ウエッジシェアは本当に“最後の手段”なのか? 

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昨年末来、「製造業の派遣切り」が大きな問題として取り上げられています。ある番組では今こそ「ワークシェア」だけでなく「ウエッジシェア」を考えるべきであるという論調がありました。

「ウエッジシェア」とは賃金を減らし、多くの人で賃金をシェアすることで失業者を出さないようにしていくという考え方です。私自身この言葉を知らなかったのですが、実は日本企業はこの「ウエッジシェア」を今までにも多用してきているのでは、という印象を持ちました(今回はあくまでも何かの統計資料などで裏付けをとった話ではなく、私の実感によるものなので間違っているかもしれませんが、その前提で聞いていただきたいと思います)。

バブル崩壊と雇用・賃金体系の連環

振り返って、90年代前半のバブル崩壊以降、日本経済は金融不況に陥りました。

それ以前、高給で有名だったのは、銀行、保険、証券会社などであったと記憶しています。私の大学卒業時には優秀な学生はほとんど金融に就職するような状況でした。実際にメーカーに就職した私の給与と金融に就職した友人の給与を比較すると1.5〜1.7倍程度も友人の方が高かった記憶もあります。

しかしバブル崩壊後、金融機関は金融不況を乗り越えるために大幅な「ウエッジシェア」をしました。実際に友人からは「30代前半から給与は下がる一方」という話を聞いたこともあります。金融機関の事務職の派遣社員化が一気に増加したのもそのころ。つまり金融機関は90年代の金融不況を乗り越えるために、正社員の絞り込みと正社員の「ウエッジシェア」を行い、どうにかこの危機を乗り切ったのです。

一方で製造業は歴史的に給与が低い業界だったのですが、それが2000年初頭から大分、変わってきました。製造業でも一時のリストラからの転換で中途社員の採用を積極化したのです。この当時は人材紹介会社に言わせると「バブル期以上の売り手市場だった」とのこと。製造業は優秀な社員の採用や引き留めのために大幅に賃金を増やしていったのです。この当時の正社員賃金の源泉は現場や事務作業の派遣などの契約雇用化であったと考えられます。

現在、製造業の製造現場や事務職社員のほとんどは派遣、請負という契約形態の方です。これは90年代の初頭には全く考えられなかった。私が入社したころは「自動車会社で一番いいボーナスをもらうのは現場である」と言われ、それが当然だと思っていました。今は、全くそういう状況になっていないのです。

人件費での調整から支出の抜本的な構造改革へ

ここまで述べてきましたが、経済学的に言うと賃金は「下方硬直性」を持っていて一番下がりにくいものであると言われてきました。しかし私は実はそうではないのではないか、と思っています。実は一番手っ取り早く手が打てるのが賃金なのです。

日本企業はこの20年間に大きな構造改革を成し遂げてきたと言われていますが、実は、ことあるごとに一番手っ取り早い“調整弁”としてウエッジシェアを含む人件費を動かし続けてきただけだったのかもしれません。

私が危機感を抱いているのは、その一方で、外部への支出に対して目を向けている企業が多くはないことです。

外部への支出の抑制、無駄の排除は難しいものです。効果もいつ出てくるか計測しづらい。一時的な予算カットではなく、諸々の費用の妥当性や費用対効果を根本から検証し、企業文化として支出抑制を根付かせていく、このような活動は継続的であり、たいへん難しいのです。ですから、多くの企業は手っ取り早く費用が削減できる人件費で調整しようとするのではないか・・・。

しかし人件費の調整は、長い目で見たときには、人員構造面など多くの点からひずみを生み出します。今回、この経済不況の局面でどれだけ日本企業が人件費以外の支出の最適化に目を向け、手っ取り早い賃金調整から脱皮していくかに、私は注目しています。

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