海図なき航海となるのか? オバマ政権の舵取り 

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世界の景気見通しはとにかく暗い。今の問題は「明るいか、暗いか」ではなくて、「どれだけ暗いか」である。結論を言ってしまえば、今年は“真っ暗”だと思う。昨年末の英フィナンシャル・タイムズ紙には、「日本と一部の大陸欧州諸国は2009年中に景気回復の兆しが見えるかも」と書いていたが、それはあまりにも楽観的過ぎると思う。

現在の日本を見ていると、昨年、9月15日のリーマンショック以来、まるでつるべ落としのように景気が悪くなっている。10〜12月の四半期はふたケタのマイナスになったのではないかとさえ言われている。どこで聞いても、急速に悪化しているという答えが返ってくるので、やはりそれが実感なのだろう。

減税の景気刺激効果は薄い

そこで当然、景気を何とか下支えしないといけないということで、各国政府や中央銀行は、景気刺激策を矢継ぎ早に打ち出し、中央銀行は金利を急速に下げてきた。

1月20日には米国でオバマ政権が発足する。そのオバマ氏は、中間層に対する減税と景気刺激策、とりわけインフラ投資、さらに「グリーンニューディール」(代替エネルギー投資)と健康保険制度、教育に力を入れるとしている。昨年の選挙戦中よりも、緊急の経済対策に軸足が移ってきているのは仕方のないところだろう。

その景気刺激策について、2001年のノーベル経済学賞を受賞したジョセフ・スティグリッツ教授が、英フィナンシャル・タイムズ紙で「減税の景気刺激効果は薄い」と警告している。

スティグリッツ教授がまず指摘するのは、2009年の財政赤字は1兆2000億ドル(議会予算局の試算)、GDP(国内総生産)の8%を超えるということだ。

そういった状況の中で、教授は「減税があまり景気刺激にならないことは明白だ」と書いている。ブッシュ政権の経済顧問だったマンキュー氏などは、「減税を推進せよ」と主張している。しかしスティグリッツ教授に言わせれば、マンキュー氏がその論拠としているカリフォルニア大学バークレイ校のエコノミスト、ローマー夫妻による研究は、現在の状況には適用できないという。その研究では、1ドルの減税が3ドルGDPを押し上げるというものだ。

オバマ政権の舵取りは「海図なき航海」

現在、米国の消費者が直面している問題は、重い負債、年金や退職金の目減り、ローン残高を下回ってしまった住宅、そして金融機関の貸し渋りだとスティグリッツ教授は指摘する。そのような状態では、米国人はお金を使うことより貯蓄に向かう。昨年、ブッシュ政権が減税を行ったときにも、その減税分の半分以下しか消費に回らなかった。

まして企業に対する減税や不良資産の買い上げは見返りをきちんと要求しない限り、景気刺激策にはならないと教授は主張する。

使い方をきちんとすれば、景気刺激には大いに役立つ。スティグリッツ教授が推奨する景気刺激策とは、失業手当の増額だ。これを行えば、そこに投じたお金はほとんどすべてが使われる、すなわち消費が増える。また職を失った人々に健康保険を提供することも、個人破産を防ぐには効果がある。さらに職を失った人々が家を手放さざるをえない状況になったときに、そこを援助すれば、現在の景気の足を引っ張っている住宅の差し押さえを減らすことにもつながるだろうという。

スティグリッツ教授は、超リベラルな主張をするという意味で、オバマ新大統領の考え方に近い。それだけにスティグリッツ教授が、減税をやり過ぎるなと警告したことは、オバマ新大統領の政策にある程度のインパクトを与えることになるだろう。いずれにせよ、これから数カ月間のオバマ政権の舵(かじ)取りは、まさに「海図なき航海」ということになりそうだ。

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