金融危機は米国から欧州へ——銀行救済に駆け回る欧州政府 

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米国は連邦議会下院が金融安定化法案を可決し、ようやく7000億ドル(約75兆円)もの税金を投じての不良債権買い取りが始まる。これで金融危機が収まるのかどうかはまだ様子を見なければ分からないが、少なくともブッシュ政権が切り札を切ったことは間違いない。

ただFDIC(連邦預金保険公社)の要注意銀行リストには100行を超える銀行がリストアップされており、それがこれから来年にかけて破綻する恐れが強いのだという。もしこれらの銀行が破綻するとFDICが保有している準備金だけでは預金を保護できなくなるとされている(米国の場合は上限10万ドルだったが、今回の金融安定化法で一時的に25万ドルになった)。

FDICが預金を保護できないということになると、ちょっとした噂がもとで銀行に取り付け騒ぎが発生し、銀行がつぶれる可能性が高くなる。そうなったら、また税金を費やして預金を保護せざるをえなくなるだろう。

米国の銀行といっても、いま危ないと言われているのは、要するに住宅ローンを中心にローン残高を伸ばしてきた銀行だ。それもサブプライムローンよりはちょっと格上だが、やはり「嘘つきローン」と呼ばれる収入がない人にも貸すローンである。それが不良債権化しているために、そうした銀行が資金調達ができなくなっている。

欧州に広がる金融危機

金融危機は大西洋を越えて欧州にも広がっている。とくに問題なのはドイツのHRE(ヒポ・リアル・エステート)という不動産金融の大手である。総資産が4000億ユーロ(約48兆円)というから、もし破綻したらドイツの金融市場は大混乱に陥る。だから一時は総額350億ユーロ(約4.2兆円)にのぼる中短期融資のコンソーシアムを組むことで合意ができていたが、この救済計画が一部銀行の離反で反故になってしまった。週明けまでに救済プランをまとめるべく政府が中心になって動いているものの、日本時間の月曜未明の段階ではまだ合意ができたというニュースは流れていない。

エコノミスト誌最新号(10月4日号)によると、欧州の銀行は米国の銀行よりも脆弱であるという。その理由は、米国の銀行は1ドルの預金に対して98セントを融資しているが、欧州の銀行は1ユーロの預金に対して約1.4ユーロを貸し出しているからだ。もちろんこの足りない分は短期金融市場から調達してきたわけだが、現在の金融収縮がまさにここを直撃している。その意味では、資金繰りが苦しくなる銀行はまだまだ出てくる可能性がある。

欧州では先週ヒポの他にも4つの銀行が救済された。EU(欧州連合)議長国であるフランスは、EUの政府が結束して事にあたるべきだと主張している。ドイツはこれをいったんは拒否したが、自国の足下が揺らいでいる今、考え方を変えたかもしれない。

米国の金融安定化法が発効しても、そう簡単に危機が収まるとは思えない。それに先進国だけでなく、ロシアやインドといった新興国にも影響が及びはじめている。ただ原油価格が一時期よりもずいぶん下がったことで、インフレ懸念が薄れてきた。このため世界の中央銀行にとっては利下げというオプションが生まれている。暗いニュースばかりだが、これだけはやや明るいニュースと言えるかもしれない。

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