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グロービス経営大学院研究科長ジョン・ベックが語る ~私の愚かな失敗とそこから得た学び~ vol.6(最終回) もし人生があと1年で終わるとしたら

投稿日:2009/02/04更新日:2019/04/09

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日常に忙殺されながら、ふと、振り返る。自分の生き方は本当にこれでいいのだろうか、と。これまで築いてきたキャリア、将来への不安、家族への責任、地位への執着、会社への愛着……。たまには心の枷を外してみたらどうか、そして、心の声に耳を傾けてみてほしい。グロービス経営大学院の研究科長(Dean)を務めるベック氏が、自身の半生を振り返り、人生やキャリアに必要なエッセンスをひも解く連載企画最終回。ベック氏が自身の人生を大きく変えた経験を語る。(このコラムでは、読者の皆様の様々な意見や経験談をお待ちしております)

33歳、人生を変えた一つの決意

33歳のときの新年の決意は、例年のもとのとは少し違う誓いを立てました。人生を変える大きな決意をしたのです。「自分にはあと1年しか残されていないと考えて毎日を過ごす」ことに決めました。

最初に頭に浮かんだのは、「毎日をその日が自分に残された最後の日のように生きること」でした。 しかし、そのように決意すると、人生の最後の日を友人や家族と一緒に過ごしたくなるに決まっています。彼らもその日が私の人生の最後の日であると分かったならば、おそらく、仕事を休んで私と一緒に過ごしてくれることでしょう。

次に、「その年が最後の年であるかのように感じながら一年を過ごす」はどうだろうと考えました。そのような信念を持つと、毎年11月になると、年末まで1カ月か2カ月しか残されていないので、大きなチャレンジに挑んだり、新しいプロジェクトを始めることをしなくなってしまうだろう。これもうまくいきません。

最終的に、毎朝目覚めたときに、「もし人生にあと365日しか残されていないとしたら、私は今日何をするべきだろう?」と自分に問いかけることを信条としました。1年という時間は多くのことを成し遂げるために、実際には十分すぎるほどの時間なのです。

プロジェクトの立ち上げから1年以内に完成したものを挙げてみると、多くのことが成し遂げられていることに気づきます。

・ IBMのオリジナル版のパソコン

・ ウェンブリー・スタジアム(ロンドンにある国立サッカー競技場)

・ SF作家ジョージ・オーウェルの名作『動物農場』

・ サミュエル・モースによるワシントンとボルティモア間の最初の電話線

・ ヴェルディの作曲したレクイエム

・ アニメ映画の『トイ・ストーリー2』

・ 多くのハリウッド映画

当然のことながら、上記のほとんどは1人では成し遂げることができず、多くの人が関わっています。しかし、適切な支援を受けて、正しい動機付けがあれば、1年で「多くのこと」を成し遂げることができます。上記のすべてが、最初はたった1人から始まったこともまた、事実です。

変化を遂げた人生観

新年に立てた決意を実行するやいなや、私の人生全体に変化が起きはじめました。

興味深いことに、最初の変化は「身体」でした。もし、今から一年以内に起るべく死に向かっているとしたら、自分の体のことは気にかけずに、なるがままにさせる(運動もせず、アイスクリームだけを食べ続けるなど)と決め込むかもしれません。ところが私は、「良い体型を保ったままで死にたい」と願っていることに気づきました。定期的にトレーニングジムへ通い、1年間で10キロもの減量をしました。

この決意をしたときに、私には二つのフルタイムの仕事があり、大学教授としての仕事、そして、トップクラスのコンサルティング会社でコンサルタントとしても働いていました。決意してから数カ月後のことです。もしこれが私の人生の最後の1年になるとしたら、私はこの二つの仕事のうちどちらも選択しないだろう思いました。そして、両方の仕事を同時に辞めました。その後は、飛行機免許のレッスンを受けはじめてしまったのです!

二つの仕事を辞めた後、数週間は毎日何もしないで過ごす生活を楽しみました(毎週のパイロット免許のレッスン以外)。しかし、4年間もの間、二つのフルタイムの仕事をこなすという過酷さを乗り越えてきた私には、何もしない日々が退屈になってきました。そして、意味のある何かに取り組もうと決めたのでした。それまでも、「何かしら世の中に貢献できることに関わりたい」といつも考えてきましたが、まだ50年の時間が残されていると考えていた私は、決断することを先延ばしにしてきたのです。自分の人生にはあと1年しか残されていないと考えることによって、「急がなければならない」という感情が沸いてきたのです。自身に次のような問いを投げかけました。「世の中の助けになるという私の目標を達成するために、今日、何を始められるだろうか」と。

私が備えているスキルや知識で、他のアメリカ人にないものの一つは、アジアに関係するものでした。私は日本と中国に住み、日本語と中国語の両方を学んでいました。そこで私は、世界の平和と理解を広める一つの方法として、ニュースレターの発行を始め、アジアン・センチュリー・ビジネス・リポートと名付けました。これはすべてインターネットが普及する前のことですから、ニュースレターの見本を印刷し、ダイレクトメールで宣伝活動を行わなければなりませんでしたが、すぐに約100人の購読者を得ることができました(どちらかといえば価格の高いニュースレターにもかかわらず)。

ニュースレターを発行するビジネスは、家族が楽に1年は暮らせるほどの十分な収入をもたらしてくれ、その後、ニュースレターを5年間発行し続けました。月刊のニュースレターを発行するための執筆とリサーチを通じて、友情や支援者との関係を築き上げることができ、その後の専門分野での成功の礎となりました。ですが、もし、その年が人生の最後の年という考えを持っていなかったならば、なにも達成することはできなかったかもしれません。

多くの人は死が近づくと宗教心を持つようになります。実は私は教会へ行くことをやめ、その代わり、新しく興味ある方法で人生の経験を積んで行くことを決めました。残りの人生を共に過ごすことのできる人を探す事を決心したのです。何年もの間逃げ続け、ときに罪悪感のようなものさえ感じていたプロセスに、踏み出しました。その試みは、数年後に大きな幸福をもたらしてくれました。人生を共にしたい人に出会うことができたのです。

また、子供たちと一緒にもっと多くの時間を過ごす決意もしました。その翌年(さらにそれ以降も)、私は子供たちを学校へ送り、宿題を手伝い、泳ぎ方を教え、一緒にテレビゲームを楽しみました。私は彼らにとってついに、本当の父親になったような気分を感じたのでした。子育ての中で一番幸せな思い出は、私が新年の決意をした年、またはその翌年の間にぎゅっとつまっています。

愚かな経験……

ハーバード・ビジネス・スクールからリタイアするには若すぎる年齢で職を辞した偉大な経営学者ジョン・コッターによる『A Sense of Urgency』は、現在の私の愛読書です。著書の中でコッターは、組織の変化が起きるもっとも重要な徴候は、「何かが差し迫っている感覚なのだ」と説明しています。リーダーとして、あなたの部下に対して、または社内で、この考えを浸透させなければなりません。それは単に、「忙しい仕事」による緊急性であってはなりません。真に目的を持つ、“本当の”緊急性でなければなりません。コッターは、個人がどのようにしたら人生の中で緊急を求める感覚を持てるようになれるか、多くを語ってはいません。しかし、「私には人生の残された時間は1年しかない」と考えて、日々の重要事項や緊急事項に対応する訓練を行うこと以上に適した思考法を、私はいまだに見つけたことがありません。

これまで連載してきた記事は、私が行ってきた愚かな行為を取り上げてきました。私が綴ってきた失敗談のほとんどは、遠い過去の“昔の出来事”だったので、失敗を語ることもそれほど難しくは感じませんでした。しかし、実はつい最近も失敗をしてしまったのです。私が33歳のときに立てた新年の決意による力を忘れてしまっていたのでした。人生の残された時間は多くないという気持ちで、日々生活すること中断していました。数カ月前、この考えについて誰かに話したときに、私はそのことを思い出したのです。そして、決意を行う生活習慣を忘れたことにより、過去数年間に、多くの馬鹿げた判断を行っていたことにも気づきました。

しかし今は、失われた時間を取り戻すように心掛けています。毎朝目覚めると考えます。「私には時間が365日しか残されていない。今日、私は何をしたらよいのだろうか」と。私の人生はまた変化し始めました。過去に成し遂げられなかったことで、私が将来行うべきことがいくつかあります。過去に私が行ってきたことで、将来には二度と行わないようにすべきものもいくつかあります。

毎朝、自分自身に問いかけてみてください。もし、これが人生の最後の年になるならば、今日、私は何をしたらよいのだろうか、と。そして、次は、その答えを実行に移すだけです。

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