合意形成のステップで議論の全体像を掴む 

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合意形成のプロセスを考える

前回は、ビジネスにおける議論の目的を「アクションに向けての合意形成」と捉えました。では、合意が形成されるまでのプロセスはどうなっているのでしょうか?世の中には実に様々な議論のテーマがあり、そこで論じるべきことも多種多様です。ただ、ビジネスにおける議論の構造を抽象化して捉えると、一つのプロセスに落とし込むことができます。

ここではあえてプロセスの真ん中から考えてみましょう。ビジネスの議論で決められるものは、「この新商品を発売すべきか?」、「仕入先はA社にすべきか?B社にすべきか?」、「現在の人事制度を変更すべきか?」といった行動(アクションプラン)です。ここでは、はっきり意識されている場合、いない場合がありますが、要するに複数のオプション(代替案)からあるプランを選択する、ということが行われています。これを「アクションの選択と合意」としましょう。

では、組織としてあるアクションプランが決定すれば、即行動が起きるでしょうか?そうではありません。現実の世界でよくあるのは「アクションプランは合意したが、実行プランが合意されていない」というケースです。会議で「これをやろう!」と全会一致で盛り上がったにも係わらず、その後いつまでたっても誰も何も行動を始めない、といった状況です。こうしたことにならないためには、決めたアクションプランを実行するために、「誰が・いつ・何をするのか?」を決める必要があります。これを「実行プラン・コミットの確認・共有」と名づけましょう。

では、前に戻って、「アクションの選択の合意」が行われるためには、その前に何が合意されることが必要でしょうか?たとえばいきなり「これまでの制度を新しいものに変えたい」というアクションを提案されたら、聞き手は何を問いかけるでしょうか?それは当たり前ですが、「なぜそうするの?」という問いでしょう。これが理解・合意・納得されなければ、そもそもアクションを取る必要性を感じてもらえません。ここを「アクションの理由の共有・合意」と呼びます。

「合意形成のステップ」が議論の仕込みの肝

組織における意思決定、合意形成ということを考えると、実はこの前にもうひとつのステップがあります。

たとえば「今回の新製品のマーケティングプランについての議論」をするとしましょう。マーケティング部の担当者がチーム内で議論する場合、マーケティング部と営業部で議論をする場合、もしくは役員会で議論をする場合と、議論されることは同じではないはずです。これが「議論の場の目的の共有」です。

マーケティング部の担当者が議論し、マーケティング部としての案を作成することはできますが、たとえば営業部の協力を得る必要がある場合は、マーケティング部だけで最終的な意思決定はできないでしょう。「この会議では、何のために、何をどこまで決めることができるのか?そして決めるために必要不可欠な人は出席しているのか?」など、その場がどういう議論の場なのか?が理解・共有されている必要があります。ここを飛ばしてしまうと、「そもそもこの連絡会議は何のためにあるのか?」、「この話は本来役員会で決定すべきことだ」、「このプロジェクトで意見を出すのは良いですが、結果何をどこまで決めることができるのですか?」といった疑問が生じて議論が進まなくなってしまいます。

このように、ビジネスにおける議論は様々なものがありますが、結局は「場の目的の共有・合意」→「アクションの理由の共有・合意」→「アクションの選択と合意」→「実行プラン・コミットの確認・共有」という4段階の「合意形成のステップ」が原型になっており、そこを押さえることができれば良いということがわかります。この大きな枠組みを「合意形成のステップ」と呼び、「仕込み」の最も大きな骨格になります。

参加者の認識レベルに応じて合意済みのステップは省略

注意が必要なのは、議論が行われる場面で、この4つのステップ全てが常に順番どおりに議論されるとは限らないということです。たとえば制度変更について議論する際、すでに関係者が、「この制度はこのように問題がある。だから変えるべきだ」まで合意しているとすると、この部分は議論する必要はなく、「ではどのように制度を変えるか?→誰がどのように制度変更を実行するか?」が議論すべきことになります。当たり前ですが既に合意済みのステップは省略されるのです。

逆にたとえば「わが部の来年度の事業計画」を議論する場合、1回の会議で決められるでしょうか?おそらく無理でしょう。そうすると、何回かにわたって議論されることになります。たとえば「第1回:全社の方針の共有および部全体の課題の確認」「第2回:各担当の課題と対策案のレビュー」「第3回:様々な対策案の優先順位付け」・・・といった具合になるでしょう。このように、ある程度以上の大きな話であれば、それぞれ1回々々の議論の場においてはある部分まで到達し、段階的に議論を進めて最終結論に至る、ということが一般的です。

このように、「合意形成のステップ」のどこから議論を始めるのか?そしてどこまでの結論を導くのか?を考えていくことが議論の仕込みの出発点になります。次回はこの部分を更に考えてみたいと思います。

(本稿は、グロービス経営大学院のサイト上に2007年12月に掲載された内容を、再掲するものです。4月16日からは、いよいよ続編を開始の予定です。どうぞお楽しみに)

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