サプライズ人事は吉それとも凶? 共和党マケイン候補の賭け 

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11月4日に行われる米大統領選。民主党と共和党の大統領候補が正式に決定した。

民主党がバラク・オバマ上院議員。もし当選すれば初の黒人大統領である。さんざん「未経験」であることを批判されたためか、副大統領候補にジョセフ・バイデン上院議員(デラウェア州、65歳)を選んだ。バイデン氏は、上院外交委員長を務め、外交経験が豊富である。

共和党はジョン・マケイン上院議員。ベトナム戦争に従軍し、5年間の捕虜生活を送った。厳しい拷問に耐え、英雄視されている。ただ年齢が72歳とオバマ氏の47歳に比べるとはるかに高い。そこでマケイン候補が打った手が、副大統領候補選びで見せた「サプライズ人事」である。

副大統領候補になったのは、アラスカ州知事のサラ・ペイリン氏(44歳)だ。5児の母親で自分を「ホッケーママ」と呼ぶ(子育てに熱心でサッカーの練習に行く子供を送迎する母親をサッカーママと言うのだそうだが、自分は普通の母親だということを言いたかったのだろう)。1996年、32歳のときに人口7000人のワシラ市の市長に当選。さらに2006年12月、アラスカ州知事に当選している。

女性が副大統領候補になるのは共和党では初めて。民主党では1984年にジュラルディン・フェラーロ下院議員が副大統領候補になったことがあるが、このときは現職の共和党レーガン大統領が勝ち、女性副大統領は実現しなかった。

ペイリン氏への好感度は1位

ペイリン氏を選んだマケイン大統領候補の賭けは、今のところ成功しているようだ。9月5日に発表された米ラスムセン社の全米世論調査によると、ペイリン氏への好感度はマケイン、オバマ両氏やバイデン氏をしのいで、1位になったという

民主党のオバマ候補は予備選の期間中、「変革」と言い続けてきた。マケイン氏はそれに対して「オバマ氏には経験がない」と批判してきたが、それは同時にマケイン氏では米国を変えることができないという批判に結びついていた(ブッシュ大統領によって米国の威信は大きく揺らいでしまったと考える米国人が多いために、とにかく「変える」ということが大前提になっている)。だからマケイン氏はペイリン知事を選んだのだが、このサプライズ人事が功を奏するのかどうか、まだ判断は早い。

ペイリン候補は、中絶反対で全米ライフル協会の会員でもあり、共和党右派好みの人物だ。しかし海外に関してはほとんど実績というか経験がない。初めて海外に行ったのは、アラスカ州知事としてドイツとクウェートに派遣された州兵を訪問したとき。それまではパスポートさえ持っていなかった。さらに長女(17歳)は、未婚だが妊娠しており、ペイリン氏は44歳でおばあちゃんになることになる。もっとも長女は赤ちゃんの父親と結婚することになっていると説明されている。家族の価値を大事にする右派にとって、この話題は好ましいものではないが、今のところ世論はメディアによる“ペイリンいじめ”と受け取っているようだ。

サプライズ人事は吉か凶か

しかし経験のなさだけはどうにもならない。人口わずか67万人の州知事として、2年にも満たない実績しかない。英エコノミスト誌はペイリン氏を副大統領候補にしたマケイン氏の決断に大きな疑問符を付けた

当時のフェラーロ副大統領候補は3期6年間下院議員を務めていた。またブッシュ(パパ)大統領のときにさんざんコケにされたダン・クエール副大統領ですら、下院と上院で12年の経験があった。英エコノミスト誌はペイリン氏に対し、「近代史の主要政党で最も経験のない副大統領候補」と断じている。経験だけでなく、ブッシュ大統領と同じぐらい関心もない。「イラク戦争についてあまり考えたこともなかった」と、あるアラスカの雑誌に語ったことがあると言う。こうしたペイリン氏を副大統領候補に選んだことは、「マケイン候補の判断力を疑わせるものだ」と英エコノミスト誌は指摘する。実際、マケイン氏はペイリン氏にそれまで1度しか会ったことがなかったとされている。

マケイン候補にとってペイリン氏を副大統領にしたサプライズ人事が果たして吉と出るか凶と出るか。出だしは吉でも、11月にどうなるかは、分からない。

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