「ニュー」で「ハーフ」な時代をどう生き延びるか 

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もう、元には戻れない

「変わり続けてく街並みのように、元には戻れない若いふたり……」。切ない歌のフレーズが、頭にこびりついていて離れない。なんという歌だったか。

しかし、元には戻れないのは若い二人だけではない。世界は、もう元に戻れないのだという。

プレジデントの記事『「ニューノーマル」〜米国経済は二度と元には戻らない』では、マイクロソフトCEOのスティーブ・バルマー氏の発言を取り上げている。

ニューノーマルという語は、世界最大手債券ファンド・米ピムコのCEOであるモハメド・エラリアン氏が、サブプライム危機を予言した著書の中で、その後の経済状況を表現するのに使ったものだ。エラリアン氏のいうニューノーマルとは、「景気が回復しても元通りの経済水準にはならない」というものだという。そして、マイクロソフトのようにニューノーマルを見据えた経営計画を立てる企業が相次いでいるというのが記事の概要だ。

「ニューノーマル」と同義で「ハーフエコノミー」という言葉も金融危機以降、頻繁に使われていた。

日経トレンディネットの記事「Q.ハーフエコノミーって何?・今日の知識」によると、ハーフエコノミーとは、市場における需要が半分程度の規模になった経済のことというらしい。「ハーフ」が状態を表わしていたのに対して、それがいよいよ「ノーマルなんだぜ」と、経済活動が盛んで消費も活発だった「若き日」にはもう「元には戻れない」んだぜ、ってことをバルマー氏は力説したわけだ。

早晩「縮む」運命だったのは確か

「冗談じゃない」と言いたいところであるが、それが現実である。さらに考えれば、日本市場は少子高齢化で確実に「縮む」市場だ。今年の東京モーターショーで海外勢が3社しか出展せず、こぞって中国に行ってしまった寂しさを考えれば、放っておいても「ハーフ」になったのは想像に難くない。自動車関連の寂しさ加減は枚挙にいとまがないけれど、こんな動きもあった。

「現代自、中国に新工場日本では乗用車販売から撤退」(日経ネット2009年11月28日)

01年の参入以来不振が続く日本の乗用車販売からは撤退するという。確かに現代のクルマは売れてなかったと思うけど、それ以上に日本市場がオイシクナイのだろう。

少し日にちを遡るとこんなことを言っている人もいる。

『「日本は普通の市場になった」ルイ・ヴィトンCEOに聞く』(日経ビジネスオンライン2009年11月25日)

これまでの日本は世界の流れとは一線を画した少し特殊な市場だった。ルイ・ヴィトンに関しても日本の店舗は客数が多すぎたと言えるほどだ。日本もようやく普通の高級品市場になったということだろうという。昨年末に銀座への出店を早々に断念して、その代わりにGAPが入店することになったというニュースも記憶に新しい。

その銀座も、昨秋のH&M銀座店の大行列に始まり、ユニクロの大規模増床と、「高級ブランドの街」からすっかり「身の丈の街」に変身しているのである。まさにこの二つのキーワードを象徴するような街になりつつある。

つまり、「ハーフエコノミー」は恒常化して、生活者が「身の丈消費」を身に付けた「ニューノーマル」になり、それに対応できる企業だけが生き残れる。そんな構図が既に出来上がりつつあるのであるではないか。

バリューラインを超えろ

好調な商品を見ても、しっかり「ニューノーマル」対応している。分りやすいのが、今さらながら「餃子の王将」だろうか。

「人気のファミレス、ベスト3は「サイゼリヤ」「餃子の王将」そして……」(Garbagenews.com2009年12月01日)

マイボイスコムのネット調査の結果。1位は「ガスト」。ただし、「最もよく利用する」以上に「今年利用が増えた」の対比では、俄然「餃子の王将」の伸びが目立つ。

価格と価値が正比例した関係を「バリューライン」という。「安かろう・悪かろう」から「高くて・いいもの」の関係だ。「ニューノーマル」になった消費者の支持を集めるなら、そのバリューラインを超えなくてはならない。「王将」は価格が安くて、味は最高ではないものの結構イケルという、典型的な「グッドバリュー戦略」だ。ガストは「安いなり」の「エコノミー戦略」であくまでバリューライン上である。ゆえに、現状、「最もよく行く」店ではあるが、「今年利用が増えた」の割合が低くなっている。

■代替されない商品をメインに

「ニューノーマル」な暮らしの中では、当然消費をおさえられるところは切り捨てる。もしくは代替される。例えば、なにげなく毎日買って飲んでいるペットボトルの飲料。ミネラルウオーターなら100〜120円ぐらい。お茶や清涼飲料なら150円が相場だ。1日1〜2本買っているとして、日数をかけると、馬鹿にならない金額になることに、みんな気付いている。だから、水は水道水を浄水してマイボトルに入れる。お茶は茶葉やティーバックで淹れる。その結果が、ミネラルウオーター市場前年比6.1%減というデータに表れている。

『勝ち組「ゼロ飲料」、負け組「ミネラルウオーター」——2009年飲料市場)』(BusinessMedia誠12月3日)

「ゼロ飲料」はオイシイ(甘い)炭酸なのにゼロカロリーという理由で、今までカロリーを気にして茶系飲料を飲んでいた人を取り込んで成長した。その後押しもあるのだろうが、炭酸飲料市場が5.4%増と今も買われているのは、そもそも「炭酸は自分で作れないから」だろう。

■新たな価値で自社に取り込め

「代替されない」以外のキーワードを考えるなら、「新たな価値創造」だろう。

日経MJヒット商品番付にも登場し、以前このコラム上で「イケメン四天王が狙うのは誰だ?」と紹介した「資生堂UNOFOGBAR」。

『“ポストワックス”狙う「ウーノフォグバー」登場、ヘアスタイリング剤の勝者は?』(日経トレンディネット2009年11月19日)

妻夫木聡、小栗旬など豪華「イケメン四天王」のCMもさることながら、ワックスのベタベタさをなくした商品は画期的。発売2週間で200万本を出荷したという。その良さは使えば分かる。新開発した水溶性の整髪成分が配合されており、髪一本一本を互いに吸い付かせていて、髪の毛を束に固めないので、何度でも手直しできるのが特徴、霧状なので髪全体に均等にスプレーでき、ワックスの弱点であるべたつき感や重さ、洗髪のしにくさをカバーしたといいことずくめである。

ただし、ワックスほど強力じゃない。髪を大胆に「盛」ったり、「エアリー」(古いか?)にしたりはちょっとしにくい。ナチュラルっぽくなる。そのお手本のヘアスタイルを、CMで「イケメン四天王」がやっているのだ。つまり、スタイル提案をしつつ、新たな価値を訴求している。

■「反動的需要」を取り込め!

何事も行きすぎると「反動」が出る。健康ブームやメタボ撲滅。さらには昼食費の削減と、「食」はどんどん地味になっていく。でも、それも「ハーフ」だし「ニューノーマル」としては致し方ない。と、思えない人もしっかりいるのだ。

「1食1800kcal越えも!“あぶら料理専門”レシピ本発売)」(東京ウォーカー11月27日)

本の中身は、「ガーリック&バターしょうゆステーキontheライス」や「満腹マヨ玉ツナグラタン」、「ミックスフライソースカツ丼」に「羽付きラード餃子」など、全ページ、バターやラード、マヨネーズ、生クリームなどをた〜っぷりと使った“高カロリーメニュー”が並ぶという。

需要があるから、本にまでなる。例えば、都内では「全席喫煙可」の喫茶店などが人気を集めているのも一例だ。マイノリティー需要を取り込むことも、この時代の生き残りには重要である。

実は今回のネタは、ここ1週間の間にネット上に掲載された記事を集めたものだ。それを、「ハーフエコノミー」と「ニューノーマル」というフィルターで見たのである。売れる商品、顧客が集まる商売は、きちんと時流をとらえている。今回紹介した例はほんの一部にすぎないが、「ハーフ」を前提にした「ニューノーマル」な戦略が求められているのは、間違いない。

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