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17回 『静かなリーダーシップ』ほか

投稿日:2008/10/15更新日:2019/04/09

自分の評判や地位を気にしながらも、正しい事を成し遂げていく――。誰もが憧れるヒーローではなく、一見地味なリーダーこそが世界を変革すると説く名著を紹介する。1万冊読破を目標に掲げるグロービス経営大学院副研究科長・田久保善彦による「タクボ文庫」第17回。

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私が教鞭をとっているグロービス経営大学院では、ビジネスリーダーの育成をミッションにしており、様々なカリキュラムや仕掛けで、リーダーになるスキルと志を醸成しています。例えばリーダーという名前がついている科目も、「企業家リーダーシップ」「組織行動とリーダーシップ」「変革のリーダーシップ」「リーダーシップ開発演習」「リーダーシップとメンタルヘルス」「グローバルリーダーのマインドとスキル」と6つ存在し、それぞれの科目でリーダーというものを深く考えていきます。ちなみに、良書をみんなで読み込む「経営道場」というクラスもあり、そちらではリーダーの人間力について考えています。

科目以外でも、このサイトでも紹介されている、多数の経営者と直接触れ合うことのできる「あすか会議」、著名な経営者をおよびしてご講演を頂くトップセミナー、自らの学びを定期的に振り返る「振り返りセッション」など様々な営みを展開しています。

そんな状況なので、私もリーダーシップに関係する本をかなり読み込んでいます。このコーナーでも、これで3回連続リーダーシップ関連の本をご紹介していますが、リーダーシップの分野は「最も研究されているが、明確になっていることが最も少ない分野」とも言われているらしいです^^。

生身の人間が絡む話ですから、当然といえば当然ですね。そして、やはり人間への興味、関心という意味では、それこそ古代ギリシャから脈々と哲学や思想が発達してきたわけです。現代においても、その情熱は変わらず、人間は“研究対象”として、ありとあらゆる方法論で検討されていくのでしょう。

今回もリーダーシップに関する本を含め、2冊ご紹介します。

『静かなリーダーシップ』 ジェセフ・L.バダラッコ・著 高木晴夫・監修 渡邊有貴・解説 夏里尚子・訳 翔泳社・刊 2002年

ハーバード・ビジネス・スクールで企業倫理などを教えるバダラッコ教授の説く『静かなリーダーシップ』。この本のタイトルから、皆さんはどんなイメージをもたれますか?リーダーシップというと、様々な能力に秀でた、ヒーローのような人をイメージさせるものが多いですが、この本はまったく逆の考え方をします。

ごく普通の人が、自らの身を守りながら(つまり個の幸せの追求を是として)、正しいことをしていく(これを実践する人を著者は「静かなリーダーシップ」と呼びます)ためにはどうしたら良いかを、何人ものケースを下敷きに描いています。一見すると、「どこがリーダーシップの本なの?」という感じを受ける方もいるかもしれませんが、企業で働くミドル層にとっては共感できる部分の多い、非常に現実的な本となっています。

困難で重要な問題のほとんどは、社内、社外を問わず、トップによる速やかで決定的な対策によって解決するのではない。重要なのは、脚光とはほど遠い人々が慎重に行う、思慮深く実践的な小さな努力である。世界を動かして変革するのは、静かなリーダーシップである

本書の基本的な目的は、自分の価値観に基づいて生きながら、自分のキャリアや評判を危険にさらすことなく、困難で深刻な問題を引き受けたい人々に、有益で実践的な発想を提供することである

健全な利己主義の感覚が必要である。マキャベリ曰く、「社会的地位のない人間には、犬さえ吼えない」

同期が複雑なのは、状況を本当に理解しているということであり・・・・

人間は、慎重さ、正義、勇気、穏健さという四つの徳を培うべきだ。(中略)アリストテレスは「慎重さとは特定の状況で正しいことを計算することだ」と定義している

自らのリーダーシップを振り返るヒントになる言葉が、たくさん詰まった本です。

『自分の小さな「箱」から脱出する方法』 アービーンジャー・インスティチュート・著 金森重樹・監修 冨永星・訳 大和書房・刊 2006年

この本のタイトルを見たときに、「一体何の本だろう」と、思わず手に取りました。アメリカの一流企業に勤務する2人の間のやり取りが基本になっています。上司が部下にレクチャーをするという形式で話は進み、どのような状況で人は「箱」を作り、箱の中に入っているとどのように仕事や人間関係に悪影響を及ぼすのか、丁寧に、わかりやすく紐解いていきます。キーワードは、「自己欺瞞」。

非常に分かりやすい内容、翻訳、展開なのでどんどん読み進めていける本です。一方で、「自分自身は箱に入っていないか」「入ったとしても出るすべを理解しているか」と自問しながら読むと深い、深い本になっていきます。この「箱」の存在に気づいたことで、人に対する接し方、物事の捉え方がまったく違ってくるようになる気がするでしょう。

ビジネス書ではありますが、人間関係全般に沢山の示唆を与えうる素晴らしい一冊だと思います。

自分への裏切り

1.自分が他の人のためにすべきだと感じたことに背く行動を、自分への裏切りと呼ぶ。

2.いったん自分の感情に背くと、周りの世界を、自分への裏切りを正当化する視点から見るようになる。

3.周りの世界を自分を正当化する視点から見るようになると、現実を見る目がゆがめられる

4.したがって、人は自分の感情に背いたときに、箱に入る。

5.ときが経つにつれ、いくつかの箱を自分の性格とみなすようになり、それを持ち歩くようになる。

6.自分が箱の中にいることによって、他の人たちをも箱の中に入れてしまう。

7.箱の中にいると、互いに相手を手ひどく扱い、互いに自分を正当化する。共謀して、互いに箱の中にいる口実を与えあう。

人間関係を扱った本はたくさん、たくさんありますが、これはオススメの一冊です。

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