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交渉上手は頭の中にBATNA(バトナ)やZOPA(ゾーパ)などの構造を描く:交渉の基本概念

投稿日:2017/07/15更新日:2023/06/14

交渉上手は頭の中にBATNAやZOPAなどの構造を描く『グロービスMBAで教えている 交渉術の基本』から「交渉に関する基本概念」を紹介します。

BATNA(バトナ)や留保価値(Reservation Value)、ZOPA(ゾーパ)といった交渉の構造を説明する用語は、20年ほど前に比べれば知っている人が増えましたが、残念ながらまだまだ少数派です。長年ビジネスパーソンを見ていて感じるのは、交渉や説得がうまい人は、こうした交渉の構造を捉える視点がしっかりしているということです。構造が描けるからこそ、相手の想定する「落とし所」を的確に見極めたり、新しい論点(争点)を提示することで一見ZOPA(交渉可能な範囲)がないように見える交渉でもZOPAを創出し、Win-Winの結果を導き出せたりするのです。交渉がビジネスパーソンにとって極めて日常的な行為であることを考えると、こうした基本的な構造理解とその関連用語の習得は、できるビジネスパーソンとなるための必須条件と言えるでしょう。

(このシリーズは、グロービス経営大学院で教科書や副読本として使われている書籍から、ダイヤモンド社のご厚意により、厳選した項目を抜粋・転載するワンポイント学びコーナーです)

BATNAとは

交渉において、もしこの交渉が決裂したらどうなるか、自分はどう行動するか、相手はどう行動するかを、あらかじめ見極めておくことは極めて重要です。

これは交渉に関する最も重要な古典的概念の一つで、BATNA(Best Alternative To Negotiated Agreementの略)と呼ばれています。直訳すれば「交渉で合意することに次ぐ最善の代替案」ということで、「交渉で合意が成立しない場合の最善の案」という意味です。

たとえば転職で複数の会社と面接を続けているとします。1社に内定を持っていると、他社と交渉する際に、この内定が「合意が成立しない場合の最善の案」= BATNAとなります。

留保価値(Reservation Value)

留保価値とは、これを下回れば絶対に交渉で妥結しないという最低条件を指します。通常は、BATNAの条件イコール留保価値です。たとえば、上述の転職活動の例で仮に年収のみが条件として、既に内定の取れた1社の提示した年収が600万円だとすると、他社と年収について交渉するときに600万円が留保価値と言えます。

ただし、実際問題としては複数の利害関心を絡めて留保価値を決めることもしばしばあります。たとえば、「BATNAの社が提示している年収は600万円だが、仕事のやりがいという意味ではこれから交渉する会社の方が魅力的だ。したがって、この会社と交渉するときは、年収550万円ならOKしてもよい(この会社との交渉における留保価値は550万円だ)」という具合です。この場合は、年収という利害関心とやりがいという利害関心の二つの視点から留保価値を判断しています。

ZOPA

双方の留保価値の間は、言い換えれば「この範囲であれば交渉が妥結する可能性がある」という範囲です。これをZOPA(Zone Of Possible Agreementの略)と呼びます。

通常は、交渉者は自らの留保価値は分かっていても交渉相手の留保価値を直接知ることはできないため、交渉の過程を通して、可能な限り相手の留保価値を予測していきます。

交渉 交渉術 BATNA ZOPA 

<もっと詳しく知りたい人はこちら:ZOPAとBATNA 〜交渉の妥結の余地見出す〜

参照値

交渉において相手の留保価値を探ったり、妥結点を決めたりする際に、参考にする数値(情報)を参照値と言います。世間相場、前例、常識、規範、法令などから判断します。

法令で具体的な値が明記されているなど、客観的に明白な参照値が存在するケースもありますが、多くのケースではそうした明白な「正解」はありません。交渉者がいろいろな工夫をこらして、いかに説得力を持つ参照値を出せるかというのも、交渉者の腕の見せ所です。

目標値

目標値とは、交渉者が妥結点として目指す値を指します。目標値は、参照値を参考に決められることが多いですが、参照値そのものである必要はありません。参照値と、双方の留保価値、BATNAとの兼ね合いを見ながら、適切な目標値を設定していきます。

アンカー

実際の交渉では、交渉者が最初から目標値を相手に表明していくとは限りません。つまり、最初の言い値は、その後の譲歩分を予め織り込んで、目標値プラスアルファの値を言ってみることがしばしばあります。典型的な例としては、海外の観光地の露店で土産物を買おうというとき、売り手が最初は明らかに高い値段を吹っ掛けて来るケースがあります。そんなとき、こちらも「このくらいなら買ってもいいかな」という水準よりもわざと低い価格を出して「ここまで値引きしてくれたら買うよ」と応じたりします。こうした行為は、交渉ではごく一般的に見られることで、アンカリング(Anchoring)と呼ばれており、そのようにして表明された点はアンカー(Anchor)と呼びます。

<関連動画:アンカリング・フレーミング 〜相手の認知・行動変化を理解する〜

交渉の状況を理解するためには、交渉開始前に、状況をみて以上の点を把握しておきましょう。仮に交渉開始の時点は不明なものがあったとしても、一応の仮説を立てて補っておきます。

これらの点は決して不変のものではなく、交渉が進むにつれて変わる可能性があります。状況を常に客観的な目で観察しながら柔軟な変更を行う必要があるのです。

(本項担当執筆者:書籍・GLOBIS知見録編集部 研究員 大島一樹)

グロービスMBAで教えている 交渉術の基本
グロービス経営大学院  (著)
1600円(税込1728円)

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