イケメン四天王が狙うのは誰だ?資生堂「unoFOGBAR」のターゲット 

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クールな商品をクールなイケメンがクールに紹介

妻夫木聡・瑛太・三浦春馬・小栗旬というイケメン四天王がCMで活躍する新発売のスタイリング剤、unoFOGBAR(フォグバー)。この商品の販売促進(Promotion)を中心としたマーケティング・ミックスが実によくできている。

髪を固めずにまとめる、全く新しいジャンルの霧状スタイリング剤だ。資生堂が開発した新整髪成分を使用しており、ワックスなどと違い、まったくべとつかず、「さりげない」ヘアスタイルを実現できるというのが特徴という。8月21日に、発売された。

商品のターゲットは恐らく20代前半がメインだとすれば、このCMが往年のビートルズへの見事なオマージュになっているのは分らないかもしれない。だが、それを知らなくともスタイリッシュな映像には間違いなく目を引きつけられるはずだ。惜しげもなくタレントを一つのCMに投入するのがお家芸ともなっている資生堂ではあるが、この4人が集合しているのは何とも豪華で目が離せない。

まずはJIJIPRESSがYoutubeにアップしている「四天王の会見の模様とCM」を見てほしい。

消費者の購買決定プロセスを説明するモデルであるAIDMAで考えると、最初のAttention(注意喚起)はバッチリだ。

「ワックスにさよなら」という、製品(Product)の本質を突いたコピーもいい。つまるところ、男性がヘアスタイルを気にするようになったここ四半世紀のスタイリング剤は、髪のホールド感とサラサラ感、そして近年はそこにいかに動きを出すかにのチャレンジである。

ヘアジェルはホールド感抜群であるが直線的に固まってしまう。ムースは自然な仕上がりだがホールド感が弱い。スプレーは髪全体が面で固まってしまう。

そんな不満を解消すべく、数年前に登場したのがワックスだ。よく伸びる粘着性の素材を髪になじませれば、適度に動きを付けてしっかりホールドできる。しかも、何度でも手ぐしでスタイルを直すこともできる。しかし、「あのベタベタ感が嫌だ」と感じる男子も多かったことだろう。

「シュッシュッ」という擬音でスプレーよりも大まかな霧を噴き出す様を表現し、イケメンたちが、サラサラ感を残しつつ、自由な形にしっかりホールドした髪を何度でも直せる様子を演じる。「おっ、よさそうかも」と思わせる、AIDMAのInterest(興味喚起)もバッチリである。

この商品の販売促進にはWebサイトにかなり力が入れられている。新しい使い方と製品特性を理解させるのが欠かせない商品であるため、それをしっかり伝えるために、ヘアスタイリストが実演したり、使い勝手の良さを語ったりしている。興味を持たせてから、実際に「これなら欲しい」と思わせるAIDMAのDesire(欲求喚起)への橋渡しをしっかり担っているのだ。

Webサイトには自分の顔の画像を撮影してアップすると、はめ込み合成で自分が主人公になるオリジナルCMを作れるスペシャルサイトがある。作ったCM動画をメールで人に知らせて共有することもできる。ウェブサイトを訪れたユーザーを、知人や仲間内への情報発信者にすれば、そのユーザーはもちろん、口コミを受けた人たちも、もはや商品を忘れない。AIDMAのMemory(記憶)達成である。やがて店頭で四天王がバッチリ映ったキャンペーン棚を目にし、AIDMAのAction(購買)に至る。

非常に良くできた製品(Product)を、優れた販売促進(Promotion)が後押しするという構造であるが、さらにそれ以前にターゲティングの絶妙さがWebサイトでよくわかる。マーケティング・プロセスでは、4Pと呼ばれるマーケティング・ミックスの前提となるターゲットの選定が重要になってくる。この商品は一体、誰に売ろうとしているのか。本当に若い男子だけなのか。

イケメンはジェンダーを超える?

ウェブサイト上には、一見男性向けであるこの商品が、女性が使用するとどんなスタイリングに使えるかというコンテンツがしっかり存在しているのである。

この製品、メインターゲットは男性であろう。しかし、明確にサブターゲットとして女性を設定している、つまり「ターゲット2倍化作戦」をとっているのではないか。しっかりスタイルが決められて、しかも動きが出せて、何度でも直せるという製品特性は、確かに女性のスタイリングにも最適だ。

女性自らが認知して、試して、購入するというパターンももちろんあるだろう。だが、それ以上に男性から、女性から、相互にオススメが発生するように設計がなされているのではないかというのが筆者の仮説だ。

イケメン四天王のCMで男性、女性双方のAttentionを獲得しておく。そこにWebサイトで製品にInterestを持った男性から「これ、いいかも!」と紹介させるというコミュニケーション。オリジナルCM動画も「オレ、こんなの作ったから見てみて!」と男性から女性へアプローチさせるのにピッタリなツールとして仕掛けているとも考えられる。勧められた女性もCMで認知しているし、店頭で見てみれば、赤・白・水色と3タイプのきれいな商品パッケージは魅力的に映る。

商品に触れたブログやネット上の書き込みでは、「"女性の方もどうぞ"とのことで私が使います」「POPを見て衝動買い。女性もいけそうです」などのコメントが寄せられており、女性たちの間にも浸透していることがうかがえる。

反対に、イケメンたちのファンである女性たちは、「ブッキーや旬が使っているこれを彼氏にも使ってほしい」と、男性に勧めたり、強引にプレゼントしたりすることだろう。CMで商品を認知して気になっていた男性は、「そんなら使ってみるか。彼女も喜ぶし」となる。

実際に妻夫木聡や小栗旬などのファンブログをのぞいてみると、「CMがかっこよくて買ってしまいました。彼氏にプレゼントしちゃいます」「これで息子も妻夫木君になれるかも」などと、女性→男性のコミュニケーションは駆動していることが確認できる。

男性と女性の双方で話題になれば、コミュニケーションの効率は飛躍的に上がる。

今回はワックスとは別の整髪剤を求めていた若い男性のニーズギャップを解消すべく生まれた商品だが、マーケティング部隊はそこでは止まらなかったのだろう。さらなるターゲットを拡大することを考えた。「女性も取り込めれば、単純な話、最大、ターゲットは2倍になる」と。

ターゲティング→ポジショニング→マーケティング・ミックスと一通り完成させれば終わり、ではない。貪欲に、もっと狙えるターゲットはないかと考えること、そしてターゲットをいかに巻き込むか、コミュニケーションを細かく設計していくことの重要性を、資生堂マーケティングチームは教えてくれている。

筆者も愛娘からプレゼントされたら、思わず使ってしまうだろう。「お父さんも旬くんみたいになって」って。いや、照れるな〜。髪をイケメンっぽくセットしたら、オリジナル動画を作って娘に送ってやろうか。

新橋の片隅で妄想にふける筆者であった……。

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