ファシリテーションは会議の技法? 

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「リーダーシップ」という言葉を聞いて、皆さんは何を連想するでしょうか? 「○○さんのリーダーシップはすばらしい」「まだまだ自分はリーダーシップが発揮できていない」など、多くのビジネスパーソンにとって、リーダーシップは関心が強い言葉であり、志のあるビジネスパーソンなら誰しも「自分はリーダーシップを発揮したいリーダーシップの力を高めたい」と感じているでしょう。

「ファシリテーション」。こちらはどうでしょうか? 「ファシリテーション」は「会議」と密接な関係がありますが、「会議」にはほとんど全てのビジネスパーソンが不満を持っているでしょう。何のためにやっているのかわからない会議、時間ばかりがかかって何も決まらない会議、声の大きい人が仕切っていて他の参加者が押し黙っている会議・・・そんな会議に出ている時間があったら早く自分の仕事に戻りたい、と感じることも多いでしょう。

会議に対して多くの方が問題意識を感じている一方、「ファシリテーション」を自分に身近なもの、自分が身につけるべきスキルと捉えている人はまだまだ少ないのが現状です。「確かに生産性の低い会議は多いし、上手く会議を仕切ってくれる人が居ればよいけど、そんな面倒なことを自分はやりたくない。自分の意見が通ればそれでよい」と感じるのも無理はありません。

まれにコミュニケーションスキルに強い関心を持つ方や、仕事上会議の進行役を務める必要性が高い方が「ファシリテーション」に関心を寄せ、調べてみると、今度は必ず出てくる「ファシリテーターは中立公正な立場で・・・」という言葉にひっかかってしまいます。多くのビジネスパーソンにとって、全く中立公正の立場で会議に参加することはめったに無いため、「自分とは関係ない特殊な人のためのスキルなのでは?」を感じてしまうのです。このためリーダーシップに比べ、ファシリテーションの市民権はまだまだ低い状態です。

これはとても残念なことだと思います。なぜならファシリテーションは、メンバーや関係者の知恵とやる気を引き出し、深い納得に裏付けられた合意を実現する強力な武器であり、同時に人の能力を育成する上で肝となるコミュニケーションスキルだからです。もしくは単に「コミュニケーションスキル」というレベルに留まらず、「リーダーシップのあり方そのもの」と言えるかもしれません。

衆知を集めよりよいプランを生み出す、メンバーのモチベーションを高め行動を促す、関係者の合意を形成し物事を前に進める、部下の能力を高める。どれもリーダーが果たすべき重要な役割です。では、リーダーはどのようにこの役割を果たすのでしょうか?プロジェクトチームのキックオフ、利害が対立する部署との調整会議、部下とのMBO面談など、リーダーがリーダーシップを発揮し、メンバーに影響を与えるのは、ほとんどがコミュニケーションの場においてです。その意味では、ファシリテーションはリーダーが身につけるべき必須のスキルと言っても過言ではありません。

私はグロービス経営研究所において、問題解決やコミュニケーション、リーダーシップなど、全てのビジネスパーソンに求められる力を徹底的に鍛えるプログラムの開発に深く携わってきました。特に単に知識を伝えるのではなく、学習者に気づきの機会を提供し、意識・思考・行動の変容につなげる実践的な経営教育の手法を追求しています。また、その成果を活かし、多くの一流のビジネスパーソンを一流の教育者にするという、「講師育成」の活動を統括しています。そして自身も講師として、企業研修、経営大学院のクラスで多くのビジネスパーソンの方の能力開発のお手伝いをしてきました。こうした活動全ての根底にあるもの、それが「ファシリテーション」です。

近年では、こうした経験から得られた知見をもとに、リーダー(および予備軍)がビジネスの現場で活用できる「ビジネス・ファシリテーション」プログラムを開発し、多くの方に受講いただいています。多くの方は既にリーダーとしての気概を十分に持ち、リーダーシップ発揮のために必要な視点を押さえているにもかかわらず、部下や関係者とのコミュニケーションの場面でなかなか上手く行かないという悩みを抱えています。曰く、「部下に自分の考えを丁寧に説明し、『わかりました』と言っていたのに、いつまでたっても行動しない」「相手の感情や事情にも配慮しながら、なんとか落としどころを探ろうとするのだが、なかなか相手が意見を変えてくれない」「自分が命じたことはしっかりやってくれるのだが、ちょっと状況が変わると対応できない。もっと自分で考えて動いて欲しいのだが・・」など。

何がどのように上手く行かないのか?をお聞きし、どうしてそうなってしまうのか?を一緒に考え、またロールプレイなど現実に近い状況に放り込んで実践してみてもらうと、問題の本質がだんだんと見えてきます。そして最終的には、単に「コミュニケーションの仕方」というレベルに留まらず、「リーダーシップスタイル・人間観」そのものを見つめ直すことなります。詳しくは稿を改めて書こうと思いますが、本質的な問題は、ほとんどの方が「伝え、説得し、動かそう」とコミュニケーションをしてしまうことにあります。その限界に気づき、「引き出し・決めさせ・自ら動くように助ける」という「ファシリテーションの本質」を理解・実感することで、少しづつ変化が顕れてきます。

このコラムでは、「リーダーの必須スキルとしてのファシリテーション」をテーマとして、私が日頃感じていることをまとめていきたいと思っています。ファシリテーションは様々なコミュニケーションスキルの中でも、高度な思考力・理解力・表現力を必要とする最高難度のスキルであり、習得は容易ではありませんが、同時に大きな可能性を秘めた、大変興味深い領域です。その一端を少しでも感じ取っていただければと思います。

(本稿は、グロービス経営大学院のサイト上に2007年10月に掲載された内容を、再掲するものです。既掲載分である第7回までを今後、毎週木曜日に順次掲載のうえ、4月からは、いよいよ続編を開始の予定です。どうぞお楽しみに)

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