大きな変化を業界内にもたらすことは、間違いない。

来年の夏、全国規模での展開がどのような形になるのか、目が離せない。

参考記事:2010年12月8日付日本経済新聞「マクドナルド、配達参入——ブランド生かし顧客開拓、成長の柱に育成(戦略分析)」

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