“ロシアの熊”は元気を取り戻すことができるのか? 

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プーチン大統領時代に急速に国力を回復させてきたロシア。その原動力となったのは、石油や天然ガスの値上がりであった。そしてロシアは、天然資源を国営会社でほぼ独占することで、統制力を強めてきた。1998年にはロシアはルーブル危機に見舞われ、デフォルト(債務不履行)を起こした。ソ連が崩壊して以来、最悪の経済危機に陥ったわけだが、そこから石油相場の値上がりという天佑(てんゆう)に恵まれて、ロシアは蘇ったのだ。

しかしそのロシアも今度は原油相場の値下がりによって財政が苦しくなり、さらに金融危機の影響を受けている。こうなってくると、何かと強権的なスタイルをとりがちなロシアで気になるのは、周辺諸国の動きだ。

気になるグルジアの動き

その1つがグルジアである。2008年、北京オリンピックのさなかにグルジアとロシアの間で軍事衝突が起きたのは記憶に新しい。この戦争は、グルジアの領内にある南オセチア(ロシア人の比率が高く、グルジアからの独立を求めている)に、グルジア軍が侵攻したことで始まった。そのときロシア軍はロシア領内にとどまっていたわけではない。ロシア人保護を名目に南オセチアに駐留していた。そんな状況で、ロシア軍に比べて装備の劣るグルジア軍をなぜ南オセチアに侵攻させたのか、サーカシビリ大統領の判断に疑問が残る。侵攻の直前、米国務省や当時のライス国務長官は、軽挙を慎むよう何度もサーカシビリ大統領を説得しようとしたとも伝えられた。

フランスの仲介で停戦には漕ぎ着けたものの、ロシアとグルジアの国交は断絶したまま。ロシアに出稼ぎに行ったグルジア人は、国に戻っても仕事に就ける保証はなく、しかも戻れば2度とロシアに入ることができなくなるとあって、ロシアで苦しい境遇に追い込まれているというドキュメンタリーがNHKで放映されていた。

そうした状況を受けて、グルジア国内では反サーカシビリ勢力が勢いを強めている。4月9日には、グルジアの首都トビリシで野党連合が大規模な反政府集会を開催。一説では15万人、ワシントンポスト紙などによれば6万人が参加した(主催者側は10万人を集めて大統領の辞任を求めるとしていたため、それだけの参加者が集まるかどうかが1つの焦点という見方があったが、現在の段階ではその判断は微妙に難しい)。今後の焦点は、こうした大規模デモを大統領が辞任するまで続けられるかどうかである。

もちろんサーカシビリ大統領は「辞任しない」としているが、もともと大統領がロシアに対して強気だったのは、グルジアが西側の軍事同盟であるNATO(北大西洋条約機構)に加盟できると踏んでいたからだ。米国のブッシュ政権もそれを後押ししていた。東欧諸国がNATOに続々と加盟したため、ロシアは安全保障上、丸裸にされつつあった。「強いロシア」を目指すプーチン首相にとって、それは看過できない問題である。まして旧ソ連圏の国(ウクライナやグルジア)までNATOに加盟させるという米国の強硬姿勢には、裏庭どころか“玄関に土足で踏み込まれる”ような不快感を持っていたに違いない。

“ロシアの熊”は元気を取り戻すことができるのか?

しかし風向きは変わってきている。ロシアはアフガニスタンへの供給基地となっているキルギスタンの米軍基地貸与を止めさせた(米軍への貸与条件よりよい条件でロシア軍が借りた)。米軍はこのため基地を近々撤収せざるをえず、これによってアフガニスタンのNATO軍への重要な空の補給路が断たれることになった(それだけに陸路からの供給路にあたるパキスタンとの関係が米国にとっては重要度を増している)。少なくとも、これでロシアはアフガニスタンに関しても米国に対する交渉材料を得たことになる。

一方、金融危機から世界同時不況に陥っている現状では、西側諸国にロシアと事を構える余裕はあるまい。それに米国のオバマ政権は、ブッシュ政権とは違って、協調や対話を重視し、すでにロシアのメドベージェフ大統領とは核軍縮について一定の合意を見ている。そうした背景を考えれば、グルジアのサーカシビリ政権に対して、直接的なてこ入れをする可能性はほとんどあるまい。その意味でサーカシビリ政権は“風前の灯火”であることに間違いはなく、ポスト・サーカシビリへの影響力をどう保持するかで、プーチンと欧米が今後せめぎ合うことになる。

ただ欧州にとってグルジアの意味は小さくない。グルジアはカスピ海の油田から送られるパイプラインが通っている。その原油はトルコや地中海を通って欧州に輸送されているため、グルジアがロシアの影響下に入るということは、西側はエネルギーの元栓をロシアに握られることにつながるからだ。現に、2009年の初めはロシアとウクライナの天然ガス紛争に巻き込まれる形で、一部欧州への天然ガス供給がストップした。

ロシアは天然ガスでも石油でも大産出国であるだけに、欧州にとって“ロシアの熊”が元気を取り戻すことは不気味であるに違いない。

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