『やる気を引き出し、人を動かす リーダーの現場力』―自分が頑張るリーダーから卒業するために 

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メンバー全員の力をしっかり引き出して事業を成長させたい――チームや組織の規模の大小を問わず、多くのビジネスリーダーがそのような想いを持っていることでしょう。しかし実際は、メンバーの力不足を嘆いて大量の仕事を抱え込み、二進も三進も行かなくなっている方も多いのではないでしょうか。

著者の迫氏は、29歳の若さで業績が長期低迷する老舗企業・ミスターミニットのCEOに就任しました。つまり、この本はイケてるスタートアップの成功秘話でもなく、エリート社員が集うエクセレントカンパニーの話でもありません。しかし、現場に寄り添って普通の会社をつくり直していくリアルなストーリーが正直に綴られているからこそ、「自分ならここでどうするだろうか」と現実味を持って考えることができるのです。

中でも私が今日からでも真似して改善せねばと思ったのが、「仕事を手放し、未来をつくる」ことです。迫氏は「仕事を手放すことがリーダーの仕事」と言い切ります。任せる過程でうまく失敗させることも含めてリーダーの役割であり、並走しながら二人三脚で育てていくことが大切なのです。

そんな迫氏もかつては「自分が11人いるのが最高のチームだ」と信じ、独善的で人を動かせないリーダーだったようです。転機になったのは、現地語が全くできない海外における事業責任者の仕事でした。中国語という短期的に自分が絶対習得できない分野では、現地のスタッフを信頼して権限を委譲せざるをえません。半ば強制的に、恐る恐る様々な仕事から手を離してみると驚くほどいろいろなことがうまくいったのです。まず細かいタスクから手が離れたことで組織全体を見渡せるようになり、リーダーの本来の仕事に集中できるようになったと言います。さらに、仕事を任されたメンバーはみるみる成長していったそう。

ビジネスの現場では、プレーヤーとして実績を出したからこそ、リーダーに抜擢されることが多いはずです。しかし一旦リーダーとなったからには、「自分が頑張る」という発想を大転換し、「メンバーを信頼し、徹底して任せる」姿勢をもてるかどうかが最初のステップなのかもしれません。現場の課題の解決は、メンバーを信頼して最大限任せる。自分自身は解くべき課題そのものを変革し、チームに大きな方向性を示すことに時間を使う。目指すべきビジョンや戦略など、一歩引いて大きな視点で考えてみる。そうすることで、自分を含めた全員の力が最大限引き出されるのでしょう。

私自身も、グロービスの英語MBAプログラムにおいて、外国人を含む多様なメンバーが集う数名のチームでリーダーを務める機会を頂いています。「リーダーは課題の解決にばかり追われるのではなく、課題そのものを変革することが大事」という章を読んだ時、思わずベッドから体をおこし、姿勢を正してしまいました。果たして自分は、チームが目指す方向性をしっかり示すことができているのだろうか――。ノートとペンを引き寄せ、その日の午後いっぱいを使って自分たちのチームのビジョンや戦略、目指すべき方向性を書き出しました。これを元に、部門のメンバーが集う合宿で議論を深めてみる予定です。

メンバーにうまくエンパワーメントしたい、チームの力を最大限引き出したいと感じている方におすすめの1冊です。
 

『やる気を引き出し、人を動かす リーダーの現場力』
迫 俊亮(著)
ディスカヴァー・トゥエンティワン社
1500円(税込1620円)

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