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座右のニーチェ

投稿日:2008/08/20更新日:2019/04/09

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ニーチェに触れると、心の垢がみるみる落ちる。克己心を煽られ、飛ぶ矢のように生きてみたくなる――。今回は、『声に出して読みたい日本語』などで知られる齋藤孝氏の著作『座右のニーチェ』を取り上げる。グロービス経営大学院講師の嶋田毅が創造と変革の志士たちに送る読書ガイド。

『声に出して読みたい日本語』(草思社)、『働く気持ちに火をつける―ミッション、パッション、ハイテンション!』(文藝春秋)などの著作で知られる齋藤孝氏。本書では、齋藤氏が、「仕事の活力を生むドリンク剤、毎日めくらずにはいられない」と評する哲学者ニーチェの言葉を、愛情たっぷりに紹介している。なお、同氏には姉妹書として『座右のゲーテ』『座右の諭吉』の著作もあるので、ご興味のある方はあわせて読まれるといいだろう。

「『哲学者』と言って最初に思い浮かべるのは誰?」という質問をしたときに、最も票を集めるのは誰だろうか?ソクラテス、プラトン、サルトルあたりの争いになるだろうか。その中で、ナンバーワンとはいかないまでも、確実にベスト10に入ってくるのが、ニーチェだ。

では、「ニーチェ」と聞いて多くの方は何を連想されるだろうか。「超人」「ニヒリズム」「永劫回帰」「神は死んだ」「実存主義のハシリ」などの言葉を断片的に思い浮かべられる人が多数派だろうか。狂って死んだという彼の悲劇的生涯を思い出される方も多いかもしれない。少し哲学をかじった方であれば、「キリスト教を初めとする既成概念への挑戦」「『強さ』への憧れ、こだわり」など、彼の思想や態度そのものを想起されるかもしれないが、そうした方はかなり少数派のはずだ。個人的には、ニーチェは好きな哲学者の1人で、ハイパーチェンジの中でもがく現代のビジネスパーソンへの示唆も大きいと考えているから、ニーチェの思想が世の中に広まっていないことに、「もったいないな」と感じていた。

そうした中、今年6月、書店の新刊コーナーでこのタイトルを見たときは、正直「おっ!」という感じを持った。齋藤孝氏の一連の著作や、そこで示されている彼の考え方はけっこう好きだからである(特に、「ミッション、パッション、ハイテンション」は好きなフレーズだ)。自分の好みの著者が、自分の好みの哲学者を料理する――おのずと期待は高まる。

で、本書である。なるほど、こういう料理の仕方があったか、とまずは感心。コンセ

プトは「日めくりニーチェ活用法」。ニーチェの思想について体系的に解説しようとするのではなく、代表作『ツァラトゥストラ』などから印象深いフレーズを33セット抜き出し、それぞれについて齋藤氏のエッセイを4~6ページ付すという体裁である。

例えば、最後の第33節「エッジを走る人を敬え」では、ニーチェの「善い者たち、正しい者たちを警戒せよ。かれらは、自分自身の徳を創り出す者を、好んで十字架にかける――かれらは孤独者を憎むのだ」(『ツァラトゥストラ』(中央公論新社)より)という言葉を提示した上で、イノベーターの孤独、創造性とは何か、創造性とリスクの関係などについて、齋藤氏の考え方と、読者や世に対する期待を披露している。

こうしたやり方は、力量のない人間がやると往々にして魅力のないパッチワークとな

りがちだが、齋藤氏の自信、力量、そしてパッションもあって、非常に読みやすく、

それでいて示唆に富む内容となっている。ニーチェに対する愛情や敬意の表出加減も

程よい。齋藤氏はおそらく世間一般の読者向けに書かれたのだと思うが、創造と変革という大業に立ち向かうビジネスパーソンへのエールとしてよりふさわしいと感じた。

ちなみに、個人的に気に入った本書の節がいくつかあった。節の見出しだけ列記する。

「ルサンチマンから逃れよ」

「平等を説く者は毒ぐも」

「瞬間を生きよ」

「最初から飛ぶばかりでは、高くは飛べない」

「知恵は贈り物」

「リーダーの危険は、羞恥を失うことだ」

「評価というクリエイティブ」

「エッジを走る人を敬え」

おそらく、読む人によってどの節が響くかは異なるだろう。しかし、前向きに仕事を頑張っている方であれば、たくさんのヒントを得られるのは間違いない。モチベーションの下がっている部下とのコミュニケーションのヒントなども得られよう。齋藤氏も指摘するとおり、ニーチェは、能動的に読まれ、活用されることを好むはずだ。ぜひ皆さんなりの活用方法を発見していただきたい。

最後に。まったくの余談ではあるが、実は小職がニーチェと聞いてまず思い出すのは、その思想もさることながら、野坂昭如が出演したウイスキーのコマーシャルソングである。音楽著作権に配慮してここでは歌詞は書かないが、40代以上の方ならまずご記憶のはずだ。優れたメロディとフレーズが融合したとき、いかに人々の記憶に長く留まり続けるかを改めて実感する。

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