新入社員「ハチロク世代」に秘められたゼロ成長時代の未来とは? 

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@IT自分戦略研究所というサイトの「ハチロク世代がやってくる」という特集の記事によると、「ナナロク世代」とは、1976年前後に生まれたWeb系企業の起業家や技術者で、mixiの笠原健治氏、はてなの近藤淳也氏、GREEの田中良和氏、paperboy&co.の家入一真氏、DeNAの川崎修平氏、SixApartの宮川達彦氏、ニワンゴのひろゆき(西村博之)氏などがそれに当たるという。

「ハチロク世代」とは、それから10年後の1986年前後に生まれた世代を指す。小学校の前半には「Windows95」が発売され、「Yahoo!Japan」がスタートする。インターネットの普及とともに自我を目覚めさせて行った世代なのである。

中学校に入学に合わせてNTTドコモの「iモード」がスタートし、携帯電話の文化が本格的に花開く。そして、中学〜高校生時代には、2ちゃんねる、Google、Amazon、Winnyなど、インターネットの清濁併せのむ文化に「ハマった」者たちをこの世代は内包する。

そして、大学生になる(2005年以降)と、いわゆる「Web2.0」の時代を迎える。mixiやGREEといったSNS、YouTubeなどの動画共有サイトなどを、大学生である彼らは享受してきたことになる。

まさしく、「Web文化とともに育った」のが「ハチロク世代」。

「下宿しているアパートに黒電話をやっとこ引けたのが大学4年生の時だった」なんてエピソードを語るような私たち世代とは、コミュニケーションを考える前提が、まったく違うと考えた方が良い。

そんな「ハチロク世代」が最近、やらかしてくれた素敵な事件がある。ネット上では、少し話題になっているのでご紹介する。そこには、おっさんから見ても羨ましい「時間感覚」と「狂気」を感じる。ビジネスの未来すら、垣間見える。

ハチクロ世代が起こした奇跡とは……

「ハチロク世代」のバイブルは、2年程前に話題になった『ウェブ進化論本当の大変化はこれから始まる』(筑摩書房)。その著者である梅田望夫さんの新刊『シリコンバレーから将棋を観る-羽生善治と現代』(中央公論新社)に感銘を受けた東大法学部3年の学生が、はてな上の日記「日本にもシリコンバレーを」で、梅田氏が自身のブログに記した、「本書の全部または一部を、英語はもちろん中国語でも韓国語でもスペイン語でもフランス語でも、どなたが何語に翻訳してウェブにアップすることも自由、とします(許諾の連絡も不要です)」という呼びかけに応えたのだ。

それならやるっきゃないですね……ということで、日記上で有志を募り、みんなでこの著作を英語に翻訳してしまおうという試み、『みんなで丸ごと英訳プロジェクト』がスタートした。始まったのは、今年のゴールデンウィーク中の4月29日のことである。

すると……な、なんと……

5月5日には、全訳が終わってしまったのだ。

未熟な英訳であると自認した上で、公開に踏み切っている。このスピード感は、どうだろう。このポジティブさは、どうだろう。感服だ。

翻訳を終えた5月7日のサイト上には、こんなことが書かれている。

『まず分かっていただきたいのが、メンバーのほとんどが海外で教育を受けたことがない人であるということ。また、メイン翻訳者の平均年齢は21歳くらいであり、これまでに翻訳の経験が皆無なこと。それでも彼らは、少しでもこのプロジェクトの役に立ちたいと思い、手を挙げてくれたのです。そして、自分の英語力のなさに愕然としながらもしっかりと与えられた章を訳し切りました』

「もっと質を高めてからアップしたらどうか」との意見に対してはこう応えている。

『僕たちは日本のウェブを明るくしたいんです。揚げ足取りのネガティブなウェブから高め合いのポジティブなウェブへ。ここまで当プロジェクトがやってきたのは、ポジティブな風を少しでも吹き込めるようにするための土台作りです。もう一回言います、「土台作り」です。所詮「土台」です。でも土台がなければ建物は立たない。だから僕たちはゴールデンウィークを丸々費やして急いで土台を作った。高め合いのポジティブなウェブ(WisdomofCrowds)、という「建物」を立てるために。プロジェクトメンバーだけでは数が少なすぎで、到底「建物」は立てられない。だからせめてその土台となる公開用の仮の翻訳を急いで仕上げたかった』

志で繋がるゆるやかな連帯

この動きは、梅田氏も随時チェック&支援されていて、ご自身のブログ「MyLifeBetweenSiliconValleyandJapan」内で次のように賞賛している。

「日本語圏ウェブ空間を、自らの手でよい良いものにしていこう、と思って、新しい価値観をもって行動する若い人たちのスピリッツとリーダーシップのほうがうんと素晴らしいし、個人的にも嬉しい。それにしても凄いエネルギーとスピードである」

「狂った」感覚をメンバーみんなで共有し、尋常でないスピード感を楽しみながら、コトを起こしてしまう。ひとつの「志」に、世界に散らばる個の「有志」が集合する。そして、そのプロジェクトが終われば、個々に次へと動く。

「志」で繋がれたゆるやかな連帯こそ、優秀な『ハチロク世代』の理想とする組織形態なのであろう。

「Web2.0」以降の「集合知」に対する考えたかは、さらに、進化している。こうやって独立系コンサルがネット上のビジネスメディアに寄稿し、御託を並べるという在り方は、「ハチロク世代」にとっては、さぞかし古めかしく見えるのではないか……。

ビジネスメディアの場には、合理性はあるが、「狂気」がない。過去の時間はあるが、飛び込むべき「時間」がない。経済は成長するモノだと信じ、老いは嫌だと抵抗し続けている。ビジネスメディアで書かれている多くの記事は、ゼロ成長を経験したことのない我々おっさんが書いているのだ。

閉塞感漂う21世紀の入り口で、我々おっさんたちが明確なビジョンや希望を描けない中、「ハチロク世代」の若者達が、未来像を提示してくれている気がする。

英訳プロジェクトは、次々と人を巻き込み、ブラッシュアップが続いている。発起人はこんな言葉で、このプロジェクトを総括している。

『「日本はもう立ち直れないと思う」なんて言われて悔しいじゃないですか。僕はまだ立ち直れないなんて信じたくない。WisdomofCrowdsの風が吹き荒れて日本を救う、そんな日が来ることを信じたい』

こういう優秀な『ハチロク世代』が入って来られる魅力ある企業=器を作るためには、我々おっさん達にもせめて、既成の価値観をぶっ壊す「狂気」が必要ではないか。深く、深く、考えさせられた。

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