世界目指すベンチャー、「強みへのこだわり」と「コミュニケーション力」を磨け 

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“日本発グローバル”なビジネスを展開するためには、世界のトレンドに対して常にアンテナを張り、グローバルな視点を持った経営チームを持ち、戦略を立案していくことが必要になる。前回の連載では、ソーシャルアプリを例にその成功に必要なポイントを紹介した。

今回はグロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)シニア・アソシエイトの高宮慎一氏と、キューエンタテインメント(キュー)代表取締役CEOの内海州人氏に、ベンチャー企業がどのようなグローバル戦略を持つべきかを聞いた。

Quest for the Future Entertainment

——GCPにおける高宮さんが担当されている分野について教えてください。

高宮:私はモバイルやITにおいて、主にコンシュマー向け企業の投資を担当しています。特に今はソーシャルメディアやソーシャルアプリを中心に見ています。また、潜在力があるのに海外に進出できていない企業のサポートにも注力しています。

——内海さんはどのような経緯でキューと関わっていったのでしょうか。

内海:私はもともとソニーにおり、Play Stationの米国での立ち上げを担当したことでゲーム業界に入りました。その後は、セガの米国法人でゲームのコンシューマーゲーム開発を担当し、Dream Castの立ち上げで日本に戻ってきて、そこでいろいろなクリエーターさんたちと仕事をしました。さらにその後はディズニー・インタラクティブアジアで日本を含むアジアのゲーム部門を担当していました。そして2003年にセガで一緒に仕事をしていた弊社代表取締役CCOの水口哲也とキューを設立し、現在に至ります。

キューでは設立当初は、資金力もあまりなかったこと、ニンテンドーDSやPSPが新規性の高いハードとして登場したことから、DSやPSP向けにパズルゲームを開発していました。その後各種プラットフォーム向けにソフトを提供。現在ではモバイルも含めて、オンラインゲームの開発や運営を広く手掛けています。

——キューは幅広いプラットフォームでゲームを提供しています。最初からコンシュマー機だけでなく、オンラインでの展開を予定していたのですか。

内海:キューエンタテインメントの「キュー(Q)」には、“Quest for the Future Entertainment”という意味を込めています。世の中がどうなっていくかわからないけれども、なるべく世の中の動きには敏感でいよう、冒険していよう、という感じで。

しかし、私がキューに参加した当時から、オンラインの波は避けては通れないだろうとは意識していました。2003、4年当時、中国ではすでに一社にてオンラインで100万人同時接続サービスを行っているのを目の当たりにしていましたし、ほかのアジア各国でも、現場を見て感じていましたね。

——GCPではキューに対して2009年3月に出資していますが、そこに至る経緯を教えてください。

高宮:ベンチャーキャピタル(VC)が本格的に参加したのは、今回が初めてのラウンドとなります。

以前から日本らしい品質の高いビデオゲームをプロデュースする会社として評価していたのですが、それに加えて流通チャネルをちゃんと押さえている。Xbox、PlayStation、PSP、DSなどの家庭用ゲーム機はもちろん、PCやモバイルといったオンラインも含めすべてのプラットフォームに出せる。さらに内海さん、水口さんを含めて役員の方々がグローバル展開を見据えたチームを作り上げていることから、ぜひ一緒にやっていきたいということで投資に至りました。

——GCPでは投資後、VCとしてどういう形でキューと関わっているのですか?

高宮:戦略や組織開発のレベルではもちろん結構オペレーションまで入り込んで、「チームの一員として一緒に」というのを大事にしてやっています。攻めという点では、中期的な戦略を練るところから一緒にやっています。VCという立場から幅広い業界や国の動向をインプットし、経営会議や合宿などで膝を詰めて戦略を議論しています。また守りという点では、会社の仕組み作りや組織体制を整備といったところをサポートしています。たとえば、マネジメント・レポーティングやプロジェクト管理の仕組みを導入するといった具合です。

内海:やはり戦略を考えるにあたって、理論の整理を手伝っていただくことが非常に役立っていますね。あとは、現場レベルの細かいところを、チームの一員として動いてくれるのは、ほかのVCとの感覚の違いを感じます.

グローバルで生き残るための条件とは

——キュー初のタイトルとなった「ルミネス」をはじめ、もともとキューは海外での評価が高かったと思います。グローバルな展開の背景には、日本の競争優位性がそろそろ危うくなっているという意識があるのでしょうか。

内海:日本市場はもちろんそれなりの魅力があるので続けていくのですが、欧米やアジアの市場にも多くのチャンスがあります。ただ、日本は日本でもしっかりやるべきだし、国内外問わず優秀なプレーヤーが居ればそこと一緒にやりたい。そこをどうデザインしていくかということですね。
我々は韓国のゲームメーカーと協力してソフトを開発したり、アジアのオンラインゲームを日本に持ってきて、国内で運営のノウハウを蓄積したり、さまざまな形で世界のプレーヤーとかかわりをもち、フレキシブルに動いています。

——グローバルに成功するために、重要になるのはどういう要素だと考えていますか。

内海:グローバルであろうがなかろうがやっぱり“強み”を持つことですよね。結局、グローバルな市場で勝ち抜ける強みを持たないと生き残れない。グローバルレベルで展開するっていうことは、グローバルレベルでの強みがあるってことが必要十分条件の1つだと思います。

ゲーム業界の中では、我々は動きが早い方だと思います。でも、ウェブの会社と比べると決して早くはない。ウェブ、ゲームといった業界の壁が崩れ、グローバルで競争が進んでいる中、グローバルでポジションが取れる、強みのあるものを作っていきたいと考えています。市場全体から見ると一部ではあっても、グローバルでその領域を取っていく、そんなことをしたいと考えています。

——そのほかに、グローバルに成功するために欠かせない要素というのは何があるのでしょうか。

内海:やはりコミュニケーション能力ですね。一般的に日本人は正しい正しくないで議論することが多いのですが、もう少し幅をもってコミュニケーションするのが重要ではないでしょうか。

日本で「ディベート(debate)」と言うと、相手を言い負かすというようなイメージがあります。しかし、英語で「ディベータブル(debatable:debateの形容詞)」と言うと、「それって一理あるよね」という意味です。つまり議論し、その結果をリスペクトするという考え方の土壌があるということです。
ですが日本人は、いざ商売となっても英語を話すこと自体に力が入ってしまって、なかなかそこにはたどり着けない。今の若い人たちは能力的には高いし頭も柔らかいので、もっと場慣れして、さまざまな人とネットワークをつくることで解決できる問題でしょう。

——キューはディー・エヌ・エー(DeNA)のモバイル向けソーシャルネットワーキングサービス(SNS)「モバゲータウン」のソーシャルゲーム開発パートナーになっています。ソーシャルゲームでのグローバル展開についてはどのように見ていますか。

内海:今は正直“バブル”の状態かとも思いますが、ソーシャルゲームは産業としては残るものだと考えています。これもビデオゲームのソフト会社がプラットフォームにのって世界に出ていったのと同様にSNSといったプラットフォームに乗ることで、グローバルに展開できるものだと考えています。ただしモバイルに関しては、日本のモバイルをベースにした場合、グローバルでどの程度伸びるのか、というのは分かりません。

ですので、PCやスマートフォン向けのコンテンツも注意して見ていかなければいけない状況だと思います。効率は悪いと思いますが、「いくつかのプラットフォームに張る」ということをしておかないといけない状況だと思います。

任天堂やソニーのように、プラットフォーマーとして世界で頑張ってくれる日本のプラットフォームプレーヤーが出てくるのが一番嬉しいですね。プラットフォームが育たないとパートナーもグローバル展開するのは難しいと思います。

——さきほど「いくつかのプラットフォームに張る」ということを挙げられましたが、ソーシャルアプリのマルチプラットフォーム展開についてどう見ていますか。

内海:日本でソーシャルアプリと言えば、現時点ではmixiかモバゲータウンが代表格。これらのマルチプラットフォーム化と考えれば、テクニカルな敷居は低いです。

またゲームメーカーとして見れば、コンシュマー機のマルチプラットフォーム化に比べてコストも非常に安い。コンシュマー機であれば、ハードごとにほぼフルスクラッチで作るようなものですし、独自にミドルウェアを開発したところで、その費用は10億円規模になります。現状のソーシャルアプリとは比較になりません。

しかしながら、容易にマルチプラットフォーム展開できることが成功につながるかどうかは別です。プラットフォームごとにユーザーの感覚や文化をどう理解し、取り入れていくかが重要であり、そこには前述のとおり自社のコアとなる強みが必要です。こういったものがないと、そのプラットフォームの勝者になれる訳ではありません。

——グローバルな企業を目指す際、VCと企業との付き合い方はどうあるべきだと思いますか。

内海:ベンチャー側の目線で言うと、業界を理解していないのに細かい要求ばかりするというのではなく、業界に精通し、何かあれば助けを借りられるというのが理想ですね。おそらくVCにとってもそれが理想だと思います。

高宮:ベンチャーがグローバルレベルでの強みを作るときに、どういう部分をVCから補完するのかをはっきりさせておくと良いと思います。キャピタリストも個人商売的な側面があるので、個人ベースで求めている能力を持っているのか、ウマが合うのかを見ていくことも重要だと思います。個人的には起業家とキャピタリストが1つのチームとして同じ船に乗り、お互いに補完し、成長しながら、一緒にグローバルに打って出る、それが理想だと思います。

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