保護主義という妖怪が蘇る?大恐慌の教訓は学んでいるか 

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2007年夏ころから始まった金融危機。「これが世界恐慌になるのか」という議論が一時期はずいぶん盛んだった。しかし議論の大勢は「あの大恐慌とは時代が違う」という結論になっていた。最大の違いは「現在の世界経済は基本的に自由貿易で成り立っている」ということだ。そのことはどの国も承知している。

1929年の大恐慌時には、経済が悪化した各国が自国の産業を守るべく経済ブロックを構成したり、輸入を制限する保護主義的政策を採用したりした。それが市場争奪戦となって、やがて第2次世界大戦へと発展する。その教訓が生きているからこそ、第2次大戦後、世界は自由貿易を拡大する枠組みを続けてきた。

そのためにWTO(世界貿易機関)という組織もあり、そこでは多角的貿易交渉が行われている。交渉はなかなか難航するとはいえ、少しずつ自由化が進んでいることも間違いない。

自由貿易の時代は終わり?

しかし、これまでの戦後世界では、世界が同時に不況に陥ったことはない。中国やインドといった新興国も急速に悪化していることは前回のこのコラムでも書いた。そしてロシアも相当痛んできているという。ウラジオストクでは、中古車の輸入制限に抗議するデモを治安部隊が鎮圧し、ジャーナリストも含めて拘束されたというニュースがあった。国内の自動車産業を保護するためだという。

一時、日の出の勢いだったロシア経済は、原油価格の暴落によってかなり疲弊してきたようだ。1998年に通貨ルーブルが暴落して、債務不履行に陥ったこともあるロシアは、その後、原油価格の上昇に伴って復活。一時は6000億ドルもの外貨準備を保有していたが、現在では1600億ドルも減ったと英エコノミスト誌の電子版は伝えている。しかも2009年のロシアはマイナス4%成長になる可能性があるという。

そうした情勢を受けて、メドベージェフ大統領とプーチン首相のコンビが今後、保護貿易的な姿勢を強めるとすれば、各国の姿勢にも影響する可能性がある。実際、オバマ政権になって米国がビッグ3を税金で支援することが本格化すれば、欧州や日本の自動車産業が「不公正競争」を訴えて、先進国間で「自動車産業支援競争」が始まる懸念もないとは言えない。

英エコノミスト誌最新号(12月20日号)に「さようなら自由貿易」という記事が掲載されている。グローバリゼーションを引っ張ってきた貿易と金融が両方とも逆流しているというのだ。世界銀行によれば、2009年の新興国に対する資本流入は史上最高だった2007年の1兆ドルの半分になるという。また世界貿易は1982年以来、初めて縮小するそうだ。

こうなるとこれまで輸出で経済成長を果たしてきたような国は、内需で補うことができなければ深刻な不況にならざるをえない。こうした問題に直面した政府が保護主義の誘惑に負ける可能性がある。輸出に補助金をつけたり、通貨を切り下げたり、また関税によって輸入を阻害したりすることで、国内の雇用を守ろうとしがちになる。

もしそういった行動が広がると、世界を覆いつつある不況はさらに悪化して、それこそ世界恐慌になる懸念も強まる。11月中旬にワシントンに集まったG20、20カ国の首脳は貿易障壁を導入しないとしたが、その後、ロシアは自動車の関税を引き上げ、インドは鉄鋼の関税を引き上げた。

2009年1月20日に米大統領に就任するのは民主党のバラク・オバマ大統領。しかも連邦議会は上下両院とも民主党の「安定多数」。そして民主党は伝統的に自由貿易よりも国内雇用重視の立場をとる。そうした意味で、オバマ大統領がどういった政策をとるのか、それが世界経済の明暗を分けると言っても過言ではないようだ。

1930年、米国はスムート・ホーリー法によって、2万品目に及ぶ製品にかける関税を記録的な高さに引き上げた。これに対して、各国は米製品に報復関税を課し、米国の輸出入は激減する。これで本来は単なる深刻な不況だったはずの景気が恐慌になったとも言われる。この教訓が生かされるのかどうか、2009年はオバマ大統領の一挙手一投足に世界が注目することになるだろう。

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