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試す勇気と状況をつくりだす力〜「七放五落十二達」の法則

投稿日:2010/11/18更新日:2019/04/09

人はリスクと引き換えに何かを得る

リスクに対する「危機」という訳語は実に奥深いものです。そこには、危険(デンジャー)と機会(チャンス)が同居しています。飛行機が飛ぼうとするとき、抵抗する風を浮揚力に変え、機体は地を離れます。サーファーにとって荒ぶる高波は命を奪いかねないものですが、いったんその波に乗るや、このうえなく爽快な瞬間を獲得することができます。考えてみれば、人はリスクをコントロールし、リスクと引き換えに何かを成し遂げるものです。

私は仕事柄、さまざまにキャリアの相談を受けます。「組織に新たな提案をしたいとは思うのですが……」「転職を考えているのですが……」「留学したいのですが……」「独立しようと思っているのですが……」「異動希望を出したほうがいいか迷っていて……」。こうして悩む人は多いのですが、大方は不安や保身心から二の足を踏むことになり、それなりに冒険を回避して、それなりの結果で妥協することになります(場合により、その選択は中庸の道を選んだのであって、決して悪いとはいえませんが)。

しかし、思い切って何かを試していれば、大きく自分が拓けたかもしれません。仕事やキャリアづくりにおいて、ひとたび何か試してみよう、変化を仕掛けてみようとするとリスクが伴います。リスクとは、事態が悪化する可能性、体力や経済力を失う可能性、みずからの信用を落とす可能性、周囲から非難される可能性、等々です。

これらリスクを挙げていけばきりがありませんが、リスクも考えようです。平成ニッポンにおいての仕事上のリスクです。命を取られるわけでも、給料がゼロになるわけでもありません。自分が決めた建設的な目的を持って、変化を仕掛けて、自分を試す。そこでたとえ現象面で失敗したとしても、何か取り返しのつかない惨劇が待っているでしょうか。おそらく、そこで得られる心境は、「これで、またひとつ状況が進んだぞ。得たものは大きい」——ではないでしょうか。目的に向かう意志の下では、自分を試すことに失敗はないのです。

歴史上の偉人の生涯はもちろんですが、私たちが身近で見つける「あ、あの人の人生はいいな」において忘れてはならないことは、その人は必ず、あるタイミングで勇気ある決意と行動を仕掛けたということです。

7割見えたらサイを投げよ=七放

私は、仕事上で自分試しを何らかの形で仕掛けようとしている人に対して(自分自身に対してもそうですが)アドバイスしていることは単純明快です。——7割レベルまで計画、夢、志、理想像が見えるのであれば「GO!」です。

ただし、健康であること、家庭環境がある程度安定していること、そしてその計画に対し情熱があることの3条件が付いた場合です。7割レベルでいったんそのプランを放ってみるということで、私はこれを「七放」(しちほう)と名づけています。

俗に言う石橋をたたいてから渡るのか、石橋をたたきながら渡るのか。仕事やキャリアづくりは、時間をかけて意志決定すれば、必ずいい答えが持っているとは限りません。状況や仕事の縁といったものは、刻々と変化していきます。動くときは勇気を持って大胆に動くことが自分を拓いていく要です。この複雑な社会、複雑な人生において、どんな行動プランであれ、10割読み切るということは不可能です。たとえ読めたとしても、世の中がそのプランどおりに展開してくれる保証はどこにもありません。

7割まで来たら、まずサイを投げる。そして出た目を見て、次のプランを考え、また行動する。その繰り返しの中で、道が見え、道が固まってくるものです。

不測の状況と葛藤し道を探り当てる=五落

「七で放つ」のは簡単ですが、本人の真価を問われるのはここからです。つまりそこからは、混乱、困惑、不測の出来事のオンパレードです。未知の連続に、「こんなはずじゃなかった!」という場面も多々出現してきます。自分が描いていたプランのそこかしこにひび割れが生じ、あるいは崩れ落ち、変色し、縮小していくでしょう。そうして当初掲げていたプランは5割レベルまで落ち込む状況になります。これが「五落」(ごらく)です。ただし、肝に命じてください。これは落ち込んだように見えるだけです。

「五落」という背丈まで生い茂る草むらの中、素手で草を掻き分け、投げ倒し、道を探っていきます。どれほどの長さかわかりませんが、そうした混沌をくぐり、修羅場をくぐると、やがて広い丘に出ます。

その丘には、さわやかな風が吹いていて、ふと足元を見ると花も咲いています。そんな足元の花に気づくくらいに心に余裕ができたとき、振り返ってみてください。おそらく事を起こす前までの自分を、冷静に眼下に見下ろせるはずです。その到達した丘は、当初自分が計画した以上の高みになっていることが多く、12割レベルというのが実感値となります。——それが「十二達」(じゅうにたつ)ともいうべき境地です。

過去のことがすべてつながる「十二達の丘」

満足のいく仕事人生を築いていくにはさまざまな要素が必要になりますが、最も重要なものは「自分を試す勇気」と「状況をつくりだす力」ではないでしょうか。わかりやすくいえば、リスクを恐れず、常に行動で仕掛ける。そして、自分なりの正解をつくりだすことです。

動いていけば、いくほどに自分の視界はどんどん開けてきます。Aという山を目指していたが、状況をつくりだすうちにBの山にたどり着くこともあるかもしれません。ですが、たぶんそのときあなたはBの山頂に立ってこう思うでしょう——「あぁ、Bの山もまんざらではない。いい山だ」と。そして遠く向こうに見えるAの山頂をなつかしく眺めるでしょう。

どこまで行っても不安は付きまといますが、自分らしくという思いに根ざしていればそのプロセスもまた楽しめるものです。自分らしく、不測の状況と葛藤して、行き着いた先が自分の居場所であり、そこに充実感を覚えるのであればそれは大正解を勝ち取ったということなのです。

ゼロをイチにさえすれば、やがて百にも千にもなる

勇気と夢・志を持って自分試しを敢行した人たちの経験によると、「十二達」の丘に到達したとき、過去のことがすべて必然性を持ってつながってくるといいます。過去に何気ないところで得ていた技術や知識、人脈、そして雑多な経験や失敗などが、あたかも今抱いている夢・志のためにあったのかと思えるのです。

先が読めないから行動できない、というのは言い訳です。まずは行動してみないから、先が見えてこないだけの話です。

ヒルティは『幸福論』で次のように書いています。

「まず何よりも肝心なのは、思い切ってやり始めることである。仕事の机にすわって、心を仕事に向けるという決心が、結局一番むずかしいことなのだ。一度ペンをとって最初の一線を引くか、あるいは鍬を握って一打ちするかすれば、それでもう事柄はずっと容易になっているのである。・・・だから、大切なのは、事をのばさないこと」。

同様に、ノーベル化学賞受賞の福井謙一博士は、『哲学の創造』の中で、まったく新しい学問というのは、論理によらない直観的選択から始まる場合が多い。だから着想を持ったら、ともかく荒っぽくてもいいから実験を始めること。そうすれば試行錯誤の中で正しい結論が裏付けられていくと語っています。

何かの状況を前に、グズグズ、ウジウジ躊躇して、「ああなったらどうしよう、こうなったらどうしよう」と悩んでいる状態は気持ちが悪い。どうせ悩むのであれば、何か事を行って、その展開の上でどうしようかと悩むほうが、悩みがいもあるし、第一気持ちがすっきりする——そう思いませんか。

本田宗一郎は——— 「やりもせんに」と言いました。
鳥井信治郎は——— 「やってみなはれ」と言いました。
そして、ナイキのブランドメッセージは——— 「Just Do It !」。

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