ゼンショー「世界から飢えと貧困をなくすため、フード業世界一を目指します」 

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■ゼンショーの企業理念

世界から飢えと貧困をなくすため、フード業世界一を目指します

ゼンショーグループのビジョンは「世界から飢えと貧困をなくす」こと。

世界には十分な食糧があるにもかかわらず、今も飢えが原因で命を落としている人々がいます。

ゼンショーは、世界中の全ての人々に安全でおいしい「食」を手軽な価格で提供することを使命とし、世界の食事情を変えることができるシステムと資本力を持った「フード業世界一」企業となって、これらの問題を解決したいと考えています。

そのためには、独自の事業モデルである「マス・マーチャンダイジング・システム(MMD)」の構築、つまり食に関するすべてのプロセスを自分たちの手で企画・設計し、安全性と品質にすべての責任を負って世界規模でオペレーションする組織をつくり運営することが必要です。

ゼンショーは、このMMDを事業の核として「フード業世界一」を目指し、進化しながら全力で挑戦し続けます。

積極的な事業拡大

「すき家」を筆頭に、配下に40近くの事業ブランドを抱えるゼンショーであるが、その歴史は決して長いものではない。同社が、現在も社長を務める小川賢太郎氏によって設立されたのは、1982年6月のことであった。同年11月には、早くも牛丼店第一号となる「すき家」1号店を出店している。

ちなみに、ゼンショーという企業名は、「全勝」、「善意の商売」、「禅の心による商売」などの言葉に掛けて名付けられたという。三つ目の「禅」もユニークだが、同様にユニークなのが、最初の「全勝」だ。

これは、創業当時より、フード業界世界一を目指しており、そのためにはすべてのことにおいて成功を収めなくてはならないという決意を表すものと言う。つまりゼンショーは、創業当時から、「世界一」をキーワードに事業を展開してきたのである。かつての本田宗一郎氏にも通じることであるが、極めて大胆でユニークと言えよう。

さて、冒頭に売上高3120億円と書いたが、実は、9期前の2000年3月期の売上高は25億円にすぎない。つまり、わずか9年でゼンショーは売上高を120倍以上に増やしたのである。そのマジックのタネはシンプルだ。00年の「ココス」、01年の「牛庵」、02年の「ウェンディーズ」(09年12月10日、事業からの撤退を表明)、05年の「なか卯」など、フード業界の同業者や隣接業者を次々と買収したのである。

最初の買収となった「ココス」のケースでは、TOB(株式公開買い付け)を活用し、「小が大を飲み込む」形で、売上げを一気に増やした。この結果、取引業者に対する仕入れ交渉力は格段に上がったと言う。また、需要に合わせたチェーン間での食材のやりとりなどもできるようになった。このときの成功が、後のM&Aを加速することになる。その後のM&Aでも、そうした規模の経済性、範囲の経済性の実現を強く意識しているのは間違いない。

少子高齢化の影響もあって外食ビジネス全体に逆風が吹く中にあって、たとえば同時期にM&Aで拡大戦略をとったレックス・ホールディングス(「牛角」「鳥でん」などを擁する)が多角化経営の不振からMBOにより株式を非公開化したのに比べると、40弱もの事業ブランドを抱えながらも、(09/3期の経常利益率は2%前後とは言え)毎年しっかり利益、そしてプラスの営業キャッシュフローを出してきたゼンショーに対しては、「Excellent」とまではいかないまでも、「Good」の評価を与えることは可能であろう。

MMDの導入による買収事業のてこ入れ

では、何がゼンショーの成長の原動力になっているのか。その大きな要因の1つが、冒頭にも紹介した「マス・マーチャンダイジング・システム(MMD)」と呼ばれる、食の一貫システムだ。MMDは、いわばゼンショー独自の社内バリューチェーンであり、これによって生産・調達から店舗運営までを含めて、標準化を促し、安全性や品質の担保を行うことが可能となる(ゼンショーでは、工場などはすべて自ら持っている)。

ちなみに、M&Aを積極的に活用している優良企業の代表例として、しばしばGEが挙げられることが多い。GEのM&A戦略の最大の肝は何なのだろうか。それは、事業間の個別のシナジーの追及ではなく、経営力の低い会社に、GE流の高度な経営の仕組みを導入するという、コーポレイトシナジーの追求である(GEの買収100日プランは有名だ)。つまり、経営力に劣る会社の潜在力を引き出すのが、GE流M&Aの主眼となっている。

ゼンショーのMMDもそれに似たようなところがある。つまり、バリューチェーンに弱みを抱えている企業に対してトータルソリューションとしてのMMDを提供することで、ビジネスの仕組みを高度化し、安全性や品質の向上を図っているのである。

ゼンショーのWEBページには、以下のような記述もある。

ゼンショーの使命。それは、「世界中の全ての人々に、安全でおいしい食を手軽な価格で提供する」こと。
それを実現するためには、「明確な目的」「緻密に計算された仕組み」、そして「十分な資本力」を持つフード企業が必要だと考え、「フード業世界一」のスローガンを掲げて、急速に発展を続けてきました。(以下略)

つまり、MMDというシステムや、急拡大戦略は、企業理念やミッションから導かれる必然の結論と言うのがゼンショーの考え方なのである。

最近では、売上高10兆円を目指すと宣言している。この数字は現在のおよそ30倍であり、当然、国内市場だけでの達成はできない。すでに2006年からは海外進出も始めており、今後はますますこれを加速させる予定だ。

夢物語に思える話にも見えるが、企業理念やミッションを真面目に実現しようと考えるのであれば、これは単なる夢物語ではなく、同じく必然のゴールイメージなのである。経営論の定石ともいえる、「ビジョン−ミッション−経営理念−戦略−システム」の整合性が、強く意識されていると言えよう。

ゼンショーのアキレス腱

一見、快進撃を続けるゼンショーであるが、そのアキレス腱はないのだろうか。近年、気になる事件として、「アルバイトに対する残業代の不払い」に関する訴訟という問題があった。これは、アルバイトを業務委託とみなし、サービス残業を強いたというものである。

真相は外部からはなかなか窺いしれないが、成長に伴う組織の痛み(成長を支える内部管理の仕組みや実行に不備があり、従業員のベクトルが合わない、モラールダウンが起こるなどの現象が起こること)が起こっている可能性は否定できない。

しかし、むしろ、9年間で120倍に成長した会社に、成長の痛みがない方が不自然とも言える。人事制度など内部管理のハードな仕組みを整備することはもちろん、こうした痛みを、企業理念やミッションといったソフト要素、あるいは、それを体現・実現するために編み出したMMDという武器でいかに緩和していけるかが、鍵になりそうだ。

つまり、トップのコミュニケーションなどによるソフト要素の徹底と、それを補完すべく、システムを動かす中で、人々が育ち、意識付けられ、動機付けられる仕掛けがどれだけ巧みに盛り込まれるかがポイントになってくる。例えば、リコーの環境会計は、その実行の中で、従業員の考え方に大きな影響を与えた。そうした例がヒントになるかもしれない。

同時に、小川賢太郎社長による、これまで以上に的確な戦略の立案・実行や、リーダーシップが必要になるのも言うまでもない。

ゼンショーが、組織整備が追いつかず内部崩壊してしまうのか、それとも強い組織としてまさに「全勝」を成し遂げ、成長していけるのか、今後も注目される。

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