なぜビッグ・スリーを救うのか? 

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象徴的すぎてつぶせない

米国自動車産業が雇用に及ぼす影響力は、かつてほどではなくなっている。米労働統計局によると、“自動車およびその部品”に関する産業の雇用は、史上最高の133万300人を記録した2002年2月から、08月11月の82万7700人と、約62%落ちた。

それだけではない。“ビッグ・スリー”のマーケット・シェアは継続して下降している。かつては70%以上あったが、今では全米の新車販売台数で50%以下であり、更に毎月落ち込んでいる。一方で、トヨタは米国第2位の自動車メーカーの地位を確固とし、ホンダは今やクライスラーと第4位を争っている。

しかしながらGM、フォード、クライスラーの歴史的足跡は、多くの米国人の心情に特別な影響を残している。特にGMとフォードは、古き良きアメリカの象徴である。 これらの会社の、高給で労働組合に守られた仕事は、全ての世代の労働者に安定した生活を供給していた。米中西部、特にミシガン州では、自動車産業は現在でもなお経済の主エンジンである。

次期大統領のオバマ氏と民主党主導の議会は、中西部にとりわけ忠誠心を持つ。 オバマ氏の政治の本拠地は、“中西部の首都”といえるシカゴである。 先の選挙では中西部の7つの州が、96の選挙人票をオバマ氏に投じた。 これら7つの州からは、民主党の上院議員が10人選出されており、 共和党議員の4人を大きく上回る (ミネソタ州の上院議員選の結果いかんでは民主党がもう一名増やせる可能性がある)。中西部は、民主党の主力の基盤であり、この地域が経済の混乱に陥るところを目の当たりにしたくないのである。

更に、多くの政治活動家が、自動車会社を更なる規制の下に置きたがっているという事情がある。環境保護団体は、自動車会社がより自然に優しい輸送手段を提案するようになるべきだと考え、一方で反労働組合の立場に立つ人々は、労働組合が交渉で勝ち取った利益を手放すことを望んでいる。こうした政治勢力が、今回を機会に自動車業界を自分たちの望む方向へ押しやろうと、虎視眈々と狙っている。

トヨタや日産の倒産を想像してみる

日本の自動車産業に言い換えてみる。もしもトヨタや日産という日本の象徴的存在の会社が何らかの理由で倒産に追い込まれているとしたら、と想像してみてほしい。これらの自動車会社を救済しようという政治や国民感情の突き上げは、日本の銀行が90年代に救済された時と同じくらい大きいだろう。

たとえこの法案が、かねてより噂されているように、ビッグ・スリーのうちの2社間の合弁をスムーズにする道筋となるに過ぎないにしても、倒産に追い込まれるよりも、政治的にも経済的にも痛みは少ないと国内では見られている。そうなると、たとえ政府誘導型だとしても、最終的に米国の自動車産業が回復することはまず間違いない。かつてのような栄光を取り戻すことは決して無いであろうが、少なく見積もっても、これらの企業は、何の警告もなしに突然倒産するというよりも、惜しまれつつ姿を消すことだろう。もはや経済的な理屈ではない。米国自動車産業の象徴として、あまりにも大きな存在なのだから。
(英文対訳:是村由佳)

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