資生堂「新しく深みのある価値を発見し、美しい生活文化を創造します」 

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■資生堂の企業理念

企業使命・事業領域
私たちは、多くの人々との出会いを通じて、
新しく深みのある価値を発見し、
美しい生活文化を創造します

行動規範
1.お客さまの喜びをめざそう
2.形式にとらわれず結果を求めよう
3.本音で語りあおう
4.広く深く考え、大胆に挑戦しよう
5.感謝の心で行動しよう

化粧品ナンバー1企業

資生堂は、わが国を代表する化粧品メーカーであり、国内トップ、世界でも第4位の売上げ(連結で約7000億円)を誇る。近年では「TSUBAKI」ブランドによるヘアケア商品分野での躍進も記憶に新しい。

「資生」は、もともと、中国の古典である『易経』の中の一節「至哉坤元萬物資生」(大地の徳はなんと素晴らしいものであろうか、すべてのものはここから生まれる)に由来する。大地から得られるものを融合して新たな価値を創出していきたいとの創業者の願いが込められているという。

創業からしばらくは育毛剤など医薬品の製造販売をメインとしていたが、徐々に化粧品に軸足を移し、現在では売上げの大部分を化粧品あるいはスキンケア、ヘアケア商品などが占めている。

資生堂の顧客は言うまでもなく、圧倒的に女性が多い。充実した販売網を全国に張り巡らし、そこでビューティコンサルタント(BC)と呼ばれる美容部員が接客し、顧客にあった商品を提案するというスタイルで圧倒的なシェアと高いブランドイメージを築いてきた。

ミッションから生まれたコーポレートメッセージ「一瞬も一生も美しく」

圧倒的なブランド力を持つ資生堂ではあったが、現場レベルではさまざまな懸念事項があった。そうした中、現社長の前田新造氏が、2005年に社長に就任してすぐに着手したのが、「メガブランド戦略」そして「現場からの改革」である(詳細はGLOBIS.JPの記事(リンク:「資生堂社長・前田新造氏—魅力ある人で組織を埋め尽くす」参照)。そして、それと同時に打ち出したのが、「一瞬も一生も美しく」というコーポレートメッセージであった。

筆者は当時、このコーポレートメッセージを見て、「資生堂はものすごく原点に回帰してフォーカスしたな」という印象を持つと同時に、これは内外に対するメッセージだ、という感想を持った。

このメッセージは、単なる顧客への価値提案ではなく、内に対して、「美」を仕事にできることの幸福感を伝えようとしているように感じたからである(前回)、公文教育研究会を取り上げた際、「教育を仕事とできる喜び」について書いたが、それに似た感覚である)。

こうしたメッセージは、中途半端な実績や姿勢の企業には出しえない。長年の実績から来る自信、鋭い顧客洞察、そして従業員に対する信頼があって初めて出しえるものである。言い変えれば、「美」を事業領域、企業使命と捉えている会社だからこそ満を持して出せたコミットメントと感じたのである。

女性が「美しく」生きられる社会を目指す

特に、「一瞬も一生も」という部分に、同社の並々ならぬ意欲が込められている。当時のプレスリリースなどを読むと、「働く女性が増え、様々な生き方が生まれるなかで、女性は今まで以上に『美しくあること』に関心を持っている。それに応えたい」あるいは、「『美しい』とは、生命力があふれていること。一瞬の美しさが、永遠であるようにと願う女性の期待に応えたい」といった趣旨のことが書かれている。

こうしたリリースの文面からもわかるように、資生堂がコミットしているのは、より多くの女性に「美」を提供することであり、同時に「生き生きした気持ち」を提供することである。では、それをどう実現していくのか。

資生堂は、女性の活用・登用が進んでいる会社としても有名である。しかも、働く母親の比率が高い。リクルートが公開している「就職ブランド調査2008」によれば、「性別に関係なく、従業員が活躍できる企業」の項目で、2位のベネッセコーポレーションに300票以上の差をつけ、圧倒的1位となっている。

「一瞬も一生も美しく」を顧客に提供するためには、社員や契約社員である彼女らがまず「一瞬も一生も美しく」なくてはならない。それが実現できないところで顧客に価値提供しようとしても難しいだろうし、空しい。「櫂より始めよ」ではないが、内部の女性が生き生きと働ける場を作ってこそ、顧客にも生き生きを提供できるのである。

「一瞬も一生も美しく」を掲げた以上、資生堂は、ますますダイバーシティを高め、女性を活用しなくてはならない。それがグッドサイクルをまわし、顧客と従業員の双方の満足度を高めるからである。チャレンジングな仕事であろうが、だからこそコーポレートメッセージとして発信し、内外に、自社のコミットメントとして伝えたのではないかと推察される。

男性の美はどうなる?

ところで、「美」というとどうしても女性に目が行きがちであるが、男性の美をどのように考えればいいのだろうか。「生き生きと輝いている」という視点自体は女性と同様であるだろうから、女性の場合と同じアナロジーは使えそうだ。しかし、「お化粧で自分らしさを表現」というのは、当面はなかなか受け入れられないだろう。では、それはギリシア彫刻のような逞しさなのだろうか。ありえない結論ではないが、どうもありきたりだ。

筆者は、ここに資生堂の次なるチャレンジがあると考えている。世の中の半数は男性である。あらゆる人に「一瞬も一生も美しく」を実現できたときに、資生堂の企業理念はさらに実現に近づくのではないだろうか。

実際、行動規範の2つ目から4つ目はこう述べている。

2.形式にとらわれず結果を求めよう
3.本音で語りあおう
4.広く深く考え、大胆に挑戦しよう

戦略論、コアコンピタンスの議論も絡んできて非常に難しい話ではあるが、個人的には、今後資生堂が社内外の男性に向けて、「美」というキーワードを立てながら、どのような価値を提供していくのか、非常に関心を持っている。

欲張りかもしれないが、ぜひ、資生堂ならではの「男性の美しさ」を提案してもらいたい。そうした社会が実現するとすれば、なんと愉快なことか、と思わずにはいられないからである。

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