日本のリーダーよ、変化に適応する気概を持て!(堀義人 起業家の冒言) 

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米企業が加速するスリム化と攻めの経営

米国のゲーム会社エレクトロニクス・アーツ社(以下、EA社)は、昨年11月にソーシャル・ゲームの英プレイフィッシュ社を約300億円の資金を投入して買収。これには驚かないが、それと同時並行的に1500人リストラしていた事実を知って愕然とした。大幅な解雇を断行しながらも、新しい企業の買収を行っているのである。一部の日本企業も同様の方針らしいが、そこまで徹底してできるのだろうか。

安定成長が期待できた時代は、雇用の安定を守るのは美徳であった。だが、今のように急激に変化している時代に適応するには、過去のやり方を否定せざるを得なくなる。まさに一年前にやっていたことすら否定する必要があるのだ。ゲーム業界は、特に変化が激しい。今のゲームの主戦場は、PCや携帯の上に乗っかる原則無料のソーシャル・ゲームになりつつある。昔のプレイステーションやWii向けのゲーム・ソフト市場は、急速に縮んでいる。どう対応すべきであろうか。

EA社は、停滞する事業分野を切り捨てて、成長する分野に資源をシフトすることとしたのである。そのために、企業の中で余剰となった人員を解雇し、一方では、社内のみで変化に適応できない部分については、外部の違う能力をM&Aによって内部化したのだ。つまり、古いものから脱皮するとともに、新たな能力を買収によって獲得したのである。スリム化と攻めの経営の双方を同時に回したのだ。物凄い変化が起こっている時代では「変化への適応力」と「スピード」が、生き残りの鍵となる。進化論を引用するまでもなく、EA社の事例はそれを物語っている。

重い足かせをはめられた日本企業

ところが、日本では、解雇をしながら巨額の買収をしかけることは許されない。なぜならば解雇には、相応の理由が必要だからだ。「企業が変化に適応し、世界での競争を勝ち抜くため」というだけの事由では基本的に解雇はできないであろう(本来は一番重要な事由であるかもしれないのだが)。さらに困ったことに、派遣も原則禁止となる。雇用の柔軟性がさらに減り、採用した社員を原則一生抱え続ける必要が生まれる。そうなると、日本企業から柔軟性、適応力が奪われることになる。

ある海外の人が言っていたが、「日本企業は、重い足かせをつけて走っているようなものだ」、と。社会保障費用も高く、高い税金が課される。雇用の柔軟性が減り、コンプライアンスへの要請が他国よりも高い。さらには、政府が「反企業的」である。これだけの足かせをつけながら、日本企業は、この大競争時代を勝ち抜いていけるのであろうか。

そうは言っても、先の「日本企業よ、『ものづくり神話』を捨てて『経営力』を高めよ」で論じてきたように、どのような経営環境であろうが、不断の経営努力はしなければならない。さもないと、日本企業は、日本航空のように、会社更生法が適用されて初めて、改革の緒に就くことにもなりかねない。そうなると、株主は多大な損失を負い、銀行や取引先は大幅な債権カットを強いられ、ブランド価値は下落し、結局多くの社員は雇用を失う。「会社更生プロセスを経た会社が、トップ企業に舞い戻った事例は少ない」、という研究結果を米国で見かけたことがある。一度失ったモーメンタムを取り戻すことは、至難の業なのだ。

雇用流動化は世界で生き残るために不可欠

となると、今の激動の時代には、次に述べるような二者択一をせねばならなくなる。日本国民は、果たしてどちらを選ぶのであろうか。

(1)雇用は確保したまま、抜本的な改革を行わずに、緩やかに衰退していく日本企業(それでもゆくゆくは、結果的に雇用は失われるのだ)。
(2)あるいは、雇用を聖域にせずに不断の経営努力を行い、世界で勝てる日本企業

「二者択一は極端だ。雇用を確保したまま、強い日本企業が生まれる」、という理想主義の人もいるであろう。現実は、厳しくその理想主義を否定する。この10年間で日本企業は、相対的な地位を失っている。フィナンシャル・タイムズの調査では、世界トップ100に入っている日本企業は、わずか4、5社しかないのだ。以前は、常に30社近くがランクインしていたのだが、今や一桁の前半である。「バンクーバー五輪のメダルの数が少ない」と嘆くむきもあるが、経済の最前線で日本は負け始めているのだ。

恐らく国民としては、(2)雇用を聖域にせずに不断の経営努力を行い、世界で勝てる日本企業の実現を望むのが普通であろう。だが、今の日本企業は、「派遣切り」と批判されたことによって、正規雇用にまで手を付けられないのが、実情であろう。失業率が下がったからと一喜一憂できない。抜本的な日本企業の強みが戻らない限りは、(1)の長期的衰退のシナリオから抜けられないからだ。

断っておくが、米国企業の様に、社員を道具として使え、とは言っていない。日本企業の良さである、「コミュニティ型の経営」を持続しながらも、雇用を聖域とせずに必要なスリム化を行い、強い企業を実現して欲しいと言っているのだ。

雇用を守っても企業が衰退しては意味が無い。世界で勝たなければ、永続的に成長し続けない。世界で勝てないとジリ貧になっていくのが、目に見えているのだ。世界は、EA社のように、ダイナミックに、スピーディに変化に適応している。その姿を見て、米国の企業は「羨ましい」と言っても始まらない。強い危機感を持って、日本の与えられた枠組みの中で、できる限りのことをしなければならないのだ。

その闘う気概が無い経営トップは、その職を去るべきであろう。「自分が職にある数年間は安泰だ」なんて思っている、事なかれ主義的経営者は、百害あっても一利無しである。若くてやる気のあるリーダーにその職を譲るべきであろう。これは、政治家もしかりである。この変化の時代には、新しい発想が望まれる。創意工夫をしながら、果敢に攻め続けようと思っている気概がある人々に、企業そして日本の舵取りを委ねたい。日本のリーダーよ、変化に適応する気概を持て!

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