ロシア経済の“近代化”はストップ? 政治の誤算と市場の低迷 

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「われわれは新たな冷戦を恐れない」と大見得を切ったのはロシアのメドベージェフ大統領だった。グルジアとの停戦に合意しても、問題となった南オセチア自治州とアブハジア自治共和国の独立承認に踏み切った。たとえ米国との関係が悪化しても、ロシアにエネルギーを依存するEU(欧州連合)はそれほど強い姿勢に出ることはできないだろうし、外貨準備も潤沢に保有しているロシアが経済的に苦況に陥ることはないと計算していたからである。

しかし市場はそうは見ていないようだ。ロシアの株式市場が大きく揺らいだのは9月16日。1日の下げ幅としては、1998年の通貨危機以来という瞬間風速20%の下げを記録した(終値は17%安)。ロシア経済を支えてきた原油の価格が下がっていることや短期金融市場の変調を嫌気したためである。

このため、ロシアの監督当局は17日、18日と市場を閉鎖して沈静化を図ると同時に、金融当局が大量の資金を市場に投入したが、5月の高値に比べると60%近くも下がった(その後、先週はやや持ち直したものの、それでもピーク時の半分ぐらいである)。

ロシア経済の「近代化」がストップ

直接的な原因はともあれ、株価が大幅に下落している背景には、ロシア経済の「近代化」が止まっていることにある。それが最も顕著に表れているのが、エネルギー産業だ。当時のプーチン大統領とメドベージェフ首相のコンビで、ガスプロムやロスノフチといった国営のガス会社や石油会社が、民間企業を呑み込みながら独占体制を強化してきた。そのためには手段を選ばなかった。民間企業に脱税などの容疑をかけ、経営者を放逐することまで実行したのである。

原油価格が上昇しているときは、それによって国庫も潤い、10年前の通貨危機や債務不履行など忘れ去られていたかのようだった。しかし外貨準備がいくら貯まろうと、ロシア経済はまだ脆弱(ぜいじゃく)なのである。資源以外に見るべき産業はない。資源価格がいったん弱含みに転じると、国庫の収入が減るだけでなく、ロシアの金融市場を支えていた外国資本もロシアから逃げ出すのである。

プーチン、メドベージェフの強硬ラインが、こうした市場の反応によって、軟化するのかどうかはまだ分からない。EUからの停戦監視団の活動について、EU側は南オセチアやアブハジアでの活動も要請したが、ロシアはそれを認めていない。

ロシアにとってグルジアの次の標的は、ウクライナだ。ウクライナはいわゆる「オレンジ革命」によって、親西欧政権が誕生して以来、ロシアにとっては「目の上のこぶ」。しかしそのウクライナも、ロシアのグルジア侵攻によって親西欧政権の連立が崩壊した。もしここで親ロシア派が主導権を握るようなことになれば、ロシアの強硬姿勢は一段と強まることも予想される。

西側にとっては、ウクライナをNATO(北大西洋条約機構)に加盟させる道が閉じられることになるだけでなく、ロシアからのエネルギー回廊上の重要なポイントを失うことになるからだ。

ロシアの強硬姿勢が続くとすれば、EU諸国にとって今年の冬は不安な冬になるに違いない。
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