最も効果的な打ち手を選び実行する 

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“大きな流れ”を俯瞰し、広く打ち手を焙り出す

前回は、営業力強化をテーマに、次のようなシチュエーションを想定し、「もし、あなたが主人公の営業部長だとしたら、この“新規向けの営業力向上”のために、何をするか?」という問いを立て、考えていきました。

あなたは新しく産業用システムの開発・販売会社の営業部長に就任した。この事業部はここ数年、売上が低迷しており、営業力強化のための異動であることは誰の目にも明らかだ。扱う商品は高額かつ複雑なものが多く、顧客によって求めるスペックも異なり、顧客に合わせてカスタマイズすることも多い。このため通常、営業マンが何度も足を運び、詳細な商品説明・提案をすることが必要となっている。あなたは営業部長として、特に「新規顧客獲得に資する営業力の向上策」を打ち出したい。

そして、こうしたことを考える際の第一ステップとして、“大きな流れ”を俯瞰することの重要性について、ご説明しました。その結果として最初に作成したのが下の図です。打ち手が思いつきの範囲に留まってしまわぬよう、まずは「営業とは何をする営みなのか」ということを大枠で捉え、そこからゼロベースで考えてみるというのが大切なポイントでした。

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そのうえで前回は、4段階に大別した、営業にかかるプロセスのうち3つについて、具体的な打ち手を洗い出しました。ただ、3段階目の「受注に結びつくような効果的な提案を行う」という部分に関しては、読者の皆さんに考えていただくべく、あえて例を示しませんでした。

今回は、この話から始めましょう。前回に引き続き、このステップでも、「効果的な提案をする」というのは、どんな営みを含むことなのかを俯瞰してみることが重要です。その頭の使い方を怠ると、「きれいなプレゼン資料を作る」といった小手先のテクニックに走りがちになり、発想がなかなか広がってはいきません。

では、どう俯瞰するのか?まずは「伝える」シーンを具体的に考えてみましょう。伝えるためには、「伝える側」と「聞いてくれる側」が最低限、必要ですね。そして「伝える日時」が設定されている必要があり、「伝える内容」が作られていて・・・。そんな風に実際の提案の場面を思い浮かべながら、何が必要かと考えていくうちに、「効果的な提案をする」という営みは、「何を伝えるか」という提案の中身そのものに係る話と、それを「どう伝えるか」という手法に係る話という、二つの大きな方向性に分解されるイメージが湧いてきたのではないでしょうか。

ちなみに、このように、とある場面を具体的にイメージすることが、“抜け”や“漏れ”のない思考に役立つことがよくあります。有益なテクニックとして是非、使ってみてください。

さて、そうしてできたのが下の図です。一般的に、すぐに思いつきがちな「きれいなプレゼン資料を作る」などの「どう伝えるか」に関わる打ち手以外にも、かなりのオプションを挙げられたことが分かるでしょう。

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「どう伝えるか」についても、工夫の余地が大きいように思います。例えばタイミングです。BtoBの営業の基本中の基本ですが、あなたは、どれだけ正確に顧客の予算策定時期を理解しているでしょうか。また、どれだけ正確に予算決定上のキーパーソンを押えているでしょうか。そしてその人たちの異動のサイクルを把握しているでしょうか。さらにそれらの情報が営業担当者個別のノウハウにならず組織として共有もしくは引き継がれているでしょうか。

こんなことがタイミングの良い営業につながっていくことは言うまでもありませんが、疎かにされがちであることもまた事実ではないかと思います。

なお、「どう伝えるか」という部分の分解に関しては、下の表のように「5W2H」を使って行うのも、“抜け”“漏れ”や“ダブり”なく検討する有用なやり方ですね。このように古くからある、誰でも知っている概念が、実はビジネスの場で非常に有効であるという例は少なくありません。

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評価指標を立て、定量的に施策を選ぶ

最後に、これまでに満遍なく挙げてきた打ち手の中から、どれを選択して実施するかという峻別の方法に話を進めましょう。読者の皆さんは、数々考え得る施策を、どのような基準で取捨選択しているでしょうか。

企業研修の場などで、よく耳にするのは、「オプションまでは色々考えて出すものの、結局、最後は“エイヤ”で決めている」という話です。でも、せっかく分解して色々な施策を立案したのですから、できるだけ効果の高いものを選び実行したいところです。今までの検討もこのためにやってきたわけですから。

では、どうやって選ぶのでしょうか。まず、当然ながら、しっかりと施策を「評価」しなければなりません。私からは例えば、以下のような表を作ってみることをお勧めします。期待できる「効果」や結果が出てくるまでにかかる「時間」などの評価軸を設定し、さらに個々の評価軸について重み付けをして、それぞれのオプションについて、評価を数値化してみるのです。

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このような評価をして、施策を選択している企業はあまり多くはないかもしれませんね。

無論、この表にも色々と欠陥はあります。例えば、こんな疑問を持たれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。「◎と○と△と×はどうやって決めるの?」「40、30、30と書いてある“優先順位・重み付け”の合理性はあるの?」など。

ただ、こんな疑問については、以下のように考えてみたらいかがでしょうか。「それでも、いきなり当て推量で、何の根拠もなく『私は、Aの顧客ニーズにあった商品の開発を技術部に依頼するのが良いと思う』などと話すよりは、チーム全体の議論がしやすくなるのではなかろうか」と。

私は、施策の評価には、「得られる効果の高いものを選ぶ」という以外に、もう一つ、とても重要な役割があると考えています。それは、「施策を実行するメンバーの納得度を上げる」ということです。

分解して考えた施策の評価をする際、可能な限り実行するメンバーを含めて議論するということが、非常に大切です。もし関係者の中で意見が合わない場合には、そこを調整しながら施策を選ぶべきなのです。例えば先に挙げた。「◎と○と△と×はどうやって決めるの?」というような「問い」について健全な議論をすることで、それを実行する人々が、自然と自分自身の問題として捉えるようになり、また徐々にやる気を高めてくれるはずです。

ちなみに、研修やスクールで講師をしていると、「私は今まで勘だけで生きてきたので、ロジックを学びたいと思います」というような発言をされる方が、相当数いらっしゃいます。そんな時、私は「勘は是非、大切にしてください」と言っています。ただ、勘というのは当て推量とは異なります。当て推量というのは、何も考えていない状態ででてくるものであり、私の言う勘は、相当量の思考を投入したが、論理的な解が得られない、でも何かの拍子に、こっちが良いと「感じる」といった世界の話です。棋士の羽生善治名人なども同じようなことを仰っていますが、相当量の思考と論理の詰めの果てに出てくる勘は、是非、大切にしていただければと思います。

少々脱線しました。話を戻し、もう一つ、この段階で深めて欲しい議論について説明しましょう。それは評価軸そのものを何にするかということです。この表では、「効果」「時間」「コスト」としてありますが、これら以外にも色々考えられると思います。例えば、システムの話であれば、「セキュリティ」などが重要でしょう。また、素材・材料であれば「安定供給」などがキーになるでしょう。では、それをどうやって選択するのかが重要ですね。いたずらに評価軸を増やしても混乱するだけです。

例えば、電機メーカーの資材担当になったつもりで考えてみましょうか。素材・材料メーカーから原材料を購入する際、あなたなら何を重要視するでしょうか。仮に日本のメーカーから、一般的な材料を購入するという前提であれば、それほど「製品特性」(つまり性能、品質など)には違いがないということが言えそうです。そうなると、「価格」であったり、「納期」であったり、「安定供給性」を重視するはずですね。逆に言えば、素材・材料メーカーにとっては、この「価格」や「納期」、「安定供給」は、安易に犠牲にしてはならないポイントとなってきます。

つまり、「顧客の重要な購買要因(keybuyingfactor)」の裏返しが、「あなた自身がいる業界の主要な成功要因(keysuccessfactor)」になる、ということが評価軸を考える一つのヒントとなるのではないでしょうか。要は、様々な施策を選択する時の評価基準は、第1回目に議論した業界の分析結果と整合している必要があるわけです。経営にとって重要なことは、このように大枠と細部の整合性と一貫性であることをしっかり認識しておいていただければと思います。

4回にわたり、しっかり考えながら営業をまわしていくということについて見てきました。「営業は一日にして成らず」だと思います。小さいことの積み上げが大きな成果につながるものです。神は細部に宿るという気持ちで、しっかり考え、考え切り、この不況の時代に良い結果を生むべく頑張りましょう。

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