「割安とは思いつつも動けない」——株式市場に未来はあるか? 

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欧米の企業や消費者は、このバブルの中で抱えてきた借金を返済しようと躍起だ。

欧米に限らない。インドのタタ・グループの総帥ラタン・タタは、100社近いグループ企業のトップにメールを送り、「必要不可欠のものを除いて2009年のM&Aは一切中止」という指令を出した。要するに資金調達が困難になるということと、すでに膨らんでいる借金を軽減するのが優先ということだ。

それでは家計はどうだろう。英エコノミスト誌の最新号(12月6日号)に面白い記事が載っている。書き出しはこうだ。

「米国や欧州で資産を貯めてきた個人にとって、まさに失われた10年となった。ここ10年で2度のブームと2度の暴落を経験した株式市場は、結果的に10年前とほぼ同じか、あるいは安い。低金利だったから、預金や債券投資もたいした利益はない。『日本の個人は、そんな状態をはるかに長いこと経験している』と言われてもたいして慰めにはならないだろう」

こんなところで日本が顔を出すのも、いかがなものかと思うが、事実だから仕方がない。バブルが弾ける直前、1989年の大納会で4万円近くつけた株価は、いまや8000円前後だ。

暗い数字が続く。「米国の投資信託の資産総額は2兆4000億ドル、約20%減少した。英国では25%以上、1950億ドルも減少した。世界の株式市場の時価総額合計は、約30兆ドル減少して半分になった」

サブプライムローン関連の損失も真っ青というぐらいの数字がならぶ。30兆ドルといえば、円換算でざっと2700兆円。日本のGDP(国内総生産)の5倍をはるかに超える。そんな金額がこの金融危機で消えてしまった。

「この10年間、毎月せっせと100ドルずつ米国株式の投資信託に積み立ててきた米国人は、自分が投じたお金が元本割れしている。欧州人だと約25%も目減りしている」というのでは、「今は株やそのほかの投資商品から身を引いているのが安全」という気持ちになるのも無理はない。

普通、投資とは、安い時に買って高い時に売るもの。しかし「現実にはなかなかそうは行かない」とエコノミスト誌は続ける。

「1999年から2000年にかけて投資家が株に資金を投じたときは、PER(株価収益率)*1は35倍。今はこれが10倍程度だから、2000年当時に人々が株を買いまくったときよりもお買い得ということが言える。PERが下がっているために、今後10年間の米国の株の投資収益率は年平均8%になる」

要するにエコノミスト誌は、あまり縮こまらずに投資をすべきだと言いたいのだ。

「慎重になっている個人投資家は、銀行にカネを預け、銀行はそれを企業に貸さず、企業は借りることも資本市場からカネを調達することもむずかしくなる。こうした臆病さは、老後の備えができない個人も、さらには企業も傷つけることになる。信じがたいかもしれないが、長期的に見れば、いまこそ株や債券に投資すべきときである」

まあ理論的には、その通りかもしれない。しかし、バブルだって、理論的にはそんなことが続くはずはないと思っているのに、結局、みんながバブルに乗って、弾けた。9月に破たんした米リーマン・ブラザーズのリチャード・ファルド会長は、議会の公聴会で「何でこんなにリスクを取ったのか」というようなことを聞かれて、「あの当時にそうしなければ、『お前は非合理的である』と言われただろう」と答えていた。みんながバスに乗って大もうけしていれば、バスに乗らないという選択肢はほとんどありえないということだ。

「いつかは景気も戻り、株価も上がるだろう」と思っていても、それがいつかは分からない。そうすると「これ以上下がらないだろう」と思い切ることはなかなかできない。ましてや100年に1度の大津波であれば、どこまで下がるか分かる人間は誰もいない。これではとても株なんか買えないと思うのは私だけだろうか。

*1株価を一株当たり利益で割ったもの。これが大きいほど割高、小さいほど割安とされる

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