両編集長が語る、ウェブ媒体の魅力 

Business Media誠×GLOBIS.JP
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記事の交換で読者の利便を拡大する

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そもそも、どのような経緯で「Business Media 誠」(以下、誠)と「GLOBIS.JP」の記事を交換することになったのでしょうか

吉岡綾乃(「Business Media 誠」編集長、写真右。以下、吉岡) ITmediaは、名前が示すとおりIT系の話題に強いウェブ媒体ですが、ビジネス系の話題をメインに扱うウェブサイトをやろうということで、2007年4月からスタートしたのが誠です。主な読者層は20~30歳代の働き盛りのビジネスパーソンで、そういった方々が読んで役に立つコンテンツを、ウェブで無償で提供しようというコンセプトで運営しています。  従来のビジネス誌よりも若いビジネスパーソンがターゲットですから、社会人大学(院)で学べるようなマーケティング論や経営学のイロハなどを紹介するコンテンツを提供したいという思いがありました。でも、そういうコンテンツをうちの編集部で作るのはなかなか難しいんです。そこで、うちで作っているコンテンツを提供する代わりに、そういった内容の上質なコンテンツをご提供いただける方はいないだろうか、と探していたところ、「Biz.ID」で記事を書いていただいている堀内浩二さんのお引き合わせでGLOBIS.JPさんと出会いました

加藤小也香(「GLOBIS.JP」編集長、写真左。以下、加藤) グロービスは、学校法人として経営大学院、株式会社として企業研修事業やベンチャーキャピタルなどを運営している組織ですが、堀内さんは、弊社スクールでクリティカル・シンキングの講師を務めていただいており、実は私はクラス受講生として知己を得ました。良いご縁に、本当に感謝しています。
吉岡さんのお話を聞きながら、私たちは、ちょうど逆のニーズを持っていたんだな、と再認識しました。
グロービスは人材育成を主軸としており、コンテンツの発信が専業ではありません。ただ、研修事業やベンチャー投資を通じ、経営にかかる知見は蓄積しており、それをスクールで学ぶ人たちに付加的に提供していこうという思いはありました。実際、講師を中心に執筆した『グロービスMBAシリーズ』などの書籍を通じて、発信はしてきたわけです。そして、それが幸いにして集客装置となり、受講生を呼んできてくれるという好循環がありました。しかし昨今の、本を読む人そのものが減っていく状況で、お客様になっていただきたいビジネスパーソンが、どんどんウェブに流れていってしまった。そこで、2006年8月に立ち上げたのがGLOBIS.JPです。  ただ、先に申し上げた通り私たちはメディア専業ではないので集客力に乏しい。ITmediaさんとの出会いによって、意識の高いビジネスパーソンの方々との出会いが開けると考えました。と同時に、どうしても理論の側から経営を語りがちな媒体に、ビジネスの現場からの生き生きとした情報をもたらすことができるとも思いました。誠は、そういう魅力的な記事をたくさん持っていらっしゃるメディアです。確かに集客も魅力ですが、なによりコンテンツそのものに魅力を感じています

お互いに補完できると

吉岡 そうですね。お互いのコンテンツを、お互いのサイトにはめ込んでいるわけですが、びっくりするくらいマッチしているので、密かに感動しています(笑)

加藤 本当にそうですね。いただいた記事が、私たちのサイトに昔からあったもののように、自然に溶け込んでいます。誠とGLOBIS.JPは、ビジネスモデルは違うけれど、来ていただきたいお客様の層は似ています。そして、コンテンツは、私たちが理論からビジネスの実務を見ているのに対し、誠は実務の側から理論に入っていっている感じでしょうか

具体的には、それぞれどのような記事を交換しているのですか

加藤 GLOBIS.JPからは、「財務で読む気になる数字」「小西賢明の『お客様を想え。』」「経営いろは」の3本に加え、近日中に「Global Perspectives」「それゆけ!カナモリさん」の2本が加わる予定です。いずれも実務家でありながら、経営学の教鞭を執る講師が執筆しているのが特徴で、「エイベックスと浜崎あゆみの関係をファイナンスのポートフォリオ理論から分析すると?」とか、「マックカフェ撤退の理由をマーケティングフレームワークのSTPで考えると?」というように、具体的な事例に引き付けて語る記事が中心です。編集サイドとしては、例えば件のエイベックスの記事は、音楽コンテンツ配信の「music.jp」を運営するエムティーアイのCFOに執筆いただくなど、机上の空論に終わらない内容を目指しています。

吉岡 誠からは、「藤田正美の時事日想」「郷好文の“うふふ”マーケティング」「嶋田淑之の『この人に逢いたい!』」の3本をご提供しています。藤田さんは経済誌記者のご出身で「ニューズウィーク日本版」の元編集長なので、ジャーナリスティックな視点が特徴。国際ニュースについて、切れ味鋭く解説して頂いています。郷さんの連載は、「~論」ではなく、エッセイのような切り口から商売の本質を考えていきましょう、というのが“郷さんらしさ”。同じマーケティングがテーマですが、GLOBIS.JPのマーケティング記事とはある意味対極的かもしれません。そして嶋田さんの連載は、会社など組織の中で、仕事を通して夢を実現するビジネスパーソンの生き方を丁寧に描くロングインタビューです。会社人だけでなく、元実務家の神社の神主さんや、温泉旅館の若女将など、さまざまな人が登場し、それぞれの立ち位置から“仕事”について語ります。誠のコンテンツ全般に言えることなのですが、身近な話題を切り口にして、もっと大きなこと、普遍的なことへと話をボトムアップさせる記事になるように心がけています。

掲載後にも多方向に成長を続けるウェブのコンテンツ

こんなに簡単に記事を交換するというのは、雑誌のような紙媒体にはなかなかできないことですよね

吉岡 そうですね。私は紙媒体出身なので、こういう体験は得るものが大きくて嬉しいです 加藤 版権とかタイムラグといった杓子定規の議論ではなく、「どうしたら、お互いにハッピーになれるか」という立ち位置からコンテンツの利用を考えられることが、とても前向きでいいですよね。私も紙媒体出身なので、凄くビックリしつつ楽しんでいます

紙媒体にないウェブの利点は、どんなことだと思われますか?

加藤 一つは、仕上がり的に80点のものでも、とにかく出して、お客様の評価を問えるところ・・・。こう言うと半端なものを作っているようですが(笑)、読み手に考える余地を残す作り方をすると、書き手と読み手が議論して、そのうちにコンテンツが膨らんでいくことが最近よくあるんです。私たちはGLOBIS.JPで育ったコンテンツを、いずれ書籍や講義に応用する、という考え方でやっているので、このプロセスは非常に魅力的に感じます。また、アクセス数などから読み手のコンテンツへの関心を、ある程度までは計測できますので、出版前に採算性を図る指標としても活用します

吉岡 誠では原則として紙媒体を出していないので、今のところ書籍のような形にはなっていないのですが、読者の反応を見ながら試行錯誤していけるというのは、ウェブならではだと思っています。はてなブックマークやブログからのトラックバックで、読者のコンテンツに対する反応や考えを見ることができるわけですが、それを読むことで書き手の刺激になることがあるんですよね

加藤 それは本当にそうですね

吉岡 そのフィードバックを取り入れながら、コンテンツを膨らましていかれる、というのはとても面白いと思っているんです。もし可能なら、私が書籍の編集者もやって、連載した記事を書籍化したいくらいなんです(笑)

加藤 よく分かります。グロービスには幸い書籍の編集を専門に行っているチームがあるので、ウェブの連載開始時から、そこの担当者が加わって出版に向けて協業したり、あと、カンファレンスやセミナーを運営するチームもあるのですが、そちらと一緒にコンテンツを作ってリアルとウェブの双方で発信したりと、1粒で2度も3度も楽しむことを意識しています

吉岡 それはいいですね!

加藤 メディア専業ではない会社なので、そこは“前例”などに捕われず色々、チャレンジできています

吉岡 誠としては、出版社と一緒に組んで動くのが現実的かもしれません。もちろん、グロービスさんの書籍チームと組ませていただければとても嬉しいですけど(笑)

加藤 私たちも出版機能は持っていませんので、あくまで著者として中身を作るまでの機能を担い、印刷やら書店営業やらといった出版の中核の部分は出版社さんに頼っています。今回の記事交換もそうですが、餅は餅屋というか、細かな機能別に適宜、柔軟に分業体制を組めるのがウェブ時代の面白いところですよね。得意分野を出し合って社会的価値をみんなで作るというか

吉岡 ウェブメディアはまだまだ発展途上だし、実験できるし、他のメディアとの組み方も色々な可能性があると思っています。さまざまなアライアンスを探りながら、面白いことをやっていきたいという気持ちは強くあります

ウェブの利点を生かし、サイトの価値を高める

吉岡 ウェブ専業媒体としてはウェブについて思うところはいくつかあって、ウェブの大きな三つの特徴として、一つに「速報性」、二つ目が「アーカイブされること」、三つ目が「ボリュームに制限がないこと」ではないかと思っています。ITmediaは従来、この三つを重視して育ってきた媒体なわけです。  でも誠は、これまでのITmediaの各チャンネルに比べると速報性は重視せず、その代わり読み物媒体に近くなっています。公開した記事を、責任を持ってアーカイブする。記事を消さないというのは、商業ウェブメディアとしての使命ではないかと思っています。URLひとつで、何年も前の記事にでも遡れる便利さは、ウェブならではの大きな利点ですから。  また、ボリュームに制限を付けないというのは、「はしょらない」という意志でもあります。記者が知り得たことのどの部分が、読者にとってのメリットになるか分からない。だから、読みにくくならない程度に、できるだけ1次ソースになれるよう、情報はできるだけ詳しく、たくさん書くことを心がけています。  エッセイとかコラムもそうですよね。考えができるだけまっすぐ伝わるように、はしょらないで丁寧に書く。ウェブ上にソースがあるものなら、リンクを張ったり引用したりしてソースを示す。そうすることで、記事を読んだ人にも一緒に考えてほしい、という気持ちがあるためです。誌面に制限がない、というウェブのメリットを、こういう形で生かしたい。

特に顕著だと思うのはインタビューです。紙面の都合があると、「30分話を聞いたけど、使うのは一言だけ、前後の文脈は無視」ということが起こり得ます。でもそれは、インタビューを受けてくれた方に対して失礼だし、こちらとしても、そういうことをしたいんじゃない。取材を受けてくれた人にも、読者に対しても、誠実であるということが、私にとっては「丁寧に詳しく書く」なんです。これは「誠」という名前に通じる部分でもあります。これが私の考えるウェブの良さです。新聞やテレビに対する特徴といえるかもしれません

誠の読者は、長い記事でもちゃんと最後まで読んでくれる人が多いそうですね

吉岡 そうですね。インターネットは能動的なメディアなので、それが「知りたい、読みたい」と思う内容ならば、丁寧に読んでくれるものだと思うんです

加藤 「アーカイブする責任」って大切ですよね。紙媒体をやっていた者からすると、そもそもバックナンバーを置いておけることが、感動的だった。コンテンツがデータベース化していって、時には他媒体のコンテンツとも相互に紐付きながら付加価値を高めていかれる。とりわけ、私たちが出しているような経営学関連のコンテンツは、即時性が求められない内容が多い分、長い時間、放っておいてもあまり陳腐化しないんです。以前、パソコン誌の編集をしていたとき、“読者が成長してしまう”ことが悩みの一つとしてありました。例えば「エクセルの使い方」についての連載講座を掲載するとして、例えば10回くらい進んだところで購読を始めた方は、その内容を「レベルが高すぎる」と感じます。では、初学者に向けて新たな連載講座を作ればいいかというと、それは昔からの(成長してしまった)ロイヤルティの高い読者にとっては「物足りない」内容となってしまう。こうして生じる読者間のレベル差をどう埋めるかが、常に課題でした。ところがウェブであれば、お客様がご自身の学ぶスピードに合わせて、バックナンバーから適切なものを選ぶことができる。「ウェブはスピード感」という一般的な感覚とは全く逆に、スローフードならぬスローコンテンツ化できる、そういう面白さを最近、感じ始めています。  それから、吉岡さんのお話を聞いているうちに私も、もう一つ、ウェブの利点に思い至りました。それは、すぐに多言語対応できるところ。これは嬉しかったです。ウェブは、紙媒体などと違ってチャネルが複雑ではない分、「バイリンガルにしよう」と思ったら、その瞬間から日英対応のメディアになれてしまう。グロービスは来年から英語のみで取得するMBAコースも開始するのですが、これに備えて記事の翻訳を一部、始めてみたんです。ただ、プロに翻訳料を払うほど余裕はないので、読者から翻訳ボランティアを募った。そうしたら、いきなり10名ほどのボランティアチームができてしまったんです。こうした、作り手と読み手の境界線の低さと、そうはいっても作り手がプロとして仕事の精度を上げていくことの両立。私がウェブを楽しんでいるのは、そうした部分にもあるかもしれません

吉岡 多言語化は面白そうですね。

加藤 まだ成長途上のメディアだからできることかもしれませんけどね・・・

吉岡 いやいや、うちもできれば出したい、中国語版とか(笑)

加藤 ビジネスモデルがどうこうとかいう以前に、まず、知らない土地を開拓に行こう!みたいな感覚を持てるんですよね。ウェブなら命がけで海を渡らなくても、全財産を投じなくても、グローバル展開できちゃうから(笑)

確かに紙媒体よりは、フットワークが軽いイメージがありますね

吉岡 やってみよう! と思ったら、すぐ動けるのはいいところですね

加藤 そう。小規模の投資で経験値を高められるので、若い編集者の教育効果などもあると思っています。

誠は、すごい勢いでいろんな企画が立ち上がりますよね。アンケート調査の記事とか、吉岡さんの人柄というか、パーソナルな香りもあって楽しい。紙媒体もそうですが、編集者のキャラクターが出ている媒体は愛されますよね。

ライバルと共存共栄できるウェブのユニークさ

おふたりのプロフィールを簡単にお聞きしたいのですが

加藤 新聞社の系列の出版社で、パソコン誌や経営情報誌の記者を10年やった後、グロービスに転職しました。こういう、知恵や人の溜まっている会社が“メディア化”したら面白いんじゃないかなー、と思っていました。年齢は吉岡さんと同じなんですよね、30歳代の半ばです

吉岡 はい。私はソフトバンクに入社して、「DOS/V magazine」というパソコン誌に6年くらいいました。パソコンやデジカメ、プリンタなど、パソコン誌で扱うような話題は一通り担当していたんですが、これからはウェブメディアをやってみたいなと考えて、グループ内で転職して、アイティメディアにやってきました。アイティメディアに来てから携帯電話の話題を担当する記者になりました。編集者から記者になったパターンですね

不景気の時代にバッチリ重なっていますよね

加藤 そうですね。どんどん媒体が休刊になって・・・。でも、恥ずかしながら当時は媒体の収益性にまで、きちんと意識が及んでいなかったので、ただただ取材に出られるのが嬉しいというか、毎日が“社会科見学”という感じで、あっという間でした

吉岡 入社したのがパソコン雑誌の絶頂期のちょっと後だったんです。雑誌がだんだん売れなくなって、読者がウェブに流れていくのを見ながら、雑誌を作っていました。「パソコン雑誌はどうしたら復活できるだろう?」って考えていたけれど、その答えが出せないうちに、ウェブメディアに移ったという思いはあります。

紙媒体で仕事をしたくて編集者になったわけだし、紙(雑誌)のいいところは知っている。でも、読者が紙からウェブに流れていくのを見ていたから、紙に比べてウェブは自由でいいな、という思いもありました

加藤 そうですね。雑誌からウェブに流れる、つまり、情報が無料になる、それってどういうことだろう、などと、メディア特性に意識をはせていたことが、今に活きている感じはあります

吉岡 今は、ウェブならではだ、と思っていろんなことを試せるのが楽しいですね

加藤 ポジティブですね! 私は紙媒体に未練もありますよ。紙、大好き(笑)

吉岡 正直に言うと、紙の編集者をしていたころは「タダで読めるんだもん、そりゃウェブは楽だなあ」って、うらやましく思っていましたけど、自分がウェブ媒体をやるようになると、そんな甘いもんでもないってことが分かりましたね

加藤 同感です。良いものを作れば必ず読まれる、というわけじゃないですものね。検索エンジンの性質とか、いろいろなもので記事の価値が変わる。当たり前ですが、読者に無料で提供するからには、どこかで稼がなきゃいけないわけですし

吉岡 そうですね。広告モデルのフリー媒体って、ビジネスモデルがまだまだ確立していないんだなというのを身に染みて実感しています。良いものを作るのは当たり前。どうやってそれに気付いてもらうか? 読んでもらうか? そこが一番難しい。今は有料無料に関係なく、読者の“目玉”の奪い合いだと思っています。ライバルは雑誌やフリーペーパーだけじゃない。携帯電話も、車内の中吊り広告も、みんなライバル。iPod聞きながら寝てる人だと、居眠りすらライバルですよ(笑)

加藤 あははは。でも、今回の企画みたいに共存共栄できるポイントもありますしね。これは、当社がメディア専業ではないからかもしれませんが

吉岡 いえ、「一緒にやっていく」がやりやすいんですよ、ウェブは。先ほど出たように書籍化という展開もあるし、例えば携帯コンテンツへの展開もあり得ますし

加藤 そこが面白いところですよね。ライバルだからと、ただ切って捨てるのではなく、今日の友かも、と考えてみることができますよね

吉岡 そうそう。ITmediaの記事が、紙の産経新聞(「Sankei Express」ですが)に載っていたりしますし

加藤 それはすごいですね。あ、でも、GLOBIS.JPも記事がきっかけで執筆者に取材依頼があったり、本を書いてくれと言われたりしますから、そういう感覚は少しですが、分かります。どこから何がつながるか分からない感じ。だから、とにかく小さかろうが何だろうが舞台に立ち続けることが大切ですね。ただ、ウェブというのは誰もが発信できるメディアだけに、「プロの仕事」って何?ってことを、いつも考えさせられたりはします

吉岡  あー、それは確かにあります。ともあれ、情報発信し続ける場として、ウェブはとても面白いです。ちょっと余談になりますが、最近とみに「テレビや新聞 vs インターネット」みたいな言われ方をしますけれど、インターネットはまだまだ形が定まってないから、何と組んでどう化けるか分からない。敵だって決めつけないでほしいな、と思いますね

同年代の女性編集長として、そしてこれから

吉岡さんも加藤さんも女性編集長ですが、編集長になったとき、どう思われました? 女性ということを気にすることはありますか?

加藤 「やだ!やだ!」って思いました(笑)。本当は、取材したり、記事を書いたりする、ただの“職人”であり続けたかったのです。でも、どうしても「こういうものがあるべき」と思って、ほとんど1人で立ち上げさせてもらったメディアなので、仕方がなかった。役職って自分が付けるものではなくて、人から見て相応しいかということが重要と思っているので、早く良い媒体を作って、その媒体にふさわしい自分になりたい、という感じでしょうか。その意味で焦りはありつつも、今は、良いものを作ることしか頭にないですね。良い媒体に育て上げるまでは頑張るという責任感の表れとして、「長」という肩書きをいただいている感じです。社風のおかげか、女性だからという苦労は幸いにしてあまりないです。吉岡さんはどうですか?

吉岡 私もいままでずーっとヒラの編集部員で、「長」という肩書きがついたことがなかったので、最初は戸惑いました。何が驚きって、「こんなに雑用があるのか!」と(笑)

加藤 本当にそう! 予算とか考えなくちゃだし、会議は増えるし・・・愚痴になってきた(笑)

吉岡 記者をやっていた頃は、「記事を書くのが仕事」「良い記事を書いて、たくさんの人に読まれることだけ考えてればいい」だったのに、今は、一日が終わって、他のみんなが帰ってから、ようやく私が記事を書いていい時間になる(笑)。だから、吉岡が取材して記事を書いてないのは、怠けているわけじゃないんです、いつか書きます、と言い訳してみる・・・

加藤 あー、同じです。プレイングマネジャーって呼ぶんですって? こういう人たち(笑)

吉岡 そう、プレイングマネジャー。私の場合、プレーヤーとしてもマネージャーとしても、非常に中途半端で心苦しいですが

加藤 お互い、ビジネスパーソンのためのメディアを作っているので、「職人だから」と言ってマネジメントの大変さから逃げずにいることが、読み手の心に沿えるという意味でも、良い経験かもしれませんね

吉岡 今どきはプレイングマネジャー型の中間管理職が多いですからね。読者と共感できていいかもしれません。以前、「有名パティシエだって1人のプレイングマネジャーだった!」という記事を書いたこともあるんですよ。女性だから、というのはどうかなあ? もともと貫禄がなくて押しが弱かったのが、最近は「編集長」という肩書きに助けられているかもしれません

普通の記者や編集者に戻りたいと思うことはありますか?

加藤 それはないですね。自分の器が、「こうありたい」という姿に対して小さすぎて戸惑っているだけで

吉岡 ある程度、育っている媒体の中で記者をやるのと、これからの媒体を育てるのはまったく違う仕事なんですよね。今は「誠君」という子どもを生んで育てている気分なので、とりあえず誠君が独り立ちするまでは、記者職に戻らずに母親業を頑張ろうと思っています

加藤 私も同じです。肩書きをふりかざすのは嫌ですが、そのおかげでいろいろチャレンジできるのは有難いですし、そろそろ責任感を持って社会に恩返ししなきゃ、というところもあるので。私も子育て、楽しみながら、頑張ります

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