外来種・ハイアールはガラパゴス・日本を席巻するのか? 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

ガラパゴス島を狙う中国

9月14日付日本経済新聞企業面に「中国ハイアール日本で中・高級家電中型冷蔵庫など1〜2割安く」という見出しの記事が掲載された。従来、日本メーカーが手掛けていない、単身者向けの小型製品などを展開していた同社が、国内の主力市場であるファミリー向け製品に全面参入の予定であることを伝えている。

大手家電メーカーやECサイトでもその名を見る機会が増えてきた「ハイアール」。記事にもあるように、冷蔵庫・洗濯機の世界最大の生産台数を誇る、白物家電では世界最大手企業である。「家電王国・日本」などという称号はもはや昔日。同社は成長著しい自国中国を中心にインド、さらに欧州にも販売拠点を広げ、ついに日本市場にも全面参入を表明したのである。

国内市場が下手に大きく、そこで十分成長できてきたが故に、自国市場のニーズに対応した独自仕様で世界には通用しなくなってしまったとされる日本製品。絶海の孤島・ガラパゴス島になぞらえられ、ガラパゴス携帯を略して「ガラケー」などと揶揄する。

このガラパゴス現象に関しては、特に日本以外の市場で流通しにくいことから、賛否両論を巻き起こしている。例えば、「日本もガラパゴスを辞めて各市場に合ったスペックを落とした商品を開発すべき」と、元サムスン電子常務・吉川良三氏がGLOBIS.JPに掲載された記事「サムスン電子の躍進に学ぶ、グローバル市場を見据えたものづくり」の中で話している。一方で「現場力」などの著書で知られる、経営コンサルティング会社、ローランド・ベルガー会長の遠藤功氏は、ダイヤモンド・オンラインでの連載記事の中で、「TOTO、ヤマトが示した『ガラパゴス』こそ日本のチャンス」と題し、「卓越した技術力を基盤とした製品の高機能化、高付加価値化は日本の競争力の源泉であり、それを捨てるような処方箋はありえない。韓国企業や台湾企業の成長が著しいからといって、その後追いをすべきという発想自体が安易であり、ナンセンスである」と持論を述べている。

筆者はガラパゴス化の功罪について判定できる立場ではないが、このように、ガラパゴス化は「日本企業のグローバル市場でのプレゼンス」という文脈で語られることが多い。だが今回は、いよいよ足元の本国に火の手が迫ってきたというニュースであることに留意頂きたい。

ガラパゴス島では、地球環境問題と関連して、温暖化による海水温の上昇で海草が死滅し、食糧不足で海イグアナの体長が小さくなるなどの変化が起きている。さらに甚大な被害をもたらしているのは、外来種だ。多数の人間が島に入り込んだことによって、本来島に生育していなかった生物、外来種がはびこり、独自の生態系が破壊されつつあるという・・・。なにやら、日本市場と細部まで酷似しているようではないか。

イグアナのように心が縮んだ消費者の心をとらえるのは…

日本の家電市場の中で、中国メーカーの製品が繁茂する余地はどこにあったのだろうか。一つはやはり、環境の変化だろう。上記記事の翌日、9月15日の日本経済新聞消費面のコラム「消費のなぜ」。「洗濯機『縦型』牽引ドラム式との機能差縮小値頃感増す」という見出しで掲載されている記事を見てみよう。ここ数年、洗濯槽が横に回る「ドラム式」が人気だったが、省水量型など機能向上と、何より価格の安さが人気で「縦型」が買われているという。購入層は、単身・少人数世帯やマンションなどの狭小住居世帯。さらに、ドラム式に装備されている「完全乾燥機能」をオーバースペックと感じている層などであるという。

マクロ環境で考えれば、日本の人口は2005年から減小に転じている。2015年までは世帯数は増加すると予測されているが、そのほとんどが単身・少人数世帯である。さらに長引く不景気は財布の紐を引き締め、買い換えるたびにグレードアップするという、「すごろく型の消費」などはもはや過去の購買行動でしかない。

日本向けのハイアールの家電は、日本向けのデザインや機能を搭載し、製品開発されるという。しかし、オーバースペックな開発はせず、「必要十分」というレベルで価格を抑え、コストパフォーマンスの良さで勝負をかけてくるはずだ。価格は安いが、そこそこ品質がいい「グッドバリュー戦略」。アパレルに例えるなら、ファーストリテイリングの「ジーユー(g.u.)」のような競争価格戦略のポジションだ。昨今の消費者の多くは「それでも十分」という購買意志決定をする。最高の品質・最高の価格という「プレミアム戦略」だけが支持される時代ではない。

ECサイト最大手の楽天が、同サイトのヒット商品ジャンルを独自の切り口で集計した「楽天市場2009年ヒット商品番付」を2009年11月26日に発表した。前頭三枚目に「家電の二極化/高価・安価」がある。楽天は「価格破壊による安価化と消費者のこだわりによる高価格化の2極化が著しかった」と分析。安価については「メーカーの宣伝費や卸問屋の中間マージンを徹底的に削減したサードパーティモデルが堅調に推移」とし、高価は「高額ヘッドホンのヒット等、商品機能と消費者ニーズがマッチすると高価格でも売れるということが示された」という。

昨今の経済情勢を鑑みれば、二極化のうち安価の方にドライブがかかることも想像に難くない。そうなれば、白物家電においては、コストリーダーシップ戦略にモノを言わせることが可能な、世界最大のメーカー・ハイアールが圧倒的に優位に立つことになる。

ガラパゴスのイグアナが身体を小さくしてしまったように、企業が思っている以上に、日本の消費者心理は小さく縮んでいるのではないか。「身の丈消費」に動いているのではないだろうか。そんな消費者の姿や心理に、もう少し目をこらすべきだと思う。

名言

PAGE
TOP