論点を把握する(3) 

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皆さん、大変お久しぶりです。私の事情で本連載が長らくストップしてしまい、申し訳ありませんでした。今後は継続的に掲載できるよう頑張りますので、お付き合いのほど、宜しくお願いいたします。

さて、前回まで、「仕込み」の中核である「論点を把握する」について、その必要性と難しさを考えてきました。ファシリテーターは意見以上に論点に着目し、議論されている論点を把握し、適切なコントロールを行う必要があること。しかし論点把握は難易度が高く議論の現場でいきなりやることには限界があるため、事前の準備が重要であることが理解できたかと思います。では仕込みにおいて具体的にどのように論点を把握すればよいのか?今回からはそこを考えていきたいと思います。

「広げる→絞り込む→深める」で、頭の中に「論点の地図」をつくる

議論の中で参加者から出てくる意見について、議論すべきことか否かを判断し、必要な対応をする。また意見が出てこなくても、本来議論すべき論点があればそれを補う。ファシリテーターはこうした役割を果たさなければなりません。それも様々な発言が出ている中で、素早く、また意見をしっかり聴きながら行うのです。こうしたことができるためには、事前にどのような論点があるのか?論点相互の関係はどうなっているのか?重要な論点は何か?などを十分に整理した形で頭の中に描いておく準備が必要です。いわば「論点の地図」を頭の中につくるということです。

「論点の地図」をつくるには、「広げる(洗い出す)→絞り込む(重み付け)→深める」という順番を意識するとよいでしょう。以下それぞれどういう意味があるのか?を考えていきます。

論点を広げ、見落としを減らし、予測量を増やす

まずやるべきは「論点を広げる」ことです。いきなり特定の論点について考え始めるのではなく、議論されるテーマについて「この議論をする場合、そもそもどのような論点が考えられるか?」を、一歩引いた大きな視点から洗い出していきます。ここで重要なのは、自分が「この論点を議論すべきだ」と思っているよりも【広く】関連する論点を洗い出すことです。なぜそれが必要なのでしょうか?

ひとつは、本来議論すべき重要な論点を見落とさないようにするためです。ファシリテーター自身が当初「これらの論点を議論すればよいはず」と思っていても、見落としている点があるはずです。そうした点は参加者も見落としてしまうことが多く、ファシリテーターが議論の場でそれを補足する必要性・有効性はとても高いといえます。

もうひとつは、議論の中で「本来あまり重要でない論点」が出てきた際に、すばやくそれを察知し、本来議論する必要性がある論点に話を戻す対応をするためです。そのために「何が本筋の論点で、何がそうではないのか?」を事前にある程度あたりをつけておくことが必要です。そうであるなら「議論すべき論点」だけを理解していれば良いのではないかと思われる方もいるかと思いますが、実はそれでは上手くいかないのです。前回までに考えてきたように、論点を把握すること自体が難しく、またその論点の関係や、その論点が本来議論すべきものか判断することはある程度【じっくり】考えないとわかりません。一方で実際の議論の現場では発言が次々と出てきて話が進行していくので【じっくり】考えている時間的余裕はありません。このため予めしっかり論点を広げてどんな論点が出てくるのか?を予想し、その論点は議論全体の中でどのような位置づけにあり、それを議論する必要性はあるか?を考え、重み付けをしておくことが必要なのです。

「議論すべき論点」と「議論になりそうな論点」を意識して幅広く洗い出す

論点を洗い出す際には、大きく2つの方向からアプローチをするとよいでしょう。ひとつはそこで議論されるテーマを論理的に分析し、適切な意思決定・合意形成をするにはそもそもどういった論点について議論することが必要なのか?を考える方向です。いわば「理想的な議論の姿」を描き、【議論すべき論点】を押さえることです。

もうひとつは、参加者の立場に立って、どんな意見や疑問を持つのか?実際の議論の場面で誰が何を言いそうなのか?をイメージし、そこから論点を抽出していく方向です。これは【議論になりそうな論点】です。【議論になりそうな論点】は【議論すべき論点】と重なる部分もありますが、必ずしも一致はしません。参加者の立場からはなかなか出てこないが考えるべき重要な論点もありますし、本来そこを議論することは意思決定にあまり貢献しないものの、参加者の立場からするとどうしても言いたい、議論したいと思えるものもあります。両方に思考を振って、あえてそれぞれの視点から考えることに価値があります。

「○○部長がこういう意見を言うだろうからそれにどう対処するか?」などを考えることは大事ですが、参加者の立場や関心だけから考えると、どうしても特定の関心に偏ってしまったり、本来議論すべきことを見失いがちになります。特定の関心によらずに何を議論すべきか?を冷静に考えておくことで議論の全体像を見つめやすくなり、多くの参加者が見落としがちな重要な論点を発見することにもつながります。こうした論点を予想していれば、必要に応じてファシリテーターが考えるべき論点を示したり、議論の中で不足している視点を補うといったサポートができます。

一方で、参加者の立場や関心を踏まえずに考えると、実際に出てくる可能性の高い意見や論点を見落としがちになり、実際の議論の場でそうした発言があった場合に素早く対応ができません。特に難しいのは一部の参加者にとって強いこだわりがあるものの、全体から見ればその議論に時間を使うべきではない論点の扱いであり、予め作戦を練っていないと上手く対応できないものです。加えて、参加者それぞれの立場をイメージして論点を考えてみると、自分自身が気づかなかった、そのテーマに対して考える必要性の高いポイントを発見することにつながります。前に述べたように、論点を網羅的に洗い出すのは難しいことであり、様々な立場をイメージすることで、自分の発想に刺激を与えることができます。

洗い出した論点を重みづけて認識する

十分に論点を広げたら、次はそこから「絞り込み(重み付け)」を行います。実際の議論では、考えられる論点全てを議論する必要はなく、むしろできるだけ重要な論点に議論をフォーカスさせた方がよい議論になります。どの論点は十分に意見を出してもらって議論すべきなのか、どの論点は議論しても良いが簡単に済ませるべきなのか?どういった論点はそこで議論すべきものでないのか?を考えて重み付けをしておきます。実際の議論の現場では、この重み付けに基づきファシリテーターが論点を提示する、もしくは出てくる様々な発言に対してどう対応するか?たとえばその意見が語っている論点についてさらに別の意見を求めるのか、より論点をさらに深堀りするのか、その論点に関する議論をやめるように働きかけるのか?を判断し、対応することになります。

重要な論点は更に具体的に深める

最後に、特に重要な論点について、もう一段「深めて」おきます。特に参加者の意見が分かれるであろう論点や、結論を左右する上で重要な論点については、より詳細に、具体化して考えていきます。

たとえば、意見を引き出し、議論を活性化させるために、参加者がその論点について考える助けになるような切り口、判断する上で漏らしてはいけない視点を用意し、「こうした視点で情報や意見を整理したらどうでしょう」と提供したり、「こうした点についても考える必要がありますが・・」と補完できるようにする(たとえば、「営業活動の改善」について議論するのであれば、「顧客別・製品別による整理」や「顧客の購買意思決定プロセス」「営業活動のプロセス」などの切り口が考えられます)。もしくは、特に議論が分かれるポイントについて、判断軸となり得るものを洗い出し、比較できるようにすることも重要です(たとえば、「営業の効果だけでなく効率面からも判断すべき」といった具合いに)。

このように、「広げる→絞り込む→深める」のステップを踏むことで、ファシリテーターの中には、重要度でグラデーションがついた「論点の地図」ができてきます。この地図を持っているからこそ、様々な意見を正しく理解し、位置付け、方向付けることが可能になるのです。次回からは、より具体的に、それぞれのステップでどのように考えればよいのか?を掘り下げていきましょう。

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